R6東大ロー民事系再現答案(60点)

第1、設問1(以下、設問1においては民法を省略する。)
1、C社はA社のB社に対する売掛金債権(以下、「本件債権」とする)を譲受(466条1項)し、債権者としての地位を得たとして、B社に対し本件債権の支払い請求を行なっている。
2、(1)A社及びB社の契約では、B社の承諾を得ない限り、契約に基づいて生じる債権を第三者に譲渡することができない旨が定められており、かかる条項は契約当事者が債権の譲渡を禁止する譲渡制限の意思表示にあたるが、466条2項により、譲渡制限の意思表示がなされている債権の譲渡であっても有効となる。よって、本件債権の譲渡は譲渡制限の意思表示がなされているが有効である。又、C社は本件「債権の譲渡」についてB社に「通知」(467条1項)を行なっており、債務者たるB社に対し対抗要件を具備している。
(2)よって、C社の請求は認められるように思われる。
3、(1)B社は、466条3項に基づき、譲渡制限の意思表示の存在についてC社に悪意又は有重過失が存在するために本件債権の支払いを拒むことができるため、C社の請求は認められないと主張することが考えられる。
(2)A社及びB社の業界の契約においては上記のような譲渡制限の意思表示についての条項が定められることはよくあることであり、金融機関たるC社はその職務の性質上融資に精通しており、かかる条項の存否について調査すべきであった。にもかかわらず、C社はかかる調査を懈怠しているため、「譲受人」たるC社は「譲渡制限がされたことを・・・重過失によって知らなかった」と認められる。
(3)よって、B社の上記反論は認められる。
4、したがって、C社がB社に対し相当の期間を定め譲渡人たるA社に対し本件債権の支払いをするよう催告し、その期間内に本件債権が支払われない(466条4項)限り、C社の請求は認められない。
第2、設問2(以下、設問2においては民事訴訟法を省略する。)
1、(1)裁判所は、後訴が前訴の既判力により遮断されるとして、却下すべきか。
(2)ア)実体法上で債権の分割行使が認められていること及び試験訴訟の必要性があることから、前訴のような本件債権1000万円のうちの一部たる200万円を請求する数量的一部請求も許容される。では、前訴の訴訟物は当該数量的一部となり、前訴の既判力が後訴に及ばないのではないか。
イ)相手方への不意打ちを避けるため、一部請求であることが明示された場合に限り、一部請求の訴訟物は当該一部となる。
ウ)本件では、C社は本件債権の総額が1000万円であることを明示してその一部たる200万円を請求しているため、一部請求であることが明示されたといえる。
ウ)そこで、本件請求の訴訟物は前訴で請求された本件債権の数量的一部たる200万円となる。
(3)ア)では、前訴の既判力が後訴に及ばないと認められるか。
イ)既判力とは前訴の後訴に対する通用力をいい、その趣旨は紛争の蒸し返しにあり、正当化根拠は手続保障に基づく自己責任である。そこで、前訴と後訴の訴訟物が同一、矛盾、先決関係のいずれかの関係にあれば前訴の既判力が後訴に作用すると解する。
ウ)前訴の訴訟物は本件債権の数量的一部たる200万円であるが、後訴の訴訟物は本件債権の残部たる800万円であり、同一、矛盾、先決関係のいずれの関係にもない。
ヱ)よって、前訴の既判力は後訴に及ばない。
(4)よって、裁判所は前訴の規範力による遮断効を理由に後訴を却下することはできない。
2、(1)では、裁判所は信義則(2条)に基づき、後訴を却下することができるか。
(2)数量的一部請求は債権を当該一部に限定するものではないため、自ずから債権全体を審理することとなる。よって、数量的一部請求の一部又は全部を棄却する判決は、もはや残部が存在していないという判断に他ならない。数量的一部請求で一部又は全部が棄却されたにもかかわらず、後訴で残部請求を行うことは紛争を蒸し返すことになるし、前訴によって当該債権についての争いが終結したという被告の合理的期待に反することになる。その上、被告に応訴の負担を負わせることとなるため、かかる後訴は信義則(2条)により却下される。
(3)本件債権についての数量的一部請求たる前訴の全部が棄却されているため、残部を請求する後訴は信義則(2条)により却下されることとなる。
(4)よって、裁判所は後訴を却下すべきである。
第3、設問3について(以下、設問3においては会社法を省略する。)
1、(1)Eは本件新株発行の払込金額が「特に有利な金額」(199条3項)にあたり株主総会における説明を要するにもかかわらず、これを欠いていることが199条3項違反という「法令・・・違反」(210条1号)にあたるとして、210条に基づき本件新株発行の差止請求を行う。
(2)「特に有利な金額」(199条3項)とは、公正価額に比べ特に低い金額をいい、公正価額とは資金調達の目的を達しうる限りで発行価格決定直前の株価に近接している価額を指す。
(3)本件新株発行は赤字に転落したA社の財務状況を改善し、倒産を回避する目的でなされているため、本件新株発行にあたり設定された払込金額は資金調達の目的を達成しうる程度の金額であると推認される。A社株式の通常の市場価格は500円であり、又、新株発行を決定した取締役会決議直前の2ヶ月は400円前後で推移しており、かかる金額は払込金額たる250円よりもはるかに高額であるが、D社への払込金額を決定した時点では業績悪化により株式価格200円前後に低迷していたのだから、払込金額たる250円はかかる発行価格決定直前の株価に近接しているといえる。
(4)よって、本件における払込金額は公正価額より特に低い金額とはいえず、「特に有利な金額」(199条3項)とはいえない。
(5)したがって、Eの請求は認められない。
2、(1)Eは本件新株発行が「著しく不公正な方法」(210条2号)によりなされたとして、210条に基づき本件新株発行の差止請求を行う。
(2)「著しく不公正な方法」(210条2号)とは、不当な目的を達する手段として新株発行がなされることをいう。取締役の選解任者たる株主の構成を取締役が自由に変更できるとするのは資本多数決に基づく機関権限分配の原則に反する。そこで、「著しく不公正な方法」とは、会社支配権の維持・強化を主要な目的として新株発行がなされる場合を指す。
(3)本件新株発行はA社の財務状況を建て直すことを主要な目的としているため、「著しく不公正な方法」で新株発行がなされたとはいえない。


途中答案です。
設問3は発行価額決定の時点≠本件新株発行についての取締役会決議の時点と謎な解釈しています、うーん。


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