R6東大ロー刑事系再現答案(47.5点)

第1、設問1(以下、設問1においては刑法を省略する。)
1、Xが警察官を装ってAに電話をかけてキャッシュカードの用意をさせ、電話後A宅に訪れる金融庁の職員の作業について告げた行為に詐欺未遂罪(246条1項、250条)が成立するか。
2(1)Xは警察官の職務質問により詐欺罪(246条1項)の遂行を妨げられているところ、不能犯が成立しないか。
(2)実行行為は構成要件的結果発生の現実的危険性を有する行為である。そして、実行行為性は社会通念を基礎とした違法有責類型たる構成要件該当性の問題である。そこで、不能犯が成立するかは、行為時に行為者が認識していた事情及び一般人が認識し得た事情を考慮して一般人の観点から構成要件的結果発生の現実的危険性が生じていたといえるかにより判断する。
(3)XがAに電話をかけた時点ではA宅付近で警察官による職務質問が行われていたことは認識していなかったし、一般人からしても認識し得ない。かかる事情を考慮すると、一般人の観点からXが電話した後金融庁の職員としてA宅を訪問しAからキャッシュカードを詐取する現実的危険性が認められる。
(4)したがって、Xに不能犯は成立しない。
3(1)Xは警察官を装ってAに電話をかける行為(以下、「第1行為」とする)の後、A宅を訪れAにキャッシュカードの入った封筒から目を離させた後かかる封筒を偽の封筒と入れ替え騙し取る行為(以下、「第2行為」とする)を行うことを予定していたが、実際は第1行為の実行で終わっている。かかる第1行為をもって「実行に着手」(43条)したといえ、詐欺未遂罪(246条1項、250条)が成立するか。
(2)未遂犯の処罰根拠は既遂結果発生の現実的危険性を生じさせたことにある。そこで、実行行為又は実行行為に密接した行為を行い構成要件的結果発生の現実的危険性を生じさせた場合、「実行」の「着手」(43条)が認められる。そして、かかる密接性、危険性の有無は、犯行計画を踏まえ、第1行為が第2行為を容易かつ確実に行うために必要不可欠であったか、第1行為を実行した後第2行為を行う上で障害となる特段の事情が存在したか、第1行為と第2行為の時間的近接性が認められるかにより判断する。
(3)第1行為において警察官を装いAにこの後の金融庁職員の訪問及び金融庁職員により行われる作業について予め説明することにより、金融庁職員を装ったAにより行われる第2行為が金融庁職員として正当に行われる職務行為であると誤信させることができるため、第1行為は第2行為を容易かつ確実に行うために必要不可欠であるといえる。Xの犯行計画では、第1行為を行った後すぐにA宅を訪れ第2行為に及ぶことを予定しており、第1行為と第2行為に特段障害となるような事情は存在していなかったし、第1行為と第2行為の時間的近接性も認められる。したがって、第1行為は実行行為に密接した行為にあたり、かかる行為によりAのキャッシュカードが詐取されるという構成要件的結果発生の現実的危険性が認められる。
(4)したがって、Xは第1行為により「実行に着手」(43条)し、これを「遂げなかった」(同条)といえるため、Xに詐欺未遂罪(246条1項、250条)が成立。
4(1)Xは警察官の職務質問により詐欺罪(246条1項)の遂行を中止しているところ、中止犯(43条)が成立し、刑の必要的減免を受けるか。
(2)中止犯(43条)の刑の必要的減免の根拠は行為者の中止行為にあらわれる人的態度が責任を減少させることにある。そこで、「自己の意思により」(同条)とは、外部的障害なく行為者の自由な意思決定で犯罪を中止した場合を指す。
(3)Xは警察官の職務質問という外部的障害により、詐欺罪(246条1項)の遂行を中止している。
(4)よって、「自己の意思により」(43条)犯罪を中止したとはいえず、Xに中止犯(43条)が成立しない。
5したがって、Xに詐欺未遂罪(246条1項、250条)が成立する。
第2、設問2(以下、設問2においては刑事訴訟法を省略する。)
1(1)本件の捜索差押許可状(以下、「本件令状」とする。)において、差し押さえるべき物としてその他電磁的記録媒体、名簿、メモ類という概括的記載をすることは219条1項に反しないか。
(2)捜索差押許可状において差し押さえるべき物の明示を要求する(憲法35条、219条1項)趣旨は、捜査機関による捜査権限の濫用を防止し、相手方に財産権の防衛を可能なら占める点にある。よって、差し押さえるべき物は可能な限り具体的に記載されるべきである。もっとも、差し押さえるべき物について厳格に具体的な記載を要求すると捜査の目的を達し得なくなる可能性があるため、概括的記載であっても、例示された物件に付加してなされており、被疑事実と関連性があり、例示された物件に準ずるものを指すことが明らかである場合は219条1項に反さず、許容されると解する。
(3)本件令状において、上記概括的記載は例示された物件に付加してなされている。又、パソコン等例示物件は情報の記録媒体を示しているところ、上記概括的記載も電磁的記録媒体、名簿、メモ類といった情報の記録媒体を同様に示しているため、例示された物件に準ずるものを指すことが明らかである。本件令状にかかる被疑事実はXら犯罪グループによる複数人に対する組織的な詐欺に関する事実であり、かかる詐欺は捜索すべき場所たる乙マンションの居室を拠点として行われたと考えられているため、かかる居室内に所在する情報の記録媒体には犯罪グループに所属する者同士の被疑事実についての連絡等が記録されている蓋然性があり、情報記録媒体についての上記概括的記載には、被疑事実との関連性が認められる。
(4)したがって、本件令状における概括的記載は219条1項に反さず適法である。
2(1)本件令状は差し押さえるべき物として電磁的記録媒体をあげているところ、電磁的記録媒体には被疑事実とは関係のない情報が含まれる可能性があるため、これを差し押さえるべき物とすることは222条1項、99条1項に反し違法でないか。
(2)電磁的記録媒体を差し押さえるべき物とするには、原則として、被疑事実との関連性(憲法35条、刑訴法222条1項、99条1項)を確認することが要求される。もっとも、電磁的記録には大量の情報が含まれている可能性が高く、その場で全ての内容を確認することは困難である一方、電磁的記録は損壊が容易であり、内容を確認している間に罪証隠滅がなされるおそれがある。したがって、①差し押さえる電磁的記録媒体に被疑事実に関する情報が記録されている蓋然性があり、②内容をその場で確認していたのでは、被疑事実に関連する情報を損壊される危険がある場合には、電磁的記録媒体を差し押さえるべき物とすることも例外的に許容される。
(3)本件令状の捜索すべき場所たる乙マンションの一室はXら犯罪グループの拠点として使用されていたと考えられている場であり、かかる場にある電磁的記録媒体にはXらの被疑事実に関連する情報が記録されている蓋然性がある。そして、犯罪グループによる組織的犯罪は悪質性が高く、内容をその場で確認していたのではかかる犯罪グループに属する者により情報が損壊される危険が認められる。


刑事系、個人的にはとても出来が悪いです。
詐欺じゃなくて窃盗だし、電磁的記録媒体は差し押さえの場面での論点だし、当てはめもよくわからんしきつかった!!!!!


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