広く安く打って終わりで勝てるほどポーカー簡単じゃない説
お久しぶりです。
ずっと記事の更新ができていませんでしたが、久しぶりに更新します。
今回は、先日話題になっていた「Range Betting」に(少しだけ)関連性のあるスポットを取り上げたいと思います。
なんとなく概念としては知ってはいたつもりですが、「Range Betting」という言葉は知りませんでした。
お互いのプリフロップのレンジの設定にもよりますが、ソルバーの計算結果でも100%頻度でCbetを打つシチュエーションというのは少なくありません。
また、ソルバーで80%以上の頻度でCbetを打つと出力されたフロップに関しては簡易戦略として100%Cbetするという戦略を実践している方もいるかもしれません。
Zoomをプレーしていてもそんな印象は受けます。
しかしながら、実際には「なんとなくオリジナル側に有利そうなボードだから安く広いレンジでCbetをする」という戦略をとってつけたように取り入れるだけでは、なかなかすぐには成績向上に繋がらないのではないか、と思います。
IPで有利なフロップが落ちレンジベッティングをしても、それ以後のミスが大きければ負けてしまうし、
反対に相手がレンジベッティングをしてくる場合も、OOPで適切にディフェンスすることができればそれ以後ミスをする相手から(不利なフロップでも)収益を改善することができる
と思うのです。
なので今日は、このテーマを少し発展させた記事が書ければ良いなと思っています。
具体的には、
・「OOPは広いレンジのCbetには広く抵抗しなければならないのか」
・「IPはフロップでチェックレイズされた場合、(フロップで広くCbetしていた分)広くディフェンスしなければならないのか」
・「IPはフロップでコールされた場合、ターン以降どうすれば良いのか」
といった点について理解を深めることができれば良いなと思っています。
(※前提としてそもそも記事を書く目的の第一は僕自身の座学です。
間違っていることや疑問点、質問・要望などありましたらぜひお気軽にコメントなりDMなり会ったときに話して頂くなどして頂けると非常に嬉しいです。)
というわけで見出しはこんな感じです。
1,前提条件
1-1,プリフロップについて
1-2,お互いのレンジについて
1-3,ベットサイズやレーキの設定について
1-4,今回検証するフロップ
2,ボード別のCbetの比較
2-1,BU(IP)のCbetサイズ・頻度一覧
3,安く広いCbetへの抵抗について
3-1,OOPのvsCbet一覧
3-2,OOPにディフェンス可能なコンボ数
4,チェックレイズをされた時の対処
4-1,IPのvsチェックレイズ一覧
4-2,チェックレイズにフォールドするハンドの考え方
5,ターンの戦略はどうすればいいの?
5-1,ここまでのおそらい・まとめ
1,前提条件
1-1,プリフロップについて
では早速今回の検証に用いたシチューションについて。
今回はHJ(MP)vsBUの3bet potの検証です。
HJ 2.5bb/c
BU 7.4bb
というアクションです。
1-2,お互いのレンジについて
また、お互いはpreflop solutionのレンジでプレーしていると仮定します。
(※有料資料の共有となってしまうため、詳細は割愛させていただきます)
HJ側
(KQs、JJ、TTは50%に近く、AKoなどはかなり低い頻度です。)
BU側
こちらはスーテットコネクターやJ9s,Q9s,A6sのような弱いところが低フリークエンシーになっています。
1-3,ベットサイズやレーキの設定について
初期スタックは100bb。
Starting potは二人が出した7.4bb(×2人分)にSBとBBの1.5を足して16.3bbです。
Rakeは5%の3bbcapとしています。
ベットサイズは画像の通り
IPのCbetサイズは33%と75%
OOPはフロップ100%チェック(ドンクなし)、チェックレイズサイズは50%potのみ
としています。
(リリアンさんのツイート:
https://twitter.com/Lily0727K/status/1100509181730148353
を見てIPのCbetにpot over入れればよかった・・・と若干後悔していますがまぁ今回のテーマはこれでも充分か・・・ということでこのまま続行します。笑)
1-4,今回検証するフロップ
