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【臨床生理】「血圧測定」が意味するものを理解する②

ねこのてです〜!

 血圧をテーマにした記事の2回目です。
cell functionが低下すると、身体に様々な症状が出てきます。その症状は細胞機能が低下した臓器ごとに特徴的な症状が出ますが、どういった項目で評価されているのかを見ていきます!

 私たちの体はとても優秀で、cell functionに異常が生じた時、すぐ失神したり不整脈が出てくるわけではありません。生命維持に必要な部分の機能を最後まで残そうとしてくれるんです。細胞機能が低下して、生命の危険だ!!っていう状態の時は
「呑気に腕や足に血流を送っている暇はない!大事な臓器や脳の血流を優先しろ〜〜っ!」ていう判断をするんですね。

なので、ここぞという時に「機能」が切り捨てられる順番は大体決まっていて、

①末梢(皮膚、骨格筋)②各種臓器③心臓や脳

の順番に細胞機能が切り捨てられていきます。従って、cell functionの低下に伴う症状もこの順に出てくることが多いのです。

では、この順番に習って見ていきたいと思います。


末梢

 細胞機能の低下時、末梢は体から非重要臓器と見なされ、早期に切り捨てられます。
その時の症状として、

・冷感
・チアノーゼ(血中の酸素が不足して、皮膚の色が青っぽく変色すること)
・CRT延長

などが挙げられます。
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※ 
CRTを急に出してしまってすみません。
「毛細血管再充満時間」のことを英語で「Capillary Refilling Time」と言うので、この頭文字をとってCRTと呼ばれます。みなさん、ご自身の爪をグッと押すとピンク色が白くなりますよね?押すのをやめたらすぐ爪が元のピンク色に戻るはずです。
でも、ピンク色に戻るまでの時間が2秒以上かかったりすると、それは末梢の血流が落ちている所見だって考えることもできるんですね〜
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各種臓器

肝臓、腎臓、消化管、肺について見ていきたいと思います!

【肝臓】

 肝臓はさすがというべきか、血圧が下がっても特異的な症状が出にくいです。低血圧に強いんですね。もともと。
 エコーなどで肝臓の血流等の評価や推定は可能ですが、肝臓に「低血圧による所見」が出るまでには、他臓器にすでに所見が出ていることがほとんどです。
なので、血圧低下時に肝臓にフォーカスを当てた評価をすることの意義が私には分かりませんし、あまり目にしたこともありません。救急時に仲良くしてもらっている医師に聞いても、「肝臓所見は目立たないんじゃないかな〜」との解答ですね。教科書にも載っていないようでした。

【腎臓】

 腎のcell functionの低下時の評価としては、以下が考えられます。

・尿の量
・血中の電解質


尿の生成に関しては機序が複雑なため、尿量だけで腎細胞機能の評価を行うには適してないと思われます。あくまで、参考でしょうか。

次項目の電解質については少しですが補足をします。
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腎臓は皮質髄質という分けられています。
そして、血液から尿を生成するまでに「尿細管」というところで電解質を吸収したり再吸収を行ったりしています(尿細管のどこで、どんな電解質が吸収・再吸収されるかが決まっています)

https://www.qlife.jp/dictionary/anatomy/i_8/より引用

腎臓の中でも、髄質が血流低下に弱いのです。その髄質を通過する尿細管はくるっと折り返しており、「ヘンレループ」と呼ばれています。
ヘンレループ付近では、主にMgという電解質の再吸収が行われるので、髄質の障害では再吸収機能に障害が生じます。従って、血中のMgの濃度が下がったりします。
あくまで、一つの例えですが。こんなイメージです。
腎臓は生理機能がとても重要なので、そのうちまとめます。
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【消化管】

消化管の細胞機能低下時の評価は以下になります。

・嘔吐
・下痢
・腹痛

これらの症状があるから、「細胞機能低下」とはなりません。あくまで、細胞機能が低下すれば、このような症状もあり得るということです。理解の順番が大事です。
消化管症状は放っておくと危険な場合もあるので、詳細に画像検査等の所見を見ることが重要です。

【肺】

 肺の栄養動脈の一つである気管支動脈の血流が下がると、肺胞の上皮細胞の機能が下がります。結果として、サーファクタントの産生が低下して血中の酸素・二酸化炭素濃度の異常につながったり、聴診での異常が見られます。

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サーファクタントとは、肺胞を膨らみやすくさせている物質と考えてください。
この物質が低下すると肺胞がうまく膨らまず、ガス交換に支障が生じます。
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心臓・脳

【心臓】
 細胞機能低下時の評価としてはいくつかありますが、以下が挙げられます。

・心機能低下
・交感神経系の亢進
・徐脈(心拍数が落ちている状態で、一般に60回/分以下と言われています。)

 心機能が低下、つまりポンプ機能が弱くなることで体に水が溜まりやすくなります。その結果、下腿浮腫や、首の静脈がいつもより膨らんだりします(「怒張」と言います)また、ポンプ機能が低下するので、頭に行く血流が弱くなって失神したりもしますね。

二つ目としては前回参照。冷感や発汗心拍数の上昇が見られます。心拍数の上昇は、血圧低下とともに見られることが多いですね。

 徐脈になる原因としては、ペースメーカ細胞の障害が考えられますね。心臓の脈をうつ指令を出す役割を持った細胞が障害されるイメージです。その結果心臓の拍動は低下します。また、体が血流の低下による症状をなんとか抑えようと頑張ったにも関わらず、それが叶わなかった場合にも徐脈になったりします。(代償が効かなかった状態

【脳】

最後は脳です!細胞機能の評価は色々あるんですが、以下のようなものが代表的です。

・見当識障害があるか(when、where、whoがちゃんとわかるか)
・意識障害の有無
・ふらつき
・運動失調

上述したように、脳に由来する所見が出るまではさまざまな症状が出ています。

まとめ

前回、今回を通じて

・血圧測定の意味はcell functionの推定を行うこと
・cell functionの低下時の評価

をまとめました。

他の病態によってこれらの症状が引き起こされることはもちろんあります!
今回は、血圧低下(つまり血流低下、cell function低下)といったときに出てくる症状の一つとして理解していただければと思います。



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