『Mommy マミー(2024年)』レビュー

久々に見応えのあるドキュメンタリー。
でも、そもそもなぜ「カレー」だったんだろう?

 こういうシリアス目なドキュメンタリーに対してこういう言い方するのも語弊があるような気がするし、それを承知で以下のように断言する。
「ミステリーでも解き明かすかのようにスリリングでめちゃくちゃ面白かった!!」と。

https://youtu.be/yDTLYUKRQm0?si=4W5MRqwvlDStd6xY

 当時取材のしつこいマスコミ勢に満面の笑顔でホースで水をぶち撒ける林真須美氏の姿が余りにもセンセーショナルだったので未だに記憶に焼きついているこの「和歌山カレー事件」。
そんな私を含め、完全に彼女を犯人と決めつけていた世間の塗り固まったマインドを説きほぐすように当時目撃証言とかそこから見える粗(あら)だったり、これまた当時の科学検証から更に再考を促したりする場面が交互に交差するような、まるでサスペンス的な怒涛の展開に食い入るように観た119分だった。内容のシリアスさはともかくとしても、この種のドキュメンタリー特有のモッサリ感が全くなくって映像の作りが飽きさせずって感じでカッコ良いんだな。
全く眉間に皺寄せて深くため息ついて劇場を出る覚悟はしておいたというのに、なんで笑ってしまうシーンがいくつもあるんだよって話で、しかもその笑いの主流源は死刑囚とされている旦那さん発端だったりするからタチが悪い(笑)
 確かに彼女の「無実」を証明する為に「当時の別角度からの再検証も必要だ」っていう林氏の家族はじめ弁護団や支持者らの主張も充分に理解できる。
ただここで思うのが、あの「保険金詐欺を犯した」と言う事実に関しては完全にクロだって事が完全に本作ではむしろ強調されたようにこれでもかとばかりに本人達の口から明るみになってしまうのがどうにもネックになってしまう。
 それだけ夫である林健治氏があんだけ明け透けに保険金目当てでヒ素飲ませただのだのぶち撒けてる場面があってもうそれが衝撃レベルなのだ。
だから「詐欺などの罪は認めたとしても、死刑執行“だけ”は免れたい」って意思のもとで無実を主張しているんだろうか?
 じゃなきゃ「完全無実」っていうのもいくら何でも無理がありすぎるから。
そういう意味でも「無実の定義」が曖昧な気がした。クロとかシロとか以前に元々のグレーゾーンというかゼロ地点にまで引き戻そうというのが、そこに彼らの目指す第一目標があるんじゃないかって気がする。

 あと最後に疑問に思うのは何で「カレー」だったんだろうかと。
だって祭りの時って闊歩しながら食べるってのが便宜上の目的なので、ああいう流動食っぽいものじゃなくて「焼きそば」だの「イカ焼き」だの「とうもろこし」だの固形物が主流じゃないか?
あの時あの祭りで「カレー」を提供しようと思いついた人って誰だったんだろうか?
まさかヒ素をのっけから入れる目的でうってつけの食品として思いついたのではないか?などとそこに真犯人を解き明かす鍵があったりして。
 それにしても、本作上映後に今後はあの事件に何か変化をもたらす動きがあるのだろうか?
で、もし、それで林真須美氏から「死刑囚」の肩書きが取れて別の誰かに罪がある事が分かったとしても当時から26年もの時を超えてこうして事件が掘り返されている現在でさえも最大のスケープゴートは「カレー」である事には変わりないが。

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