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すばせかシリーズ16周年メッセージ企画 シークレットレポート

2023年、X(旧Twitter)にて「すばせかシリーズ16周年メッセージ企画」が立ち上げられた。
今レポートは、上記企画の立ち上げ経緯、拘った箇所などを主に簡易に振り返りつつ解説を試みたものである。
少々長文になるが、お付き合いいただければ光栄だ。


1)「すばせかシリーズ16周年メッセージ企画」とは

スクウェア・エニックス開発のゲーム「すばらしきこのせかい」、通称「すばせか」。すばせかシリーズは2023年7月27日に16周年を迎えた。
この記念日に合わせ、すばせかを生み出した開発者の方々へ感謝の気持ちを伝える為、同じくファンの皆様からもメッセージを募り、それらを集約したメッセージブックを贈ろうという企画だ。

▼企画概要

メッセージ募集期間は2023/6/10~7/14。参加者数は138名に上った。
※日本語メッセージ67件、イラスト14名。英文メッセージ66、イラスト15名。イラスト単体5名。

35日間という短い期間にも関わらず、約140名の方の協力を頂き、合計約170ページ、厚み1.2cm、重さ210gもあるメッセージブックを無事に開発者達へとお贈り出来る事となった。我々の予想を超えた結果である。
改めて、皆様のご協力に心から感謝申し上げたい。

メッセージブック表紙
メッセージブック側面

2)企画立ち上げの経緯

そもそもの事の始まりは、新すばせかが初めて発表された、あの瞬間である。もう無理かと思っていた待望の続編の知らせ。トレーラーを見終わった時、「この奇跡に対する感謝を開発者達にいつか絶対伝えなくてはいけない」と強く思った方も多かっただろう。
しかし、公式からのプレイ後アンケート文字数は限られており、シリーズを通しての熱意を伝えきることは大変難しかった。また、某C社のようなファンレター送付先専用窓口のようなものはスクエニには設けられていなかったのだ。どうすればいいのか分からないまま、時が流れた。

しかし、ある転機が訪れた。
2023年5月、「ファンレター送りたいけど方法分からない」と主催の片割れであるNeroがSNSでぼやいた時、「こうしたらいい」と方法を教えて下さった方がいたのだ(ゲーム会社勤務の知人がいらっしゃるらしい)。
靄がかかって不鮮明だった道筋が鮮明になった。こうなればあとは実行するだけだ。

だがNeroは欲張りだった。「どうせやるなら、(公式に迷惑をかけない程度に)インパクトのあるものにしたい」と思ったのだ。
すばせかは本当に素晴らしい名作には違いないが、最近は公式の動きも少なくなってきた。続編が出るまで14年も掛かっているし、次の続編がでる保証もまだない。少しでも次へ繋がる可能性が欲しかった。公式に動きがないのなら、ファンが動くしか方法はないと考えていた。だが、一個人が何かしたところで大した力はないだろう。Neroは仲間が必要だと思った。

2023年5月11日。スクエニのサポートセンターへ贈り物に関してNG事項が無いか等を問い合わせ、その返事が返ってきた日だ。
Neroは元々個人的に「ファンレター送りたいね」と話し合っていたやえがきに、企画化について相談し、心の内を話した。すると、やえがきは「企画案、めっちゃ素敵だと思いますよ!」と快く賛同し、共に企画を運営することになった。
こうして、このメッセージ企画は始動したのだ。

当初はこれほど規模が大きくなる予定はなく、主催それぞれが有志へ声かける案やタグ企画の立ち上げ案等が出た。しかしながら、折角であればより多く参加者を募りたいとの想い、また主催2人が揃って社畜であるという管理上の都合から、寄せ書きサイトで募る事になった。

3)具体的な活動

企画を運営するにあたって我々がやってきた事を振り返る。
大まかなスケジュールはこうだ。

・5/11~5/31企画始動、使用サービスの選定、企画アカウント準備
・6/3~6/9企画アカウント運営開始、企画概要策定
・6/10〜7/14メッセージ募集、ポップアップカード作成
・7/15〜7/22メッセージ内容精査、製本発注、その他同梱物等準備
・7/23メッセージブック発送

■使用サービスの選定

利用する寄せ書きサイトサービスとして、当初候補に挙がっていたのはメモリール、googleフォーム、スゴヨセ、ヨセッティ、mesecaである。特にメモリールは画像の投稿数上限の都合で、当初はイラストのみを別企画とする案もあった。

