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抜き出しメモ:Mind in Motion 身体動作と空間が思考をつくる

1. 身体動作や空間認識が思考力を作る根拠となる研究は?

発達的な視点
因果性:感覚と動作の連動性(押す、押される=動作と結果の因果性の理解)
予測性:つかむ動作の行方
・ 動作と感覚がフィードバックループを通して結びつく 乳児 11
→動作と感覚のフィードバックループ
・ つかむ、を練習した子は、手を伸ばしてものを掴む他人の動作を見たとき、練習しなかった子より確実に先を読んでいた(目が先をみた?)16


成人の実験
再構成:動きが解釈を再構成する。見え方の違いだけでは再構成されない。
予測性:動作の体験知識を持たない人より、持つ人の方が予測に優れる
・ 視野が狭くなる眼鏡をかけて動くと、その視野に対応して動けるようになる。慣れた後に外しても、すぐには元通りにならない。しかしメガネをかけても移動しないと見え方は変わらない。12
・ 目にした動作を体がシミュレートする。フリースローが入るかを予測する実験では、選手はボールが手を離れた瞬間の映像からも、それが入るか正確に予測できた19

動物の実験
・ 猿は熊手を使って手の届かないところのものをとれる。上達後、手が動くのを追跡する脳の部位が、手だけでなく熊手にまで対象を広げる12
・ ミラーシステムが動きに共鳴する21

体の動きと思考力
体には、動作、視線、空間内での軸や位置、物や人との物理的な距離感を含む
・ 目が大きく見開かれているとき、幅広い情報が取り込まれている。見が細められているときは鋭敏さが増すが、ごく小さな範囲しかみられない42
・ ロスリングのディメンジョン思考によれば、移動手段が発達している文化ほど、文化的なカテゴリレベルが上がる。移動手段が発達しているほど、人が動き回れる距離や範囲が広がる。徒歩→自転車→モータースクーター→自動車 42〜53のどこか
・ 心の中の表象は、心の外から取り入れられる。歩きまわっている都市の光景や遠くにいる知人と思われる人の顔などが、知覚を通して情報入ってくる 91
・ カテゴリ数が4つという点は短期記憶の特性にピッタリ当てはまる。4つは記憶できるが、多くのグラデーションを覚えるのは難しい 53

物理的な典型例
・ ある場所を思い浮かべるとき、典型的なイメージが浮かぶ。教室ならホワイトボード、キッチンなら冷蔵庫。頭の中にあるものが見たものより優先される54
→利用可能性ヒューリスティクス

空間的作業
・ 集める、上げる、並べるなど、実際にあるものでも想像上のものでも、空間の中にある身体の動きを基盤としている。心の中での変換(トランスフォーメーション)やオペレーションは、動作の内面化 92
・ さまざまなスポーツの経験が、さまざまな空間的な作業と相関する 109
・ 外野手がどちらにどれくらい走ればいいかを判断する推量の力はヒューリスティクスにカテゴリされる103
・ 空間認知能力はトレーニングで向上するんだって 111

動作と感覚のフィードバックループ
・ 見る、想像する、行うことが連続体となっている。一連のプロセスは上向きのらせん構造 112
・ 人間は自分に近いものを遠いものより細かいところまで区別する。人間の社会的な距離でもそう。同じ大学、正当、同じ国の人はそれぞれ違って見える。ライバル大学、違う政党、他の国の人はみな同じに見える 85


メンタルローテーションは空間認知能力の象徴
・ 目の動きと主観的な体験が全体的なメンタルローテーションを示す人のほうが、部分的な比較を示す人よりも、空間認知能力を測るテストの成績がよい 94
・ メンタルローテーションは試行錯誤すればできるようになる
・ メンタルローテーションの問題に取り組んでいるとき、多くの人が無意識に、物体を回すように手を回転させる 94
・ メンタルローテーションを行うと脳の運動野が活性化する 96
・ メンタルコンストラクションはパーツが多いと時間がかかる。図4.3は2つのパーツから成り、2つの長方形が交差していると説明できる。あるいはパーツを5つとして、5つの正方形がある形に並んでいるという説明も可能。パーツが5つと考えたときより、2つと考えたときのほうが、短い時間で心の中で思い描くことができる 100
・ 空間認知能力テストの成績の差は男女差であるが、わずか。メンタルローテーションはわずか、傾いたグラスに水の線を書く問題もわずか。ただ男性優位ではある。女性の方が優れているものもある。物体やその位置の認識。表情の認識 107
・ 数学能力が同じ能力なら、空間認知能力が高い学生の方がSTEM分野の高い教育を受け、関連の仕事につく確率が高かった 107
・ メンタルローテーションは視覚-空間の変換
・ メンタルコンストラクションはパーツを使ってメンタルの上でものを組み立てる。100
・ 人は言語的思考タイプと視覚的思考タイプに分かれるわけではない。どちらもほぼ独立している。どちらも得意、どちらも不得意ということもある。また、言語的思考も視覚的思考も一次元的ではなく、多くの特徴がある。その中でこれは得意だがこれは苦手ということがある 104

