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「無意識ー空の章ー」

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地方の町に突如現れた謎の建物。そこに集まる小さな奇跡(?)の連続で、ある「歌」が出来上がっていく物語です。全12話完結済。この後BGMやちょっと変わったインタビュー記事などを追加…
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2020年8月の記事一覧

「無意識ー空の章ー」#7 気配

⬇️前回の話はこちら 何もない空き地にコンクリートの建物が姿を現してから1年が過ぎた。 違和感だらけだった存在も、慣れる時は必ず来る。 はじめの4カ月は、外から口を開けて見上げていたけど 春からの4ヵ月は、チカチカの看板に吸い寄せられてついつい立ち寄る場所になり 夏以降の4カ月は そこに通うこと自体が完全に日常になった。 17:50  自動ドアを抜けて、派手っちい螺旋階段を当たり前のように上る。 二階まで上りきると、カウンターの前を横切りながら今いるメンバーをチェック

「無意識ー空の章ー」#8 足音

⬇️前回の話はこちら 例えば、こんなことに気が付いた。 「そしたら、ネズミが猫を飼ってることになるんだよなぁ」 ハリネズミが猫にエサをやるために大急ぎで帰って行った夜から何週間か過ぎているのに、何で今頃気付くんだろう。 しかも気付いた場所が電車の中だもんね。ひとりで薄ら笑いをしてしまった言い訳を誰にすればいいかも分からない。 せっかく気付いても誰にも伝わらない可笑しさ、これ、どうすればいいの? 木曜日はなるべく学校に行くようにしている。 俺のことを唯一かわいがってくれ

「無意識ー空の章ー」#9 招き猫

⬇️前回の話はこちら フレンドシップが急に混みだした。 無駄口を叩く余裕がないぐらい、俺も夏井さんも、もちろん未智さんも黙々と働く日々。閉店する頃にはいつもみんなクタクタ。今日は、早番の雪さんも夜まで居残って手伝ってくれている。 最近、何かあったっけ。 冬休み?クリスマス?ああ、クリスマスソングか。 そう言えば店のBGMも稲垣潤一とマライアキャリーと山下達郎とマッキーの繰り返し。 たまに未智さんが角松敏生をかけて、俺が「誰これ?」って言うと、ノールックでぶっ叩かれたりす

やっと繋がりました!

こんにちは 日向寧々です。 8月も半分が過ぎて、私がnoteに投稿を始めてから1ヶ月半。 更新回数が明らかに減ってるじゃん。どうしたneneすけ。 (何この呼び方) 7月初めのあのワクワクした気持ちを失った訳では決してなく 書く内容を、もうひとつやっているブログとどう振り分けるかを考えて。 振り分けた結果、noteに置いておくものはある程度範囲を絞って書くので 今のところ「作品そのもの」もしくは「その解説」が中心になっています。 けど、まだまだ皆さんにお話ししたいこと

「無意識ー空の章ー」#10 雪の朝

⬇️前回の話はこちら それから5分後。 北里泉は最後に一つ残っていたコーヒーを一口飲んで 「熱い!」 と顔をしかめた。 もう淹れてから15分は過ぎてるのに。 「もう冷めたんじゃないの」 と言うと 「まだ熱いの。でも、おいしいの!」 と、こっちを見ずにもう一口飲んだ。 その周りで雪さんたちは興奮気味に話し続ける。 「今度さ、泉ちゃんのピアノ店内に流したら?時間決めて生演奏とか」 「お客さん、集まるかもね」 「そうじゃなくても“招き猫”だし」 「あ、そうか。招き猫がピ