しかし、事前調査の結果、冊子形状・PDF形状・WEB閲覧などで大きく価格が変わってしまうことが判明し、およその参加者数を把握すべく、急遽アンケートを取る事になった。すばせからしく投票期間は7日間。より正確な数字を知る為に「参加はしないけど応援!」の選択肢も追加した。

結果、この時点でのアンケートは回答194人の内、
文章+絵=37人/文章=70人/応援=87人。

文字数が確保出来る点・1つのサービスで管理出来る点・投稿形式なので普段イラストを描いてない人でも気軽に参加出来る点・セキュリティ面からPDFではなく冊子作成が出来る点、等を踏まえてメモリールを選んだ。

■企画アカウント準備・運営

多少変動する事を鑑みても、参加人数が100人程にはなるだろうと企画アカウントを作成する事になった。X(旧Twitter) ID : @SBSKS16thMK

企画名称については、「すばらしきこの~企画」等の案も出たが、「パッと見て理解できる」という点、無印・NEO、両方からの愛を書き込めるように"シリーズ"という表現が良いだろうという点から、「すばせかシリーズ16周年メッセージ企画」が採用となった。

アイコン・ヘッダーデザインはNero作。他にも案があったが、企画名と同じく分かり易さ、印象柔らから、シリーズの中でもキーポジションであるにゃんタンのデザインが採用された次第である。

企画アカウント用アイコン案
企画アカウント用ヘッダー

企画アカウントは6/3に公開。告知等の基本的な運営はNeroが中心に担当した。また、すばせかシリーズは海外ファンのネツも非常に熱い。是非参加頂きたいとの想いから、アカウントにおけるツイートや企画概要の英訳も拙いながら用意することにした。
中には「世界中にファンがいるのでもっと幅広い言語対応のサービスを使って欲しい」などの要望もあった。しかし、企画概要で禁止事項として定めているような不適切な内容が無いか、主催側でチェックするのに翻訳サイトでは限界があると感じ、今回は2言語に絞った次第である。

■メッセージ募集

募集を開始して何より驚いたのは、参加者側であるすばせかファンの熱量である。メッセージ募集の告知を行った際、この企画の存在を知らせようと、多くのファンが引用等を用いて積極的に拡散の協力をしてくれたのだ。本企画が主催の想定を超えた結果を得られたのも、彼らの尽力が一因となっているだろう。

募集期間中のアカウント運営面では、〆切までの日数や注意事項等のリマインドを徹底するようにした。注意が向きやすいよう、Nero、やえがき双方でリマインド用画像を準備した。
(※残り2日のリマインド用画像で、透かしハートの背景レイヤーをうっかり入れ忘れたのは痛恨のミスである。できるならばリスタートさせてほしいとNeroは振り返る。)

カウントダウン残り17日(16周年1か月前)用画像(やえがき作)
カウントダウン残り7日用画像(Nero作)
カウントダウン残り2日用画像(Nero作)
カウントダウン残り1日用画像(Nero作)
本企画用のメッセージ・イラストの投稿時間注意喚起用画像(やえがき作)

尚、これは余談だが、募集期間最終日7/14の怒涛の投稿ラッシュは凄かった。分刻みで投稿数があまりに急増したため、「もしかすると、すばせかファンには夏休みの宿題をギリギリまで放置するタイプが多いのだろうか?」と主催二人とも笑ってしまったものである。

■メッセージ内容精査

7/15、我々主催2人は京都のカフェに集まり、投稿されたメッセージ等の内容精査を行うため打ち合わせを行った。企画の趣旨に沿っているか、禁止事項に抵触していないかを1つ1つ確認した。作業は昼過ぎから行われたが、かなりの量のメッセージが集まっていた為に、(途中長い休憩を挟んだせいもあるが)想定よりも時間がかかり夜遅くまで精査は続いた。

愛のあふれるすばらしいメッセージ、イラストが集まっていた。ゲームのあらゆる要素に衝撃を受けたと語る人。推しについて語る人。すばせかを通して大事な人々に出会えたと喜ぶ人。すばせかに人生や価値観を変えられたと感謝する人。様々な想いが綴られていた。

