幸福のヒエラルキーについて

 昨今ポジティブ心理学等、人の幸福を扱う学問領域の発展により、人間の幸福の構造が経験科学的裏付けを伴って見えてきたようである。曰く、幸福は三層のピラミッドのように考える事ができ、最下層は健康の充足であり、第二層は人同士の繋がりの充足であり、第一層が社会的な成功や達成などの充足だという。このことは概ね真実であるように思う。内的洞察の力に富み真っ当に年の功を積むことに成功している人生の先輩達は、皆このような幸福観に到達しているように思える。従って今日議論しようと思うのはこの考えの是非ではなく、「ではいかにしてこのような幸福を実際に追求すべきか」ということである。一つ考察を得たので、記そうと思う。
 結論から言えば、先ず第三層が足りたら、一足跳びに第一層に着手せよ、となる。ピラミッド型のヒエラルキーに喩えるからには下から順番に満たさなければいけない訳だが、第二層の性質上、それは難しそうだと思える。他人とは、その人がその人らしく魅力的に振舞う時に、吸い寄せられように集まってくるものだからだ。銀行の融資じゃないが、雨の時に傘を寄越さないくせして日照りには傘を貸してくるというのが人間なのだ。だからあなたは安住できるコミュニティを見つけたら成功を掴む努力に乗り出そう、と目論むべきではなく、一も二も無く努力を始めてから、人との繋がりを求めるべきなのだ。言い換えれば、この上位両層は殆ど同時に満たされるものなので、別個に取り組む必要はないのだ、とも言える。
 徒然にこんなことに思い至ったのは、私自身この手順を誤り、不器用にコミュニティを求め遠回りしていたからである。何かの縁でここを訪れた人達に良き"ショートカット"が提供できれば、それも私にとって一つの幸福である。

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