哀れなるものたち

感想!!!
映像が美しいことは言わずもがな!!!
演技すごすぎ!!
ダンカンのコメディっぷりがすごいのにしらけてて残念だった!!!

人生に絶望した女が、胎児もろとも命を絶つが、その死体を見つけた医者が、誰にも同意をとらないまま勝手に胎児の脳を母の脳に移植、蘇生させるというところから物語が始まる。
というあらすじ、めちゃくちゃ反出生主義へのアンチテーゼだなあと思った。

物語が進むと、母となった女がなぜ自殺を選んだのかが明かされる。
母の人生である、家父長制を絵に描いたらこうなったのだろう夫と2人きりの城/世界に閉じ込められることがわかりきっているのに、こんな城/世界に子供なんて産めない。あるいはあんな、モンスターのような男の再生産はできない。と思ったから産まないほうが良い/生まれないほうが良い、と思った、ということだと思うのだけど、母は子諸共自殺する。そしてゴッドは母の意思に反してベラを生み出してしまう。

自分が産もうとしなかったものとして、主体のない存在としてベラは産まれるが、代わりとしてゴッドがその命の責任を負うことになる。

「自分の体は自分のもの」ではない状態から、自分の意思で自分の体を手に入れる。そのきっかけが性の目覚めだったことを描いた上で、良識ある社会」が性の快楽を女主体で求めることを阻止しているというのも何度も描写している。

体が自分の体として目覚めるまで、親の手が必要な時代、ゴッドはベラを監禁し暴力で言うことを聞かせる。逆に、ヤバ夫は、女が性の目覚め以後も、大人になってもそれを相手に強いて、性の目覚めの逆(去勢)をしようとしていて、

性と自立って言われ尽くされたことだけどなんとなくピンと来ていない部分があったので腑に落ちた感じがした。物語の力ってすごい

一方ゴッドはゴッドで父親から、実験を理由に、(あるいは自分の受けた被害を正当化するためにそう言い聞かせているだけかも)ひどい虐待を受けていたのに、それでも「生は魅力的だから」新しい命を生み出すことに、死にそうな命を救うことに躊躇いがない。スゲーキャラ。スゲーキャラだけど、父親が悪意を持って加害していたことからは目を背け続けていた。完全にコントロールして、実験体としてベラを見ていたのに、ベラから「このままだと憎しみを持つようになってしまう」と、ベラの思いをぶつけられ、ベラを愛しているからこそそれに応えてしまった自分を通して、父親が自分を愛してなかったことに気がついてしまったんだなと思う。酒も増えるし、そりゃ倒れる。それでも死ぬ間際には「私は君を創ったが、君が自分を獲得していくのが嬉しい」「親父はクソ野郎だ」と言ってのける、その進歩と向上。最初サイコ野郎だと思ってごめん。

脳を入れ替えたと分かった時、おぞまし!と思った。冒涜的だと思った。「良識的社会」では許されることではないと思った。でもそれが結果論だけどベラを救うことになった。
娼館でベラが働き出した時も、「良識的社会」には認められてないからダンカンはキレてたけど、それって誰にとって都合のいい良識なんだろう、と思った。
ベラの鋭い切り返しや、人を翻弄するような行動を体と脳の不一致だとする人もいたけど、個人的にはキリスト教的価値観(家父長制の価値観)が全くインプットされていないことが大きいんじゃないか。あの家の中がベラにとっては世界だったし、その中で神は1人だけだった。
成長過程は反抗期も、思春期も、それを経て愛について考えるようになることも、自分が暖かい布団で寝ている間に死んでいく命について考えて眠れなくなることも全て、よくみる成長過程だった。

ただそれだけの違いで!同じガワを持ち、同じようなコントロールしたがり男の側で過ごしても、母に起こった悲劇を「別の女の話」にできる。という希望!

まだ無限に語るべきとこあった気がするけどもうめんどくさくなったのでそのまま載せます。
哀れなるものたちは同意なくこの世に産み落とされたすべての私たちで、哀れであろうがよりよくあろうとしていく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?