
BBvsBTN(3betpot)におけるレンジベッティング戦略について
noteが今アツいと聞いて開設してみました。
いつものはてなブログから出張です。
ついでに、界隈では「レンジベッティング」がアツいと聞きました。
うーん、どうやら「レンジベッティング」はお手軽で強いらしい!
でも、いつ「レンジベッティング」すればいいんでしょう?
ちょうどブログでやっていたのは、BBvsBTNの3bet potです。
ということで、BBvsBTNの3bet potについて集合分析を回し、BB側の「レンジベッティング」CB戦略を策定していきます。
●前提条件(BBvsBTN 3betpot)
シチュエーションは以下のとおりです。
・Preflop(100bb持ち)
BTN:2.5bb open
SB:Fold
BB:3bet 7.75bb
BTN Call 7.75bb
・Flop(pot 16bb)
BB:??
なお、ハンドレンジはPoker SnowieのPreflop Advisorを参考にしています。
●GTOによる最適戦略
BBvsBTNの3bet potにおいて、既にpotには16bbが入っている想定です。
フロップを1,000通り用意し、まずは指標として、混合戦略でのGTO(Check/Bet(25%pot)/Bet(36%)/Bet(50%)/Bet(70%)/Bet(100%))を回します。
※BBは、GTOで上の6つのアクションをボード毎に最適な頻度に混合したCB戦略を採ります。
混合戦略によって得られたEVは、後で検討する「レンジベッティング」によるEVと比較するために使います。
上記の結果を表にまとめると、下図のとおりになりました。
この図から、BBは1,000ボード(16bb pot)で最善を尽くすと、平均「9.09bb」のEVを得られることがわかりました。
言い換えれば、BBvsBTNの3bet potは、BB側が既にハンドレンジの差で有利を握っていることから、ポジションは悪いながらも期待値として9.09/16.0bbのEVが見込めるといえます。
また、全てのボードでのBBの平均CB額を計算すると、図のとおり「33.18%(対pot比)」となることがわかりました。
●レンジベッティング1枚刃:「ALL33%pot CB」
1,000ボードにおけるBBの平均CB額は、「33.18%(対pot比)」でした。
とはいえ、平均値はわかりましたが、実際に個別のボードでのGTO戦略を見てみると、下図のようにめちゃくちゃ複雑な戦略になっています。
この戦略を私たちが真似するのは、ちょっと非現実的です。
こんなときこそ、「レンジベッティング」を策定してみましょう。
1,000ボードのCB額平均値「33.18%(対pot比)」を参考に、BBが「全レンジ33%CB」をした場合のEV値を計算してみます。
図にするとこんな感じです。
BBは、BTNのオープンに対して3betを打ち、BTNがその3betに対してコールしたと見るや、フロップ3枚が開く前に、既に33%potのCBを打っています。
う~ん、ポットがデカいにも関わらずこの大胆さ、かっこいい!
自分のハンドの強さを気にせずアクションができる、これぞ「レンジベッティング」のお手軽さです。
では、この「ALL33%pot CB戦略」は、果たして有効でしょうか?
3bet potにおけるBBの「ALL33%pot CB戦略」の有効性を検証します。
各ボードについて、冒頭の最適戦略とのEV_LOSS(乖離EV)を調べます。
このEV_LOSSが小さいほど、「ALL33%potCB戦略」は、最適戦略に遜色なく「疑似GTO戦略」として利用できるといえます。
1.000フロップにおけるEV_LOSSをまとめると、下図のとおりになりました。
なんと、16.0bbのpotに対して、「ALL33%potCB戦略」による平均EV_LOSSは、▲0.13bb(▲0.85%pot)です。
最適戦略による平均EVは「9.09bb」でしたが、これを「ALL33%potCB戦略」で代替しても、BBは「8.96bb」のEVが期待できます。
EV_LOSSをどの程度まで許容するかは議論が別れるところですが、GTO+の設定ではEV誤差を±0.50%まで認めていることを踏まえ、GTOの疑似戦略として代替可能とする基準は、気持ち厳しめに▲1.00%pot(今回だと▲0.16bb)とします。
今回は、645/1,000のフロップでこの▲1.00%potの水準をクリアしており、平均値も▲0.85%(▲0.13bb)に収まっていることから、「33%potのレンジベッティング」は概ね有効といえそうです。
どうやら、「ALL33%pot CB戦略」は一定の効果を示しています。
ただ、一部のボードによっては大きなEV_LOSSを示していることも事実であり、もっと有効な「レンジベッティング」を策定できるかもしれません。
●レンジベッティング2枚刃:「ALL35%pot CB」or「ALL25%pot CB」
レンジベッティングの良い点はお手軽さです。
事実、「ALL33%potCB戦略」は、簡単ながらも一定の有効性を示しました。
一方で、全てのボードストラクチャーにおいて、単一のレンジベッティングを使うのは、若干の抵抗があります。
その理由として、下図は、フロップのボードストラクチャーがGTOの平均CB額に与える影響をまとめたものになります。
この図から、BBは「モノトーン」と「ストレートを作るコンボがあるボード(AJT、JT9など)」においては、CBを安く抑える傾向があることがわかります。
(なお、こうした回帰分析の詳細は過去のブログ記事で扱っています。)
