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創作あれこれ

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創作(オリジナル)あれこれを載せていきます。
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#夢

モラトリアム

そこに踏み入る勇気がなかった ぐずぐずしていたら 違う路を歩くことになってしまった もう君の顔は思い出せない 1番後ろ 1番窓側の席 人気のある席だけど 逃げ場のないところ 夏というには、まだ早く 春というには、もう遅い チャイムが鳴る中 まだまだ眠い目をこする  しばらくしてから 君は颯爽と現れた クーラーをつけるには、まだ早いかなって言いながら 窓に向かう ゆっくりでもなく早くもない 背が高いから 歩幅が大きい方だったのかもしれない わずかな間 その独り言のよう

『月はキレイかもしれないね』②(創作小説)

↑の続き。 2.カイル カイル。 この名前は、祖父がつけたんだ。 物心着く頃には、いつも島酒ばかり飲んで酔っ払っていたイメージ。 寡黙というか、置物なんじゃないかと小さい頃は思っていた。 食べるものといったら刺身ばかり。 しかも多分、同じ種類の魚ばかり食べていた。 「カイル。」 たまに、俺を呼ぶその声はかすれていた。 近づくと嬉しそうにしていたんだ。 「カイルはな、海峡って意味があるんだ。小さな島と島をくっつける。 お前は人だから、人と人をくっつける。帰る場所にも困