海外ファンの中には、文字数制限がある分、翻訳サイト等を使用した日本語訳で投稿の参加者も見受けられた。ありがたい事であり、それだけ愛を伝えたいというネツを感じられた。だが、やはり細かい言葉尻や作中独自の言い回しやキャラクター名に多少の誤訳も見受けられた為、一部修正を行った。

また愛ゆえだろう、ごく一部ではあるが、禁止事項に抵触してしまっている投稿もあった。一体どうしたものかと主催2人で頭を抱えつつも、そちらについては可能な限り原文を生かしつつ抵触箇所の一部削除、言い換えを行う運びとなった。

打ち合わせの様子

■製本作業

メモリールの管理の方はやえがきが中心に担当した。
全体デザインは、視認性の良さ、ゲームのスタイリッシュなイメージにあっているだろうという点からグレーの幾何柄を2人で選んだ。
しかし、シンプルな分表紙が文字だけでは流石に寂しく、急遽、企画アイコンをベースに円形デザインに落とし込み、それが採用となった次第である。

メッセージブック表紙案(※左が採用されたデザイン)

また、今回主催揃って初めてのサービス利用だったため、本格稼働前に「あ」の文字だけを入れたダミーページを作り、文字数が少ないと空白スペースが目立つ等、諸々を確認しながら準備を進める事にした。そして、ダミーページ作成時に対処要と判断した事柄を企画概要の注意事項に記載し対策を行った。が、しかし。準備万端と蓋を開けてみれば、166件の投稿の並び替え作業で中々の地獄を見る事になった。

これは完全に後から判明した事だが、メモリールはWeb画面・タブレット画面・製本画面の並び替えが連動していない。しかもWeb版は横に3つごとに並んで投稿されるが、それぞれ文章の長さによって並び方が変わってしまう独特の順番設定になっているのだ。また、ページが膨大過ぎたのか、操作上のエラーも出てしまい、通算としては5回以上並べ直し、少なく見積もって4時間ほどの作業となった。

また、入稿直前にもWeb版では対応されているのに製本前確認用のPDFデータでは対応されていない環境依存文字等・絵文字があることをNeroが発見したりと、細かな微調整が必要だった。

■翻訳ブックの作成

想定より多くの海外のファンに参加頂けたこともあり、急遽オマケとして、英文のメッセージを翻訳したものを作成する事を思いついた。

まず、Neroがgoogle・chat GPT を駆使して66件のコメントを全て翻訳した。次に、それ受け取ったやえがきが、読みやすさを優先し、1ページに英文と翻訳を2個ずつで構成作業を開始。illustratorで各ページ枠内へ調整する作業をひたすら30ページ分繰り返した結果、翻訳・構成共にあまり思い返したくない程の時間がかかったが、幸いにしてセブンイレブンの小冊子印刷機能を利用する事を思い付き、なんとか面付けは回避することが出来た。

翻訳ブック表紙
翻訳ブック裏表紙

■ポップアップカードの作成

画像の可能投稿数がギリギリだった事もあり、もし仮に限度枚数に達してしまったら、主催はポップアップカードを作ろうかという話が上がった。しかし、主催2人共に気が早く、結局はみ出さずとも作る事になったのだ。

当初、合作はスケジュール的に難しかろうと1枚ずつ用意する事にし、Neroは企画概要自体の説明用、やえがきはWeb版QRコード用を作成することになった。後者は冊子の末文に挟み込む予定だったのである。

カード作成自体はメッセージ募集期間中に各々で行った。
そして、京都で打ち合わせをした際に、やえがき作のカードをNeroが預かり、後日届いた冊子にいざ挟み込もうとした。しかし、まさかのサイズが合わないという事件があった。結局、QRコード用も単体のポップアップカードとして贈る事になってしまったのが大変悔やまれるとやえがきは語る。

企画概要説明用ポップアップカード表紙(Nero作)
企画概要説明用ポップアップカード内側(Nero作)
Web版QRコード用ポップアップカード表紙(やえがき作)
Web版QRコード用ポップアップカード内側(やえがき作)

※尚、合作は難しかろうと言っていたくせに、当日の企画達成アナウンス時にも使用した、下記のにゃんタン詰めイラストで結局合作するなんてオチ迄ついてしまった。
ちなみにこのイラストはメッセージブックの1頁目に挿入した。「Give you all our love」は、すばせかのBGM「Give me all your love」をもじったものである。開発者達へファンの愛が伝わるようにと願いを込めた。

