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ルミネ売上不振の原因はコロナではなく、過度なテナントリニューアル?決算資料から読み解く

ファッションを数値で読み解くシリーズ5つめ。
今回は、ファッションビルの雄であるルミネに関して。

ルミネの決算情報はJR東日本のIR情報の中に入っている。

ルミネの20年3月の売り上げが低下

2020年3月期の営業収益は743億円で、19年3月期の768億円よりも下がっている。
https://www.jreast.co.jp/investor/guide/pdf/202003guide1.pdf P32より)

この減少について決算資料では「新型コロナウイルスによる影響による減」と説明されている(同上p23)

売り上げは、20年10月から前年比を割っている

しかしこれでは説明できないことがある。
コロナが本格化した20年の2月以降から売り上げが低下しているわけではなく、前年割れは19年の10月から発生している。

(同上p23より)

となると、これは単にコロナのせいだけではなく、別の理由もあるのではないか?

2011年3月決算までさかのぼる

11年3月決算からの営業収益(≒売り上げ)の推移をグラフ化した。
縦軸は営業収益(億円)/横軸が決算発表月である。
そのため、2020年3月決算の収益は、だいたい19年の売り上げである。

https://www.jreast.co.jp/investor/guide/ の各年の決算資料から作成)

これをみると20年3月決算のときに売り上げが下がったものの、それまでは売り上げを毎年伸ばしていたことがわかる。

売り上げの伸び方は小さくなっている

しかし、前年との差をみると、、

前年からみてどのくらい売り上げを伸ばしているかの差はどんどん小さくなっていたことがわかる。

ルミネが2020年3月期の決算で売上不振になった原因は、
19年10月よりもずっと前から存在していたのではないだろうか?

調査開始 人出が多いと売れない?

まず、同業他社のパルコ・丸井の決算資料をさぐったが、こちらはルミネと同じような売り上げ推移を描いておらず、ショッピングセンター自体のビジネスモデルの限界であるとは結論付けられなかった。
(パルコは前年の売り上げを超えたり超えなかったりしていた)

また、親会社?のJR東日本のデータを使用してみた

これから散布図をかいてみると、

JR東日本の定期圏以外の収入が増えるほど(=定期を使わない人手が増えること)、逆にルミネの売り上げの伸びは鈍化しているように見える。

このことは、街に人が多くなると人はゆっくりできないので買い物をする気をなくしたと解釈するべきかもしれないし、
そもそも時系列のデータを散布図にしてしまっているので、11年とくらべて訪日外国人の数が増えているが、外国人はルミネで別に買い物はしないと考察するべきなのか、判断に迷うところである。

調査継続。テナントの入れ替わりの数

3つ目の軸として、ルミネはよくお店のリニューアルをしているが、毎年どのくらいやっているのかを集計してみた。

(巻末に出典リンクを載せます)

これをみると、店舗のリニューアル数は年を追うごとに増えていることがわかる。
※2020年の春期リニューアルは150店舗の予定であり、すこしだけ減っている。

さて、このリニューアル数と売り上げの前年差をまとめると、

※12年4月からの店舗リニューアル数は、13年と14年の春のリニューアル数からの推測値

テナントのお店を変えすぎると売れづらくなる?

店舗をリニューアル数数は増えていくたびに、前年との売り上げの差はどんどん小さくなっているように見える。

2016年はリニューアルの数が前年より少し減っているが、そのときだけ営業収益は前年より大きく伸びている。

推測 ファンになったタイミングでテナントが変わった?

ここまでのデータから推測してみた。

ルミネのユーザーにとって、テナントの変更は「あ、せっかく通い始めたのに、あのお店もう無くなってしまったのか。。」という体験を引き起こしたのではないだろうか。

あるブランドのファンになるには最低3回は購入が必要だろう。
洋服の特性を考えるに、購入するタイミングは多くて年4回そこそこ。
つまり、あるアパレルブランドを初めて知って、そこから最低9か月はファンになるまでに時間がかかると考える。

しかし、1年そこそこでテナントが変わり続けると、ちょうどせっかくファンになったかならないかのタイミングで、そのブランドは退店することになる。
(メジャーブランドは長くテナントにいるが、ブランド認知度が低い=初めて知ることになるブランドほど早く退店するだろう)

人間はほんの少しの変化であれば、それを喜んで受け入れるが、基本的には変わらない毎日を求めている。

テナントのリニューアルという望まない変化がやってきたとき、しかも大量に訪れた時、人は新しいテナントの探索を諦めてしまうのかもしれない。

コロナ以降、以前よりも安心が求められている今、刺激をウリにした戦略はますます機能しづらくなるのではないか?と思った今日この頃。


(巻末)ルミネのリニューアル店舗数の引用元一覧

2011年秋 https://bg-mania.jp/2011/08/02013220.html
2012年秋 https://woman.excite.co.jp/article/lifestyle/rid_FashionLatte_220663/
2013年春 https://digitalpr.jp/r/3631
2013年秋 https://shinjuku.keizai.biz/headline/1808/
2014年春 https://fashionmarketingjournal.com/2014/02/lumine-2014ss-renewal.html
2014年秋 https://www.lumine.ne.jp/newsrelease/pdf/release_140805.pdf
2015年春 http://lumine.ne.jp/newsrelease/pdf/release_150811.pdf
2015年秋 https://www.lumine.ne.jp/newsrelease/pdf/release_150210.pdf
2016年春 https://www.fashion-press.net/news/21814
2016年秋 https://www.lumine.ne.jp/newsrelease/pdf/release_160817.pdf
2017年春 https://www.ryutsuu.biz/store/j021517.html
2017年秋 https://www.lumine.ne.jp/newsrelease/pdf/release_170825.pdf
2018年春 https://www.ryutsuu.biz/store/k021618.html
2018年秋 https://mainichi.jp/articles/20180816/pls/00m/020/251000c
2019年春 https://www.fashion-press.net/news/47172
2019年秋 https://www.wwdjapan.com/articles/915502  

お金を稼ぐということが大変だということを最近実感しています。サポートいただけると幸いです。