どこにもいない三郎

どこにもいない三郎は
五歳の男の子で
いつも青い毛布に包まって
ソファの上でお昼寝をしている

三郎はどこにもいないので
夫婦には子供がいなかった
だから夫婦は三郎に 
子供服を買ったことがない
それでは三郎がかわいそうだと
夫婦は子供服を買いに行くことにした

かわいそうな三郎
お洋服も着させてもらえず
さぞ寂しかったでしょう
ほら今日は好きなお洋服を
買って帰りましょうね

どこにもいない三郎に
夫婦はお洋服を選んでいく
デニムのジャケットに
ネイビーのパーカー
白のパンツに
赤のスニーカー
きっと三郎は喜んでくれるはずと
夫婦はお洋服を選んでいった

夫婦には三郎が必要で
だから どこにもいない三郎は
夫婦の家のソファで
今日もお昼寝をしている
妻は時折三郎に話しかけながら家事をして
夫は帰ってくると三郎にただいまと言う

どこにもいない三郎は
本当にどこにもいない
そんな事は関係なく
夫婦は三郎のことを
心からかわいがっている

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