「日本アニメは世界の潮流から外れている 片渕須直監督が本気で心配する、その将来」を読んだよ
おもったこと散発メモです。
●日本アニメはジャパニメーションというジャンルのもと画一化されている、その具体的な点が語られないから「ジャンルという言葉を自論の都合のいい形にこねくり回してない?」と疑念を抱き、とはいえ「自分はオタク的視点を持つから細部で区別がついているだけで、ハタから見たら似たり寄ったり(人型ロボ全部ガンダム現象)」になっている可能性も否定はできないためハッキリ反論を持つこともできず、ただただモヤモヤが残る記事だった。
●ただ、上記の"オタク的視点"に僕自身は否定的な感覚を持っておらず、むしろたかだか一般消費者に区別がついてるものを同じと目してしまうの、「国際的な映画祭で審査員務めるほどの専門家様がその程度の受容体しか持ってないの?だっさ〜!」とも感じてしまって、(映画祭に対する)反発心は強まる。
●国際映画祭ってエンタメでなくアートとして作品を捉える場という偏見が強く、そこで得る評価にどういった価値があるのか、とも。
●そもそも海外エンタメの「対象年齢を明確に、隔たりができるほど切り分ける」文化が個人的にかなり気に入っておらず。子供向けは子供向けという時点で大人の視点からは評するに値しない、みたいなレベルの。そんな💩に迎合してほしくないという思いはある。
●そういう💩がゼルダを大人向けハイファンタジーと決めつけチンクルを排斥しようとする。
●これ、日本でもちょっと前までは当たり前にまかり通っていた「年齢を重ねたら元々持っていた趣味は"卒業"して、車とかゴルフとか、年相応の新しい趣味を持て」って考えと同質の臭いを感じてとにかく拒否反応が出るのよな。
●近代史を扱った日本アニメが欲しいなら「コンクリート・レボルティオ」と「閃光のナイトレイド」を見ればいいと思う。
●「ドラえもん」「サザエさん」「ちびまるこちゃん」がもはや子供向けではないという話ならわかる。単純に昭和のライフスタイル見せられても今の子供入りこめねーだろという意味で。
●「テレビの夜7時台から子供向けアニメがなくなったから」はあまりにもおじいちゃん感覚では?
同記事に対する兼光ダニエル真氏の言及についても
片渕監督とのインタビューの記事を読んだのですが、やっぱりというか思った通りというか、聞き手が語り手と語り手の視点を理解できておらず、対話になっていないのが非常に残念。それでも「後期思春期」という面白い概念が出たきたのはとても良いと思いますし、更に日本アニメの決めつけの問題が大事。
— 兼光ダニエル真 (@dankanemitsu) March 6, 2020
片渕監督が「後期思春期向けアニメ」というのは二つの問題を示唆していると思います。一つは日本国内で純粋に子供向けオリジナルアニメを作ることが非常に大変になっていることです。純粋に子供が減ってしまっており、しかも児童向けメディアとしてアニメがゲームや無料ネット映像配信に押されている。
— 兼光ダニエル真 (@dankanemitsu) March 6, 2020
TVが登場したら紙芝居はつまらないと児童が感じるのが増えるのは不思議ないです。でも中には紙芝居の情緒が好きな年長組みがいる。ならば紙芝居が年長組み向けになるのは当たり前。ゲームは過去もありましたが、そのゲームがネット配信で他人と独自なコミュニティを作れる。これは滅茶苦茶強いですね。
— 兼光ダニエル真 (@dankanemitsu) March 6, 2020
と言うわけで単純に日本で児童向けアニメ作りをするのは大変だけど、それだけでは説明できない問題があります。ではなぜ、市場が日本よりも小さい国では児童向けアニメ制作を続けている国があるのか。そこには自国文化と教育を守りたいという決意があり、公的助成金等で支えている側面あります。
— 兼光ダニエル真 (@dankanemitsu) March 6, 2020
競争力の弱い小さい市場で児童向け文化圏を有する国は自らの特化している言語・文化・民族性を意識して非関税貿易障壁(母国語や母国文化を優先させる)や助成金などでさせるのが珍しくありません。しかし日本アニメは全体としては異常に競争力がある。児童向け作品はすっかり左前になっても、です。
— 兼光ダニエル真 (@dankanemitsu) March 6, 2020
要は日本は「後期思春期向けアニメ」に特化し、非常に熱狂的な支持する人を楽しませる方々向けにずば抜けた作品をたくさん生み出してしています。足元では結構ヤバイところがあるのですが、この業界に没頭している限り、新規参入者がなくてもなんとかやっていけるように見える、なんとかやっています。
— 兼光ダニエル真 (@dankanemitsu) March 6, 2020
なぜ日本が「後期思春期向けアニメ」に特化した。理由は色々ですが、一つには海外から「日本のアニメと言ったら外連味のある演出、子供だましではないストーリー、魅力的なキャラクター作りが最高だよね」と決め付けられて、そう言った作品ばかりにお金がどんどん集中していた傾向があると思います。