ジェスチャーの働き
・ 手で円を描くようなジェスチャーをすることはメンタルローテーションの助けになる112
・ ジェスチャーは進化においても成長においても言葉より先に現れる。動作の短縮版がジェスチャーになる。サルの脳の皮質で手に対応する部位は、人間の発話に対応する部位と重なる。声が手にとって代わったのでは?という理論もある 118
・ 思考は言葉で表現できるが、話し言葉はすぐ消えてしまう 214

空間認知の男女差
・ ナビゲーション能力でも男女差が少しある。女性はルートをたどる視点を好む傾向があるが、男性は東西南北という外的な視点に頼る事が多い 108

2. 主要な用語は?

認知の法則
・ 法則1:コストなくして利益なし
・ 法則2:動作が知覚を形成する
・ 法則3:心は知覚の上を行く
・ 法則4:認知は知覚を反映する
・ 法則5:空間的思考は抽象的思考の基盤である、認知は知覚を反映する。空間的枠組みはアイディアを整理できる(60)
・ 法則6:心は欠けている情報を補う
・ 法則7:思考が心からあふれると、心はそれを外の世界に移す
・ おしゃべり、ジェスチャー、動作。これも思考を外に出す、使う、修正する、また使うというスパイラル(上とは違うの?) 213
・ 法則8:私たちはこころの中にあるものを整理するように、まわりの世界にあるものを整理する
・ 動作と感覚のフィードバックループ11
・ 動きの共鳴21
・ 引き込み現象。互いに相手を真似てしまう現象25
お互いの言葉やジェスチャーを取り入れ始める 119
・ 階層組織。基本レベルのカテゴリーは抽象的すぎず具体的すぎない中間にある。家具、道具、果物など33
・ 情動価。肯定と否定は接近と忌避という社会的接着剤の本質を抽出している。情動価が人と人を結びつける39
・ 赤ん坊の声をきくと、コルチゾールのレベルが上がる。情動だけじゃなく、情動的な状態(ストレスなど)も伝染する39
・ 場所に反応する脳の部位。海馬傍回場所領域(PPA)、脳梁膨大後部皮質(RSC)47
・ ロスリングのディメンジョン思考52
世界を4つのカテゴリにわけて、それをレベルと名付けた。強固な2つのカテゴリーではなく、柔軟なディメンジョンがあるとした。レベル1は貧困の生活。レベル2は子どもが学校に通えているレベル。レベル3は高校まで通う。レベル4は私たちがよく知っている生活。53
・ 体の軸は2つ。前後、上下、左右。
・ 回顧記憶と展望記憶。過去の記憶と将来の計画。海馬と嗅内皮質が共通 72
・ 空間を判断する3つのメカニズム。回転、アラインメント、階層組織 82
・ 表象にはいろいろな形態。描写、記述、身体の動きなど 91
・ 話す言語が思考法に影響するのはサピア=ウォーフ仮説 167

3. 実際の場面で身体動作が使われているのは?

・ 他人の動作を観察して自分の動作と調和させ、どのような動作をするか決める。新しい動作もその方法で学ぶ。馴染みのない場所、空港、官庁、博物館、外国。他の人がどうするかを見て、自分がどうするかをきめる25
・ サンドイッチを作る、皿を洗うといった連続的で自然な動作では、手を伸ばし始める前に、頭と目が次の働きかけるものへと向けられる46
・ 認知地図は脳に届いた材料から、その場で組立てられてはまた作り直される 74
→地図として保存されているわけじゃなく、その場で組み立てる
・ 多くのアーティストやデザイナーが視覚的世界の細部を見る才能を持つ 111
・ 話すときも、アイディアを物のように扱い、思考は物への動きであるという前提で話をする 117
・ ブロックの組立ては現実のものに対して行う行為。考えることはメンタルの物体-アイディア-に対して行う心的な行為である。89
→アイディアがピース、組立が操作。

