連作短編小説「次元潜水士」第3話「地図描き師のパラレル」
カーテンを開けたら、庭の素晴らしい眺めで目が覚めた。白猫の短いしっぽのようなネコヤナギの花穂が、いくつも開花していた。
「リン、おはよぉ。わ!ネコヤナギ、咲いたんだ!」
歓喜の声を上げるイアは、違う時間軸を生きる第二の私だ。戸籍上は双子の姉、ということになっている。
「たぶん、一昨日くらいには咲き始めてたんだろうね。私たち最近ずっと仕事浸けだったから気付けなかったんだよ」
「そっか。もう春なんだねぇ」
イアが優しくネコヤナギを撫でた。私たちは複数の時間軸が重なる五次