今回はKハイボードの中でもわかりやすいようにボトムカードは6に固定し、ミドルカードだけをスライドさせていきます。
KQ6・KJ6・KT6・K96
のそれぞれレインボーとツートーン、
合計8種類のフロップを比較していきます。
ミドルカードやフラッシュドローの有りなしによってどのような変化が起こるのかが楽しみです。
2,ボード別のCbetの比較
2-1 IPのCbetサイズ・頻度一覧
では早速、BUのCbetサイズと頻度を一覧にして確認してみましょう。
それぞれの各ベットサイズ・頻度は以下の通りです。
見ていただくと分かる通り、
BUvsHJの3betpotではBU側にこの8種のKハイボードでは
BU側が57~62%と非常に高いエクイティがあり有利なボードと言えそうです。
K96ttは18%、KT6ttでは約7%のチェックレンジがありますが、それ以外に関しては100%頻度でCbetを打っています。
特にK96rではサイズも33%しか使わないため、まさにmiaニキのブログで取り上げられているような戦略がソルバーからも出力されました。
そしてベットサイズの特徴として
・レインボーの方が大きいサイズを使用する頻度が高い
と言えます。
また、KQ6はレインボー・ツートーンのどちらでも大きいサイズを選択する頻度が高いようです。
※ちなみに今回取り上げてはいませんが、K86でも大きいサイズを使用する頻度は0%でした。(レインボーもツートーンも)
また、K86ttの場合もK96ttと同じように19%ほどチェックレンジを残します。
3,安く広いCbetへの抵抗について
3-1,OOPのvsCbet一覧
ひとまずここまででIP側が非常に高頻度にCbetを打つシチュエーションであることはおわかり頂けたかと思います。
では、OOPのvsCBについて見てみましょう。
(白い部分が33%potCbetをされた時の各アクションの頻度、グレーの部分は75%Cbetをされた時の頻度です。
IPが33%potCbetを打った場合、
最も抵抗頻度が低いKQ6rで約60%
最も抵抗頻度が高いK96ttで約48%
をフォールドします。
ソルバーの計算結果でもIP側のブラフ必要成功率を余裕で満たしてしまっています。
冒頭で触れた
・「OOPは広いレンジのCbetには広く抵抗しなければならないのか」
という疑問についての結論としては、
「相手のCbet頻度が高いからといって、必ずしも広くディフェンスする必要はない」
ということが言えると思います。
実際に中身を見ていきましょう。
3-2 ,OOPにディフェンス可能なコンボ数
OOP側のレンジは、1-2,で紹介した通りプリフロップ時点で83.32コンボが存在しており、ボードのKdQs6cを考慮すると74.21コンボが残存していることになります。
もしも仮に
33%potのブラフ必要成功率を満たさないようにするには、56コンボ
(74.21*0.75=55.65)
75%potのブラフ必要成功率を満たさないようにするには、32コンボ
(74.21*0.43=31.91)
でディフェンスをする必要があることになります。
ワンペアはもちろん全部、T9やJ9のような弱いガットショットもガッツリ含まれていて、それでやっと約30コンボです。
これらよりも弱いTTやA9sのバックドアのようなハンドはEVがマイナスになっており、MDFを理由にコールするとむしろ出血が増えるということになります。
まして56コンボもディフェンスに組み込むとなるとさらに弱いハンドで抵抗することになってしまい、「MDFを理由に搾取されない戦略を取ろうとした結果、より多くのバリューを取られてしまうだけ」という本末転倒になってしまいます。
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大変申し訳ございませんが、ここから下の部分についてはMDFを計算方法を間違えていたため、誤った内容を記載しています。
訂正を書きますので、訂正次第twitterにてお知らせ致します。
4,チェックレイズをされた時の対処
4-1,IPのvsチェックレイズ一覧
OOPは(もともと強いレンジを持つIPにとって有利なフロップが落ちてしまったので)これらのフロップでは相手のブラフ必要成功率よりも高い頻度でディフェンスする必要はないということがわかりました。
では次に
