『乙女オバさん』南果歩著について

 女優の南果歩さんは、在日韓国人の両親のもと5人姉妹の末っ子として生まれる。小学2年で父の会社が倒産し、13歳で父が亡くなる。17歳で帰化し日本国籍となる。31歳で作家と結婚し出産、36歳で離婚、41歳で国際俳優と再婚、52歳で乳ガン手術、53歳で夫の不倫記事で重度のうつ、54歳で離婚。波乱万丈な人生を明るく前向きに書かれています。

 私の個人的な意見だが、不倫報道時、果歩さんがガンになってるのに、夫不倫に憤慨した。妻が病気で大変な時に、他の女と会ってるなんてひどい。白血病を乗り越えて、病気の苦しさを忘れてしまったのか。妻への思いやりはないのかと怒っていた。怒りの原因は、映画ラストサムライが好きで何度もDVDを見たから。トム・クルーズも真田広之も素晴らしかったが、その俳優が切腹するシーンはとても印象に残った。ハリウッドでの活躍を尊敬していた分、失望は大きかった。

 果歩さんが2番目の夫に出会ったときは離婚裁判中で息子が小1、外で会うことはできず、結婚までの期間は苦しい時間だったと書いている。覚悟を持って再婚し、お互いの仕事のために離れて暮らしても、コミュニケーションがとれていれば大丈夫と思っていたが、夫の不倫記事。「話せない。食べられない。眠れない。涙さえ出ない。」日本にいては、記者に見張られて生活をしなくてはいけないので、アメリカに逃げた。語学学校に通い、規則正しい生活を送り、友人に支えられ、仕事復帰できた。2人の元夫に対する不平不満は書かれていない。離婚時の取り決めで相手の話をしないことになっているのかもしれない。

 不倫は、慰謝料をとることはできても刑法で裁けない。罪にはならないから、悪と断じることもできない。どうして男は、抑制できないのか?きっと口では説明できない衝動にかられて、先のことを考えずに行動するのだろう。男は責められたら逃げるし、悪いと思わないし、バレなければ平気、自分が正しいと思っている(私の個人的経験則)。

 乳ガンのことは、検査から手術、放射線治療、抗がん剤の副作用が詳しく書いてあるので参考になる。しかし、病気の症状や経過は人により大きく異なるので一例にすぎず、自分にあう治療法を模索する必要があると書かれている。麻酔なしで細胞診した痛みは、体がのたうち回るようで、体を押さえてもらい、なんとか動かずに耐えられたそうだ。

 私は本書で初めてキャンサーギフト( ガンになって、新たに気付かされたことを得たり、新たな出会いがあったり、感謝する出来事が起きたりすること)という言葉を知った。「不倫が先でガンが後だったら耐えられなかった。順序が逆だったら、心も体も共倒れになっていた。一生を共にし最後まで共に生きよう、同じお墓に入ろうと約束した人であっても、そこに心がなければ一緒にいる意味などない。二度目の離婚の決心がついたのは、キャンサーギフト」と書いてある。

 果歩さんは、息子の結婚相手を嫁ではなく娘と書いている。息子の腹違いの弟をハーフブラザーと呼んでいる。アメリカに住んだことがあるから、ごく自然な呼び方の選択をしたのかもしれないが、好感が持てた。母と息子の信頼関係が強い。

 女性なら誰でも憧れるような2人の男性と結婚できるほど、魅力的な果歩さんでも結婚に失敗した。でも、結婚は決して悪いものではないと言っている。手術も仕事の空いた時に日程を調整したり、治療方法も体調を考え、自分で調べて医師と相談し合わない方法をやめたり、積極的に何事も取り組む。ガンもうつも、医師の力を借りるが、本人の治す気持ちが何より重要だと教えてもらった。

 「人生百年時代、50歳になって折り返し地点は見当たらなかった。人生は、まっすぐに進むだけ。前進あるのみです。」とあとがきに書いてある。「『乙女オバさん』は、いくつになっても、夢見る頃を過ぎても、明日の自分に出会うために、夢を見続けることができる心を持っている人を指します。」乙女オバさんが流行語になればいいなあ、と私は思った。