見出し画像

2−1俺というブランド

2-1 俺というブランド

BOSSは当時2つのお店を見ていた

9ヶ月自分なりに頑張って耐えたが戦力外と言われ

入社したA店から
店舗の大きさ、規模、売り上げもA店の半分くらいのB店に異動した。

NAさんからは、あの店は掃き溜め見たいな感じだぞ、これ以上仕事できるようにならなかったらあの掃き溜めに異動させるぞと何回か脅し文句のような事は言われたのでB店には本当に良いイメージを持っていなかった。

あと3ヶ月したら一年だし、それまで続けて辞めよう

それが俺の今後のイメージだった

この数日後そして数ヶ月後には
B店への考え方が、この仕事に対しての気持ちが
180度変わるとは夢にも思っていなかった。

このB店の店長、Y石さんとナンバー2のM瀬さん
この2人との出会いがあったことによって
3ヶ月で辞めるつもりが
10年以上も続けることに繋がっていると思う。

A店での話でK太さんの事を辞めた人間でまた会いたいと思うベスト3に入ると言ったが、後の2人はY石さんとM瀬さんだ。

この2人の存在は今でも特別だと思っていて
一生忘れることのない尊敬の気持ちがずっとある。

簡単な自己紹介をするとA店の店長Y石さんは
背が180センチ以上はあって坊主で体格も格闘家みたいにガッチリしていた
奥歯がどっか歯が抜けているのか(見た感じわからない)
シー、、シー、、と歯の隙間を通る音をさせながら
息を吸う癖がある。
結構時間が経ってからわかるのだ、年齢は俺と同い年だった。
見た目は若いけど、勝手なイメージで修羅場をくぐってそうな
顔つきが俺には最低でも3つは年上に思っていた。
また、A店でお世話になったK太さんがY石さんの事を「兄貴」と呼んでいたのも理由の一つだ。K太さんの方が3つ以上年上なのにY石さんのことを兄貴と呼んでいる理由は最後まで聞けずじまいだった。

ナンバー2のM瀬さんは俺の4つ下だった。
俺がA店にいるとき何度か来てて面識はあったがNAさんの前ではヘコヘコしていて俺ら下っ端の前では偉そうにしていたので特別好きではなかった。
背は165センチ位で髪の毛が針ネズミみたいに直毛で長めのツンツン頭で
オレンジのレンズに金の縁の眼鏡をかけていた。当時の俺でさえ【いつの時代のチンピラだよ】と思ったくらい、格好はイケてはいなかった。

NAさんにはB店の人間は仕事ができないとずっとネガティブなイメージを吹き込まれていたのでその先入観のまま異動したが、結果俺はこの店での時間が本当に宝物だと思っているし一番と言っていいほど楽しかった。

まぁそう思うのはもう少しだけ先の話なんだけど・・・

異動した当初の記憶はあんまり覚えていないのだけど
最初に起きた出来事だけは覚えている。

BOSSに呼ばれたのだ

入社したからBOSSと言葉を交えたのは数える位しかなかった

だから何を言われるか想像していなかった。

B店は2フロアで営業していて基本は1階の1フロア営業で金曜の夜と土日は混むので2階の2フロア営業というお店だった

ある時、BOSSが呼んでると言われ
2階に上がった

BOSSは先に座っていて
少し沈黙はあったが
表情は一切変わらず
先にBOSSが口を開いた

「この店にはもう慣れたか?」
俺は
「はい、おかげさまで慣れました」と相変わらず話が弾まない返答をしたと思う。

BOSSは一体何が言いたいんだろうと思いながら
会話を続けていたら
BOSSはこう切り出して来た

「K、お前はNAのようにもY石みたいにもなれない」

その時、俺はBOSSは俺が仕事ができないと言いに来たのか一瞬思ったけどそうじゃなかった

「NAにはNAの、Y石にはY石のブランドがあるだろ?お前はお前のブランドをちゃんと作って上に上がれ」

それだけ行って、去って行った。

なんかもっと重い話になったりするのかなとか想像していたので
拍子抜けしたのもあったけど
NAさんのように罵ったりはされなかった

少しだけ気が楽になった

まだこの仕事を続けられる自信はなかったけど
久しぶりに否定されなかったのが嬉しかった

腐るつもりはなかったけど
この環境で
少しの間、腐らずやってみようと思った

Y石さんとM瀬さん以外は俺よりキャリアが短い人ばかりで
何かと頼りにされた

原動力

というのは色々あると思うけど

人に必要とされる、頼られるというのは

間違いなく誰にとっても原動力になり得るんだと思う

それは俺も例外ではなかった

完全に消えたと思った俺の中の蝋燭の火は

芯の中に再び熱を持とうとしていた


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?