思考のエクササイズ
・ グレープフルーツを半分に切ったものを、切った面を下に、丸い方を上にしたところを想像する。次に大文字のJを平たい面にぶら下げる。何ができるだろう 99

ジェスチャーは知っている
思考のツール
・ 言葉での説明とジェスチャーが違うことがある。これをミスマッチという。方程式の計算を間違えても、両辺をV字でさす子がいる。これは両辺が等しいことを理解しつつある徴候。子どものミスマッチは理解が急激に進むことを予測される 130
・ どうやって方程式を解いたか、言葉で説明できなくてもジェスチャーで説明するよう求めると手順を示せる。131
・ 言葉とジェスチャーで教わった方が、学習効果があがる???131
・ ジェスチャーは思考のステージを上げる。空間を表現する、因果を表現するなど。
・ ジェスチャーはシステムの各部分の動作と、システムの行為の因果連鎖を示すのに使われる。ジェスチャーする人だけでなく、それを見る人の思考を変える力がある 133
・ ジェスチャーは考えることを助ける。6つのグラスの課題。連続してまとまったジェスチャーで問題を空間的に表現する。言ってみれば問題のバーチャルな図である。ジェスチャーをする人は、しない人よりも6つのグラスの問題を解く確率が高かった136
・ 読む問題を解いていたときと同じように、大半の人が記憶しなければならない空間的な説明を読んでいる間、ジェスチャーをしていた 137
・ 線を引くように手を動かす人、人差し指でさす人、手全体を使う人さまざま。環境についてジェスチャーした人は、しなかった人より、状況についての質問を正しく答えたし、こたえるのも速かった 137
・ 読みながらジェスチャーしても読むスピードは落ちなかった138
・ ビジュアルスクライブ。講義や対談中にそれを絵にすること。議論の収束や発散が見てわかる 267
・ コミックは学習に効果的であることを示す研究が何十とある272
・ 科学を学ぶ学生、科学現象を図に書いて説明させた。言葉で説明させるよりも、理解も学習も深まる293
・ テストの間に授業や学習をしなくても2回目のテストで成績が向上した。説明させると293
・ 空間認知能力の操作=細部を見る。顔のわずかな不均衡など。判断と比較がある。どちらが高い、速いかなど。そして回転させたり伸ばしたりといった変換がある。さらに想像がある。動いている物体の軌道を想像するなど。112
・ 生まれつき目の見えない人にある場所から別の場所への行き方を尋ねる。彼女が話しているとき、手はそれぞれのルートを順番に示している。彼女は自分へのジェスチャーは見えない。あなたがどう見ているかもわからない。それが助けになるかもわからない 121。生後18ヶ月でローションを塗るジェスチャーで表現したCとか。
・ ジェスチャーは一つの言葉で伝えられる思考を表現する。空間に全体的な構造を生み出せる 122
・ 視点と認識枠「いまどこ?そこから何が見える?158
・ ページは思考を外に出す方法。時計、ノート、そろばん、建物など 214

コミュニケーションのツール
・ ジェスチャーは話すことを助ける。手をお尻の下に入れて空間的な関係を説明しようとしても、話すのに苦労する。言葉が出てこない 134
・ 地震時の最適な避難ルートを2人で話し合う実験。同じ地図をみて、ジェスチャーも使えた最初のグループは対話が多くなり、実験を楽しみ、地図もうまくかけた。2人の間に薄いカーテンで分けられたグループは、ルートの意見を一致させるのに苦労した 150
・ テーブルのグラスを「とって」と言われた人。発話内容を理解すること、グラスをあてはめる(マッピング)の両方が必要なので、認知負荷が高い 160

構造とダイナミクスの理解のツール
・ ダイナミクスより構造を理解するほうが容易なのは何十もの研究で示されている 145
・ 場所や道を少しずつバーチャルの地図に配置していく
・ 経路の説明はレゴブロックのようにピース(断片)を組み合わせたものだ。ピースには2つの部位がある。一つは前の部位とのリンク(結合部)で、もう一つは次の部位とのリンクである。159
・ 想像でグラスを傾けても線が水平に保たれることは理解できるが、実際に傾けて動きをするほど効果はない 139
・ 機械的なシステム、車のブレーキや自動車の空気入れについても、読みながらジェスチャーするとテストの成績が向上した 139
・ エンジンの構造と動きについての説明。動きのジェスチャーを見た人の方が、動きについての質問の正解数が多かった146
・ ビートのジェスチャを入れると順番と理解し、同時性を示すジェスチャーを入れると順番と誤認しなかった 146
・ 種から芽が出て花が育ち受粉し新しい芽が出るという説明を、図に書くようにいうと円ではなく直線でかく人がおおい。「次はどうなりますか?」とたずねる。円形のジェスチャーを描きながらの説明を聞いた人は、最初に戻って「種から芽が出ます」と回答する。直線のジェスチャーを見た人は、花を集めてブーケをつくるなど新しいプロセスを考える傾向があった 147

