隠せない

どうしても張り詰めた空気を壊したがるクセが抜けない。緊迫する場で、変なことを言いたくなるし、したくなるのだ。ヤバいやつやん、、、そう思う方もいるかもしれない。だが、私をヤバい奴認定するのはまだ早い。早まるな。先急ぐな。まずはこの先の文章を読むといい。

この前、歯医者で強制的に唇をあんぐりと開けられる装置をつけられた。分かるだろうか。そう、あの歯茎丸出し装置のことだ。私は歯の治療のため歯茎丸出し装置をつけられ、きっと私は変な顔なんだろう、そう思いながらも歯科医が治療を始めるのを待っていた。ところが、私をあのクセが襲う。『ここで変なことをしたらウケるぞ』クセの悪魔クセーノが私にそう囁く。そこで、天使が、、、、いや天使はおらへんかったな。クセーノの囁きに私は気持ちよさを覚えた。


そして、私は歯茎丸出し装置をつけながらさらに口を大きく開けて「へへっ」と歯科医に微笑んでみせたのだ。


歯科医は顔を覆い隠しながらしばらく笑っていた。

ずるいな、君は隠せて。
私なんて歯茎丸出しだぞ。
そんなことを思いながら歯科医を見つめた。




インスタントフィクションとは、自由な発想と気軽なノリで書かれた文章。自分の思う「面白い」を入れて400字以内で表現。
ピース又吉直樹【渦】公式YouTubeチャンネルより

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