個性

まだガキの頃、自宅に軟禁されていた時、毎夜のように暗闇の中で自己催眠をしていた。
目を閉じて、頭の中でひたすら階段を下っていく。
何段かすると扉があって、その扉を開けて、また階段を下る。
意識の深くへ、落ちるのではなく自分の足で歩いていく。

右手はだらり、肘から上が意識とは関係なく動く。
くねくねゆらゆらと時折激しく自由に動く。
脳を開け!脳を開け!脳を開け!
覚醒しろ!覚醒しろ!覚醒しろ!

脳はスパコン。俺の脳は俺だけのスパコン。
何かを生み出せ!閃け!天才と育てられてきたのだ。
きっと俺は有象無象より素晴らしい何かがある。
だから!絶対に!素晴らしい才能を開花させることが出来る!
なんて風に。

実際はもちろんだけどそんなものはなかった。
普通の脳だった。
ピカソでもガリレオでもアインシュタインでもなかった。
何も浮かばなかった。

では、自分は有象無象なのか?
でもそうでもなかった。
こんな愚かな事をしてまで、自分を天才だと思い込もうとしている人は…
ジョークですら、そうそういなかった。

それが個性との出会いであり、個性の認知だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?