合同対応
・ ピアノに合同対応。鍵盤の左から右に行くにつれて引く音の周波数が高くなる。手を計算機として使うことは空間位置としてはじまる。手の動きを演算と対応させることでパフォーマンスの一致に進化した148
・ 2つの集合の総数を理解する課題。子ども。キャンディーの束。一つの束を数えてからそれを丸で囲うジェスチャーをすると、分けて数える助けになる 144
・ ピアノコンクールで最終選考に残った3人の「映像だけ」、「音声だけ」、「その両方をみる」という3つの条件で、順位を予測する課題。専門家と素人がやったが、実際の順位と相関が高かったのは、映像だけを見たときの予想。153

空間的な視点と地図
・ 視点には空間をみるときの自己中心的な視点(エゴセントリック)、外界中心的な視点(アロセントリック)157
・ 地図は自己中心的な視点ではなく、外界中心的な視点でつくられている 161
・ 上からみたときに世界がどうみえるかを想像できないといけない。これはサーベイ視点、全体像、鳥瞰、ときには絶対的視点と呼ばれる162
・ 地図は私たちの世界への理解を変えた。思考を外に出すことが、私たちの生活や歴史に与えた影響は大きい 214
・ 地図は詳しくなくてもいい。方向や距離が正確じゃなくても、そのときに必要な道や曲り角を描いた図式的な地図を好み、それを使った方が、生産性が高く、成果が上がる 227

認知デザインのガイドライン
・ 3つのP。政策、好み、実践を違うグループがやる。製作したのを別のグループが評価し、その中から多角評価されたものを実践のグループが実際に使ってみる 227
・ 一つ一つのステップを示せ(新しいパーツには新しいステップを割り当てよ)、動作を示せ(矢印と誘導線を使え)、動作の見通しを示せ 246
・ 地図上で区切りになるのは、選択地点(入り口や交差点など)。そこで行動が示される。256

図表と空間認知
・ グラフ。データが折れ線グラフで示されると動向をこたえる人が多く、棒グラフで示されると独立したものの比較と考えられた 259
・ 表は図ほど思考を制約しないが、数多くの推論を提示するわけではないので、見た人が多く考えなくてはならない 260
・ 矢印の意味はだいたい7つ。つなげる、時間的な次の段階を示す、因果関係における次の段階を示す、動きの種類や方向を示す、上昇や下降を示す、目に見えない力を示す264

視点の転換と新しい発見
・ 視覚的に存在するものはよく理解してそれを使うことができるが、ダイアグラムを見てそこにないものを想像するには、才能や熟練技が必要である。298
・ デザイナーが線画をかくのは書いたものを後で見直すため、自分のスケッチを解釈しなおすと、思いがけない発見が起こりやすい 298
・ スケッチはあいまいな部分ばかりだが、不明瞭だからこそ、組み合わせの変更や新しいひらめきや発見が可能になる。高度に明瞭なアウトプットを吐き出すコンピューターツールでは、そういった再解釈は起こらない 298
・ スケッチを見せ新しい解釈をするよう指示した実験。解釈がもう出ないと諦めるまでに列挙出来た数をかぞえた。部分の要素の組み合わせを変えた被験者は、そうしなかった人の二倍の新しい解釈を見つけていた 299
・ デザイナーは自らがデザインできないもの、つまり人間、あなたがデザインしたものを使う人からはじめなければならない。それを共感的デザインと呼ぶことにしよう 302
・ 単なるマインドワンダリングと共感的視点、どちらが新しい発見につながるか。傘、放棄、椅子、懐中電灯、スマホ。共感的視点のグループは、違う職業の人-庭師、芸術家、消防士などーならその物体をどんな新しい使い方をするか考えるように指示する。共感的視点が圧勝だった。304


4. そんなことないよ、バーチャルだけでいいよって人に、なんて反論する?

・ 四肢がすべてある人と比べて腕が片方しかない人は、メンタルローテーションでより時間がかかる。おそらく体の動きがないと、想像上の動きも鈍ってしまうから 98

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