つまり、先程の「ALL33%potCB戦略」では、「モノトーン」と「ストレートコンボがあるボード」において、「本来の最適解よりもCBを打ちすぎている」ことにより、こうしたボードでのEV_LOSSが大きくなっているといえます。
そこで、1枚刃のレンジベッティングだけで難しいならば、下記のような2枚刃のレンジベッティングを用意してみました。
BBvsBTN(3bet pot)において、BBは「ALL35%potCB戦略」を採るが、フロップが「モノトーン」または「ストレートコンボがある」場合に限り、「ALL25%potCB戦略」を採る。
ここでの「ストレート」とは、ストレートが完成した場合ではなく、「ストレートコンボが存在し得るボード」を指しています。
1,000のフロップにおいて、この「モノトーン」または「ストレート」に該当するボードは、234ありました。
つまり、サンプルとなる1,000のうち、766のボードでは「ALL35%potCB戦略」を採り、234のボードでは「ALL25%potCB戦略」を採る戦略です。
2枚刃の「レンジベッティング戦略」において、注目するのはあくまでボードストラクチャーです。
個別のハンドの強さは問題ではないため、BBは自分の2枚のハンドを見ることなく、上記の戦略を採ります。
具体例として、下図のようなボードでは、BBはALL35%potCBを打ちます。
反対に、下図のようなボードでは、ALL25%potCBを打ちます。
たかが25%と35%における10%の違いですが、ボードストラクチャーに応じた2枚刃の「レンジベッティング」に変えたことで、EV_LOSSは以下の数値になりました。
先程掲載した「ALL33%potCB戦略」(下図)と見比べると、EV_LOSSの平均値と中央値がともに小さくなり、グラフも全体的に左(EV_LOSS小)に偏っていることがわかります。
当たり前ですが、GTO戦略の再現性という点では、2枚刃の戦略(ALL35%orALL25%)は、1枚刃の戦略(ALL33%)の上位互換となりました。
2枚刃のレンジベッティング「ALL35%pot CB」or「ALL25%pot CB」の結果、平均EV_LOSSは▲0.11bb(▲0.70%pot)、中央値EV_LOSSは▲0.09bb(▲0.58%pot)です。
また、772/1,000のフロップが▲0.16bb(▲1.00%pot)の水準に収まっており、およそ77%のフロップが「ALL35%pot CB」or「ALL25%pot CB」によって代替可能であることがわかります。
つまり、75%を超えるフロップにおいて、2枚刃のレンジベッティング戦略は、GTOが採り得る最適戦略と同水準のEVを獲得できるということであり、かなり使い勝手は良さそうです。
●結果と補足
結論として、「レンジベッティング」の策定結果をまとめると、以下のようになりました。
BBvsBTNの3bet potにおいて、BBのCB戦略は、「ALL33%potCB」のレンジベッティングによって、およそ64%のフロップでは疑似GTO戦略として扱うことができる。
また、同シチュエーションにおいて、基本的には「ALL35%potCB」を打ちつつ、フロップのボードストラクチャーが「モノトーン」or「ストレート」の場合のみ「ALL25%potCB」を打つ2枚刃のレンジベッティングにすると、77%のフロップで疑似GTO戦略として扱えるとともに、さらにGTO戦略の再現性が高くなる。
ということで、今後は、手っ取り早くCBを決めたい時には1枚刃の「ALL33%potCB」、もう少し再現性が高い凝った「レンジベッティング」をしたい時には2枚刃の「ALL35% potCB」or「ALL25%potCB」がおススメです。
さて、以降は余談ですが、ちなみに2枚刃の「ALL35%pot CB」or「ALL25%pot CB」でもEV_LOSSが小さくならないフロップとは、どんなものがあるのでしょう?
個別にボードを調べていくと、大きく以下のタイプがありました。
①100%potCBを多用するポラライズ型のフロップ
②オリジナルであるBBがCBをほぼ打たない「ALLCheck」型のフロップ
こうしたフロップは、外れ値としてレンジベッティングに適さないボードといえます。
ただ、外れ値のフロップの数は限られていることに加え、2枚刃のレンジベッティング(「ALL35%pot CB」or「ALL25%pot CB」)では、1,000フロップのEV_LOSSが全て▲0.50bbに収まっています。
なので、外れ値は外れ値として許容したうえで、気にせず全ボードに適用しても構わない水準とは思います。
●終わりに
レンジベッティングは、一度習得してしまえば、相手が誰であろうと簡単に使える技術です。
また、エクスプロイトを試みる場合でも、基準の戦略として参考にできます。
例えば、今回のBBvsBTN(3bet pot)において、「相手のBTNがパッシブである」という情報を持っている場合には、CBに対するBTNのレイズが少なくなることが予想できるため、通常の2枚刃「ALL35%pot CB」or「ALL25%pot CB」の戦略から、さらに切れ味を上げた「ALL70%pot CB」or「ALL50%pot CB」がより適しているかもしれません。
つまり、レンジベッティングを覚えていれば、アンノウンに対する疑似GTO戦略として使えるとともに、エクスプロイトするための基準としても活用することができます。
レンジベッティングはお手軽、かつ使い勝手が良いですね!
以上で、BBvsBTN(3bet pot)のレンジベッティング戦略の策定になります。
最後に、当方では広く「〇〇のときの〇〇戦略を調べてほしい」といった要望を広く募集しています。
なにか興味あるシチュエーションがあれば教えてくださいね。