合作したにゃんタン詰めイラスト。(にゃんタン・無印ネク衣装にゃんタンはやえがきが担当。リンドウ衣装にゃんタン・新ネク衣装にゃんタン・全体デザインはNeroが担当した)
メッセージブック1頁目

4)企画についての反省点

  • 今企画においては他の企画等を調査し入念に準備したものではあったが、事前に想定しきれていなかった投稿ケースが一定数あり、主催2人揃って都度、頭を悩ませることになってしまった。特に概要を読まずに投稿されたと思しき参加者もいたので、もし次回があれば投稿リンクの位置は要検討したいところである。

  • これは完全に我々のアナウンスミスだが、イラスト内のサイン表記とコメント分の表示名が違う参加者が数名確認された。出来るだけ見開きになるように調整したつもりではあるが、同じく要検討箇所である。

  • 翻訳ブックを現物分しか用意出来なかったため、Web版での共有では翻訳は受け取り手側にお願いする事となった。別サイトにアップロードし、閲覧出来るようにしておく事も視野にいれておいてもいいかもしれない。

5)感想

本企画の作業中に改めて感じた事は、中には文字通り地球の裏側からもネツが届き、いかに「すばせか」が世界中から愛されているかという事である。
校正中は参加者達のすばせかへの想いを何度もじっくりと読むことになった。DS時代からのファン、アニメからのファン、新からプレイを始めたファン。それぞれにすばせかと出会った切欠があり、物語があり、感謝と愛が綴られていた。

我々主催2人も文字通りすばせかに人生を変えて貰っている。それぞれに書かれている言葉は痛いほどに共感出来たし、何よりもこの想いは絶対に届けなくてはならないと気を引き締める事となった。無事に本社に到着の通知が来た時は揃って酷く安堵したものである。

また、企画に参加してくれたファンから、この企画の運営についてあたたかい言葉を多くいただけたことを大変嬉しく思っている。開発者達へファンレターを書きたくても自分でやるのは難しいと思っていた人はやはり多かったのだろう。
中には、「この企画自体がすばせかのオールリマインド作戦みたいだ(企画をきっかけにファン個人同士がすばせかをHUBとして繋がり、界隈全体のネツを上げている様子がそう映った)」というような感想をくれた人もいた。
大変な作業は多かったが、とてつもない達成感とやりがいを感じられた。

そして、完全な一方通行、自分達の想いを届けるという事自体に満足するだけだったはずのこの企画に奇跡が起きた。既にご存じの方も多いだろう、翌日、公式アカウントにて今企画の冊子に関して到着を知らせるツイートがなされたのだ。
この奇跡とも言える公式からの返事には、数多くの熱い思いが必要不可欠だったと断言出来る。愛が籠った素敵なイラストとメッセージが無ければ、この企画はそもそも途中で頓挫していたかもしれない。

また、後日思わぬところで企画に対するすばせか制作関係者の声を聞ける機会があった。これは主催二人とも気づいていなかったのだが、知らせてくれた方がいたのだ。
南師の声優である藤本隆行さんは普段からゲーム実況の配信をされているのだが、とある日の配信でメッセージ企画のことを話題にしてくださったという。
早速配信を拝見したが、その中で語られる藤本さんの言葉はとても嬉しい内容だった。我々の想いは届いている…、そう思わせてくださるものだった。これもまた、本当に奇跡のような出来事である。

▼「ふじさーんチャンネル」配信URL

※1時間38分〜1時間45分あたりで本企画の話題をしてくださっている。
※閲覧する際は、藤本さんに決してご迷惑をお掛けしないよう細心の注意をお願いいたします。

我々主催2人は、数多いるすばせかファンの一欠片でしかない。しかし、自分達が本当に一等大好きなものが、世界中の人に愛されている事を再認識し、無事に想いの橋渡しの手伝いが出来たことを心から嬉しく思う。

また企画終了に際しても参加者の皆様からも暖かいお言葉を多数頂き、この企画を無事に完遂することが出来て本当に良かったと感じる事が出来た。
それぞれの想いを我々に預けて参加して下さった参加者の皆様、応援頂いた皆様、開発陣の皆様に、改めてこの場を借りて心からの感謝をお伝えしたい。

改めて、本当にありがとうございました。

主催Nero・やえがき

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