連作短編小説「次元潜水士」第1話「次元潜水士」
【あらすじ】
あちらこちらの家が放つ夕飯の匂い。冴えた冷たい空気。コンビニバイトからの帰り道はいつも通り。しかし私の心の中はいつもより荒れていた。
今日、同世代の同僚が辞めた。音楽活動に専念するためらしい。プロになるという夢をきっと叶えると宣言して、笑顔で去っていった。私の人生に「夢」は無い。音楽が少し好きなだけ。流行りの曲を聴いて、時々カラオケで歌うくらいだ。
私、このままでいいのだろうか。就職活動に失敗してからずっと、具体的な目標が見つからない。渦巻く不安と焦りで身