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2-4 渇望

2-4 渇望

B店に来て3ヶ月
入社して一年が経った
一年経つと
残る人間、辞める人間が明確に別れ
俺はとうとう中堅のポディション
になってしまった
記憶は定かではなかったが
その年は3.11の影響で
東北出身の女の子が在籍に多かった気がする

当時の店は今と違い強面武闘派系の人や
ブランドネクタイ、ブランド時計
ブランドスーツを身に纏ったTHE水商売系の見た目の人がどのお店にも多く
俺は本当に未経験だったこともあり
女の子達は話しかけやすかったんだと思う
B店ではよく女の子に話しかけられた

一年もこの仕事をすると
お店の女の子と話すのが自然とできるようになる
なんなら、モチベーションに繋がるように
意識しながら話すのが癖づいてしまっている

B店で一番俺のことを慕ってくれたのは
当時ランキングナンバー1になったばかりの
ココちゃん(源氏名)という女の子
この子も東北出身だ。

当時人気絶頂期のAKB48メンバー
大島優子さんに似たルックスで
黒髪清楚系ショートカット
いつもニコニコしていてお客さんからは大人気だった

📍サロ男子従業員への教育方針、美徳として
●女の子はアルバイトなんだから男子従業員の言うことは絶対
●女の子が不満や文句を言うならば詰める、従わせる
というのが昔から浸透していた

さっきまであんなに仲良くしゃべっていたのに
30分後には男子従業員に怒られて泣いているという光景は当時珍しくはなかった

後からわかるのだが
ココちゃんは当時の店長Y石さんやナンバー2のM瀬さんが苦手のようだった

女の子には女の子にしかわならない女の子目線というのがあるんだと思う

ご存知の方もいらっしゃると思うが
📍サロって結構オラオラ接客が普通だったりする

何でオラオラするかというといろんな理由があると思うが当時は今と違ってオナクラやリフレもメンズエステもない大衆向け風俗では📍サロ一強時代

俺より長い人はよくこう言っていた
「いい女がいれば勝手に客は入る」

殿様営業が成り立っていたのだ

お客さんをお客さんとは思ってなかった人間が大半だったと思う
そしてその殿様営業は女の子達に対しても例外ではなかった

信頼で人を動かそうとはせず
その時の立場や上下関係だけで動かしていた

ココちゃんはそれがとても嫌だったのだと思う

自分に自信が無いココちゃんで
みんなの前ではいつもナヨナヨしていた

でも心の中にはちゃんと芯があるのだ
だからナンバー1になる努力もできた

そんな彼女の性格だからこそ
現状維持、変わらない考え方や体質のお店に少なからず不満はあったんだと思う

何故俺のことを慕っていたかというと
俺が女の子に対して恐い態度を取ったことが一度も無かったからだと思う
あと、人の話はちゃんと最後まで聞くところ

女の子が準備をするときに手洗いうがいをする場所があるのだがそこには「日本一のお店としてどうのこうの、、、と」女の子に良い接客しなさいという内容の文章が箇条書きされている張り紙があった

ある日
店内のエアコンの調子が悪く灼熱の暑さの日があった

ココちゃんは目に涙をためながら俺に
「日本一とか女の子に押し付けるならエアコンちゃんとしてくださいよ!!」と

怒りの表情で言っできたことは今でもハッキリ覚えている笑

俺に対してというより
Y石さんに対しての不満だったのだ

この文章だけ見ると何だか俺が正しいような印象だが
俺はただ、割り切れていなかったのだ
人の上にも立ってない、立つ気のない俺は
ただ話を聞くだけ

自分の意見を主張する覚悟どころか
意志が無かったのだ

でもココちゃんはそれを俺が優しい人だと認識してしまい慕ってきてしまった

そして俺もそれが俺のブランドだと思ってしまっていた節は否定できない

恥ずかしい話だかあまりにも器が小さかった

Y石さんは確かに
女の子の事をゴミのように扱い捨てれる人だった

だが男子従業員に対しての情は厚く
掟を破る人間がいるならば鬼神にもなれる
0か100かの漢だった

俺のY石さんの好きな思い出のひとつに

店を卒業する、とても貢献してくれた
ランキングの女の子がいてその日の最後に
Y石さんとM瀬さんと俺に手紙をくれた

俺とM瀬さんは手紙を見たがY石さんは女の子が帰ると中身を見ずにすぐに手紙を破り捨てたのだ
表情を一切変えることなく

これが本当にY石さんという人間を象徴していて
最後までこのスタイルを突き通していた
これがY石さんブランドなのだ

俺はうまくやっているようで
全然中途半端だったのだ

きっとそこにY石さんとM瀬さんは気付いていたのだろう

楽しいだけではダメなのだ

二人はあの時
階段を登れと思ってたに違いない

仕事ができるようになるのと
自分が変わるのは全く別だった

二人は俺に
仕事だけできるようになることを
望んでいなかった







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