遺言#5

描いてくれた絵をすぐ現像して写真立てに入れて飾った。値段にして110円。至福の時間を買えた。ありがたい。

母親にはもっと僕を好きだと言って欲しかったし、父親には一緒に遊んで欲しかった。姉には勉強を教えてもらったりしたかった。自分からそうすることは1度もなかった。今更そのような関係に彼らとなりたいとは思わずとも僕には大事な人が出来た。家族であって家族ではないと大人になって思うようになった。子供のころは当たり前がそうではないことを知ったからだ。僕は雰囲気を読むようになった。特に何かをされた訳では無いと思うが、逆らったらご飯も暖かい寝床も無くなるという意識があった。家の中で自由気ままに居られる場所はなかった。小さい頃は泣き虫で少数の割り算が出来ず悔しくて泣いていた。もっと幼い時に泣くなと母親に怒られた気がする。僕は感情を家族に見せられなくなった。泣いたり笑ったりすることが恥ずかしくなった。高校に入ってから家で音楽をずっと聞いていたような気がする。大人になったらようやく家を出られると思って嬉しかった。全てが他者の原因とする訳でも無いし、実際今の僕をつくりあげているものは過去にあった出来事や人間達との会話ややり取りの中で生まれた感情と経験の積み重ねなのだからそれらを全部良い出来事に変えられるくらい今の自分は良い状態である。

サポートしていただいた費用はたばこと生活費になり僕の血と肉と骨になってまた書けます。