— 兼光ダニエル真 (@dankanemitsu) March 6, 2020
1990~2002年までアメリカ在住でしたが、この間に日本アニメが爆発的に人気を博したのを私は見守ることができました。この時、興味深いのが「人気作に類似した作品ばかり、アメリカに持ち込まれる」という傾向でした。90年代日本アニメと言えばギャグもスポ根もラブコメで良作が多かったのですね。
— 兼光ダニエル真 (@dankanemitsu) March 6, 2020
しかし北米で人気を博していたのはジブリ作品以外では攻殻機動隊、ガサラキ、アキラ、スレイヤーズ、ヴァンドレッド、ドラゴンボールZなどが圧倒的で、この作品と類似した作品が非常にたくさんライセンスされる一方、それ以外の日本のアニメは苦戦します。もちろん地域によっては傾向が違いますが。
— 兼光ダニエル真 (@dankanemitsu) March 6, 2020
香港映画でもカンフーものばかりが大ヒットし、それ以外の作品がまったく海外ではあまり振興しないという例があります。日本アニメも香港映画も多種多様のジャンル作品を作っていますが、海外で一つのジャンルがヒットするとそれ以外のジャンルについて全く関心が沸きにくいという問題です。
— 兼光ダニエル真 (@dankanemitsu) March 6, 2020
つまり日本でアニメを作る時、「後期思春期アニメ」で作った方が安心できます。日本国内でその作品を支えてくれる人が(今のところ)一定数かならずいるのです。しかも海外でもそのジャンルを喜んで消費してくれる人がたくさんいる。なのでその制作が止まることは当分ないでしょう。止める理由がない。
— 兼光ダニエル真 (@dankanemitsu) March 6, 2020
でも一つのジャンルに固定化することは非常に危険です。ジャンル固定化した理由は別ですが、アメコミもスーパーヒーローものにジャンル固定化されてしまった傾向があります。それでも目覚しいオリジナル作品が出てくることが度々あり、賞をとったり話題になることがあります。
— 兼光ダニエル真 (@dankanemitsu) March 6, 2020
しかし多くの人にとってアメコミ=スーパーヒーローモノという刷り込みがあるのでスーパーヒーローモノ以外を描きたい人はアメコミというメディアを選ぶのを妨げる理由になっています。面白いことに日本マンガがアメコミでも色々なことができるというのを再発見させる役割を果している側面があります。
— 兼光ダニエル真 (@dankanemitsu) March 6, 2020
日本アニメのジャンル固定化が進むと日本アニメ全体を色眼鏡で見られ兼ねない。新規参入者が減る可能性があり、新しい市場の獲得も難しくなり兼ねない。また同じ視聴者を相手にするばかり御約束事が強くなり閉塞感が高まるかもしれないのです。これは受け手側よりも作り手側は強く意識すべき事です。
— 兼光ダニエル真 (@dankanemitsu) March 6, 2020
私は師匠たちから「今いる読者以外の読者の存在をかならず忘れるな」と教えられました。これは初めて自分の作品を見る人でも興味がある人ならばすぐにとっつきやすいように作品の表現を気をつけるべきということです。同じ作品をたくさん見た人と初めて見る人では予備知識量がまったく違います。
— 兼光ダニエル真 (@dankanemitsu) March 6, 2020
予備知識量が異なる人たちをひきつけ、いかに面白く楽しませるかを考える時、同じ傾向の作品ばかりを見ていてはあまりプラスにならないと感じ、作り手のベテランはたくさんの実写・小説など物語としては同じだけど観点と語り口が違うのにたくさん接することを若手作り手側に推奨するのその所為です。
— 兼光ダニエル真 (@dankanemitsu) March 6, 2020
この連投のきっかけとなった記事で、「どの国で誰が母国アニメと日本アニメを見ているのか」「アニメというメディアで何ができるのか」「アニメの制作現場と視聴者の間の乖離があるのか」などについて片渕監督にもっと聞き手が尋ねなかったのがとても残念でした。意識の違いを意識することは大変です。
— 兼光ダニエル真 (@dankanemitsu) March 6, 2020
しかしせっかく海外の映画祭や世界中の観客の声を生で確認した片渕監督にその点について色々尋ねるのはめったとなり機会であり、新聞記者であるならば自分とは違う着眼点からの語り口をもっとうまく読者に共有するように努力して欲しかったと思いました。
— 兼光ダニエル真 (@dankanemitsu) March 6, 2020
●この方を含め、「インタビュアーが未熟故に噛み合った対話ができていない」と指摘する声がTwitter上で散見されたのだけど(果てはご本人まで言及している)、個人的にはむしろ「片渕監督が焦点の合った話し方をできていないから振り回されている」ように見えるんだよな。それを御してこそのインタビュアーってこと?