・「IPはフロップでチェックレイズされた場合、(フロップで広くCbetしていた分)広くディフェンスしなければならないのか」
というテーマについて考えていきます。
これについては実際にmiaニキが翻訳してくれた掲示板の中でも質問されていましたね。
今回計算したOOPのチェックレイズは50%potに固定しています。
50%potなのでブラフ必要成功率自体は33%ですが・・・
ご覧の通りむしろ全てのシチュエーションにおいて40~50%前後フォールドしています。
特に相手のチェックレイズがバリューレンジに偏っているのであれば、更に広くフォールドしても良いかもしれませんね。
4-2,チェックレイズにフォールドするハンドの考え方
そもそも強いレンジの内のさらに40%弱をフォールドしていいわけですから、例えばKQ6rで安いCbetを打ってチェックレイズをされたときに、TTや99-のような弱いポケットペアでプレーを続行する必要はありません。
また、今回の計算結果ではQJやQTのようなミドルペアもバックドアがあるものはコールをしていますが、EVがほとんど0に近いということからも実践ではフォールドしても問題ないと思います。
なによりもフォールドしたハンドは相手から見られるわけではないので、それによってすぐにエクスプロイトされる可能性は非常に低いといえると思います。
このようにそもそもRange Bettingをするような自分にとって有利なフロップでは、ある程度マージナルなハンドはフォールドしてもリークにならない(=それくらい他に強いハンドがたくさんある)ということがポイントではないかと思います。
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このへんの「なぜブラフ必要成功率よりも多く降りても良いの?」という話はglassさんの特にこのあたりのブログが非常に参考になりますので、より深く知りたい方はぜひこちらを御覧ください。
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5,ターンはなんでもポラライズさせるの?
5-1,ここまでのおそらい・まとめ
ここまでのおさらいですが、
・多くのKハイボードでアグレッサーは高頻度にCbetを打つ
・ディフェンス側はアグレッサーに有利なフロップが開き抵抗できるハンドが少ないのであれば必要以上にディフェンスしようとせず素直にあきらめて良い。
・ディフェンス側はチェックレイズの頻度は高くてもK96ttで20%程度、KQ6rでは10%程度
・チェックレイズに対しては40%程度をフォールドして良い。
→相手がバリューヘビーであればもっと降りても良いかもしれない
ざっとこんな感じでしょうか。
では、ターンの戦略はどうなるでしょうか?
これについてはソルバーが出力した最初の戦略と、
相手の戦略をいくつかのパターンに分けてノードロックして再計算した戦略を比較していきたいと思います。
なぜなら僕個人としてはこの8種のフロップにおいては
ターンの戦略が最も大きくエクスプロイト可能なのではないか考えているからです。
ですがこれ以上長くなると誰も読んでくれなくなるので(すでに長いですが)ここまでを
広く安く打って終わりで勝てるほどポーカー簡単じゃない説(前編)
とさせていただきます。
来週中、と言いたいところですが毎回ブログを書くのに長時間を要している僕ですが今回はいつも以上にかかっていますので、今月中に後編をかけたらなと思っています。
是非楽しみに(?)お待ち下さい!
PS:そもそもですが、ソルバーでは70~90%程度のCbet頻度になるボードを簡易戦略として100%ベットにしよう、ということをRange Bettingと呼んでいるのか、
ソルバーでも100%Cbetの戦略になるものはRange Bettingと呼ばれるのか、
ベットサイズを混合した場合Range Bettingとは呼ばないのか
など色々と言葉の定義についてはわかってないです。
知ってる方いたらぜひ教えて頂きたいです。
その他にもこのブログに関する質問やご意見は
twitter: @REN_KOBE_
まで是非お気軽にお寄せください。
毎度冗長な文章で申し訳ありませんが、ここまでお読みくださりありがとうございました。
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