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2-3 ある夏の昼

2-3 ある夏の昼
B店は本当に楽しかったが
何か感動的なエピソードがあったわけではなく
A店とは真逆過ぎて楽しかった

一番記憶に残っているのは
あれは確か7月か8月の夏の昼間

1番シートで接客中のミカンちゃん(源氏名)が泣きながら抜け出して来たのだ

女の子が泣いちゃうことは滅多にないがたまにお客さんに酷い事言われてとか、あるにはある

ただ、ミカンちゃんはまだ当時20歳くらいだったが俺より長いのでちょっとやそっとのことで泣くようなキャラではない

一体何があったのかと確認してみると

1番シートのお客さんが小便をもらしてそれを口でキャッチしてしまったっぽいのだ

“これはやばい”

少し興奮気味にインカムで
キャッシャーにいた店長のY石さんに

「1番のお客さん小便もらしてミカンちゃんの口に入ったぽいです」
とインカムで伝えると

一秒後にはY石さんはレジを飛び出して来た
そしてまた一瞬で
お客さんの胸ぐらを掴み出したのだ

お客さんはどうやら泥水していたようであまり呂律が回っていなかった

それを見るやY石さんは

「チャイだな?!!お前チャイだな?!!」

※中国人ということにしたかったらしい

とすごい剣幕で怒鳴り

ゴッ!!!!

強烈な右ストレートをお客さんに浴びせたのだ

お客さんも呂律が回ってなかったが
抵抗する

そしたら今度はY石さんが

「M瀬!!捕まえてろ!」

その次の瞬間M瀬さんが白いタオルを持ってお客さんの後ろから口に入れて叫べなくしながら押さえつけた



お客さんはモゴモゴ言って暴れているがM瀬さんが押さえつけている

Y石さんは俺に
「K!レジ入れ!!あと音量爆音にしろ!!」

俺は急いでレジに入り
音楽をトランスに変え音量をかなり上げた

その時は暇だったのでお客さんは
1番シートと7番シートの2名だけ

7番シートの人と女の子達に聞こえないように曲を変え音量を上げた

Y石さんはもう止まらない
誰にも止められない

ガッ!!
ゴッ!!!

ガッ!!
ゴッ!!!

ガッ!!
ゴッ!!!


気が付くとお客さんは白目を向いて泡を吹いていた

泡を吹くって

マンガの描写でしか見たことがなかったが

本当に人間泡を吹くんだなぁと冷静に思ってしまった

俺がこのあとどうするか聞くとY石さんは

「店の横に寝かしとけ」と一言

俺はM瀬さんと二人で
泡を吹いて気を失っているお客さんを外まで運んで
気持ち少しだけでも店の入口から遠ざけて寝かせて放置した

薄暗くてよく見えなかっところが
外に出るとよく見える

酷い顔だった

万が一の事なんてないよなぁと内心ドキドキしながら営業に戻った

どうやらミカンちゃんも泣き止んで落ち着いたようだ

そして数時間後

外から救急車の音が聞こえたが

お店に誰か何か聞きにくることはなかった

その日は何事もなかったかのように終わったのだ

その次の週

驚く事が起きた

Y石さんがボコボコにしたお客さんが

普通に何事もなく来店したのだ

Y石さんもちょっとビックリしていた

もちろん、お酒の注文は断った

とても暑い夏の昼間だった








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