●まず第一に、個人的に「日本の子供向けアニメが苦境に立たされている(監督に至っては"全滅"という更に強い言葉まで用いている)」実感がまるでないのでその根拠をつまびらかにしてほしいという思いが大きい。
●少子化は事実であり歴然としているので、それに伴う市場縮小は影響としてあるだろうなというのはわかる。他の娯楽と顧客の奪い合いが発生しているのもわかる。でも監督が話してるのそういうとこじゃないっぽいし、そういった要素を込みにしても日本の子供向けアニメってかなり頑張ってない? という感覚。
●プリキュアのシリーズそのものが終わって、後続IPも生まれずニチアサの一枠がまるまる潰れた……となればわかりやすく「やべえ日本の子供向けアニメ死ぬかも」って感じるのだけど。
●2020年3月現在、テレビ東京のアニメ一覧を見ても子供向け作品が少ないという印象は抱かない。てか多くね?(年代別の作品数をグラフ化したりはしていないので断言はできない)
●プリキュア、(アニメではないが)スーパー戦隊、(アニメではないが)仮面ライダー、アイカツ、プリティー、ポケモン、遊戯王etc……長く続いているIPが多くあることはむしろ子供向けアニメが活況な証左では?
●(あ、でもアイカツってもしかしてそろそろ終わりそう?)
●そもそも上述のコンテンツ達は「シリーズを冠して連綿と続いているだけ」で、1年〜数年置きにタイトルを一新して「新作」としてのスタートを切っている。「昔のタイトル」が時代性への適応・価値観のアップデートを行わず、いまだ幅をきかせて冗長に続いている、といった感覚は(個人的にではあるが)ない。
●日本の子供向けIPにおける新規参入の難しさは、玩具・ホビー事業と密接な展開を求められることに影響され、ひとえにアニメを作れるかどうかだけの話では済まなさそうという印象があり(実態は知らない)、その辺を踏まえるとまだ10年足らずのアイカツ、プリティー、妖怪ウォッチ、シンカリオン等は十分に新参者・新規参入者と呼んでいいのでは? とも。
●「後期思春期」ジャンルって具体的に何? アメコミにおけるスーパーヒーローものレベルの共通性を日本のアニメに見出せない。ただ先述の通り受け手である僕の側の視野がおかしい可能性もあるのでとにかく具体的にどこがどう同じなのか教えてほしい。『攻殻機動隊、ガサラキ、アキラ、スレイヤーズ、ヴァンドレッド、ドラゴンボールZ』? ぜんぶ別物では?
Togetterでまとめられた記事についても
「Togetterのまとめ記事とそのコメント欄が織りなす文化圏」に言及するの、正直言って個人的にけっこう怖いんですけど、それでも気になった部分があったので。
●世界名作劇場を、"商業主義に傾倒せず、教育的なので、子供向けアニメの理想的モデルである"としている方がちらほら見受けられるが、「世界名作劇場が商業的な成功を追求していなかったとする根拠」と「商業的な成功を追求したら子供向けアニメとして"格が落ちる"(ざっくり噛み砕くとこう言っているように聞こえる)と見なす根拠」は一体なに?
前述のように作品中には動物が登場することが多いが、原作に存在しなくてもアニメオリジナルで登場させることが多い。これはぬいぐるみなどの商品化が目的の一つである。嚆矢は『母をたずねて三千里』のアメデオである。日本アニメーションの松土隆二は「うちもやっぱりマーチャン必要で、制作費の補填をしたい」と述べている。
●Wikipediaをざっと見ただけでそれ以上深掘っていないので、確固としたソースと明言することは避けたいが、上記のような話がある。ものすごく悪し様に言うと「玩具展開したいから原作改変してオリキャラねじこんでる」。めちゃくちゃ商業主義では?
"答え"をください
読んでいただければわかると思いますが、僕の内にある感覚・肌感との乖離が大きすぎて言われていることの何もかもに納得感がないという状態です。
感覚であるが故に具体性をもった明確な論拠で「違えよ」と言ってもらえれば、自分側をアップデートして対応することができると思うんです。片渕監督も兼光氏も、ただのいちオタクである自分よりはるかにアニメの現場を、裏側を見て知っているプロフェッショナルです。僕の感覚より彼等の言が正しい可能性のほうが当たり前に高い。だれか、たすけて。
「日本アニメは現状でもそれなりの多様性を有している。それでもまだ手の届いてない題材がある。そこにリーチできる土壌を作ることができれば世界に誇れるコンテンツとしてより一層の盤石さを得られる」っていう話ならわかるんだけどなあ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?