刑法各論まとめ その3 社会、国家に対する罪 

   
現住建造物と非現住建造物が一体であると認められるかは 現住建造物放火の法定刑が重いことから
人の生命身体に危険が生ずる可能性が高いかで判断すべきです。
具体的には
a 構造的一体性を前提とし、延焼可能性を加味して実質的に判断する 物理的一体性
b 機能的一体性 いずれかが認められるかどうかによるのだ。

公共の危険とは
必ずしも108条、109条1項に規定する建造物等に対する延焼の危険のみに限られるものではなく
不特定又は多数人の生命、身体又は、108、109条建造物等以外の財産に対する具体的状況における一般人を基準として判断する危険も含まれるのだ。
110条1項にいう公共の危険の発生は
 よって の文言から結果的加重犯であるため、公共の危険の発生の認識は不要と考えるのだ。
109条2項但し書きについては客観的処罰条件、110条2項については結果的加重犯とはいいがたいが1項との均衡から公共の危険の認識は不要なのだ。

文書偽造罪の保護法益は
文書に対する公共の信頼であるので、
 偽造とは文書に接する者をして 作成者と名義人の
同一性を失わせるごとき人格の同一性を偽ることなのだ。
そうだとすると名義人が誰かという判断は
文書を受け取った一般人において、当該文書の記載内容、形式、性質等から 
誰の意思、観念が記載されている文書であると認識するのかという観点から判断するのだ。
そして作成者とは
実際に文書を作るものと文書の名義人が異なることもしばしばあるため
文書を作成させた意思の主体を作成者と考えるのだ。

代理権がないのにA代理人Bとする文書を作成した場合は
一般人は代理行為の効果が本人Aに帰属すると考えるから、名義人は本人Aと考えるのだ。
そして本人Aは無権代理人Bに文書を作成させていないので、作成者はBとなり、
名義人と、作成者の人格の不一致がみられるため、文書偽造罪となるのだ。
続いて代理人による権限濫用されて文書が作成された行為は
権限が濫用されても本人に効果帰属するため、文書の作成させた意思の主体は本人とするべきなので
文書の名義人と作成者が同一といえ文書偽造罪とならないのだ。

免許証や入試の答案用紙など 文書の性質上その名義人自身による作成だけが予定されている文書については
名義人と作成者の同一性が厳しく要求されるため、本人による許諾は意味をなさず
人格の同一性を偽ったとして偽造となるのだ。

159条1項における 事実証明に関する文書とは
実社会生活に交渉を有する事項を証明するに足りる文書なのだ。

コピーは写しであっても原本と同一の意識内容を保有し、
証明文書として、原本と同様の社会的機能と信用性を有すると認められる限り、159条1項に言う
文書 に含まれるのだ。

写しの文書の名義人は
原本に接した場合と同様の認識をさせるものであるこら、
作成名義人は原本作成名義人であると考えるのだ。
そして原本をコピーすることは新たな証明力を有する別個の文書を作成する行為であり
名義人と作成者の同一性を失わせ、人格の同一性がないため偽造なのだ。
そして他人の印章もしくは署名が複写されていれば、コピーの有する意識内容と別異に考える理由はないので 有印であるといえるのだ。

95条の公務執行妨害罪は書かれざる構成要件要素として公務の適法性が必要となります。
なぜなら同条は、公務の適正な執行を保護することであるからです。
もっとも軽微な違法性を有するに過ぎない公務にも本罪を成立させないとするのは妥当ではないため
a 一般的、抽象的職務権限に属すること b 具体的職務権限に属すること c 法律上の重要な条件方式を履践していることが必要なのだ。
そしてこの要件は規範的構成要件要素であるため、裁判所が法令を解釈して客観的に判断すべきなのだ。
そして適法性は行為時の状況を基礎として判断すべきなのだ。
よって公務の適法性を基礎づける事実を誤信した場合 事実の錯誤として故意が阻却されるも
公務の適法性を基礎づける事実は 認識していた場合は法律の錯誤となり故意は阻却されないのだ。

103条における 罪を犯した者とは
国家の刑事司法作用を保護する観点から、
真犯人に限られず犯罪の嫌疑を受けて捜査又は訴追されている者を指すのだ。
そして犯人として逮捕勾留されているものも含むのだ。

隠避とは
蔵匿以外の方法により官憲による発見逮捕を免れしめるべき一切の行為を言うのだ。

取り調べなどで虚偽の陳述をし供述調書が作成された場合は104条証拠隠滅等罪は成立しません。
なぜなら169条の偽証罪は、処罰対象を虚偽の陳述をしたもののうち宣誓した者に限定する趣旨であるからなのだ。
よって自ら虚偽の陳述書を作成した場合は、104条が成立するのだ。

169条偽証罪の 虚偽の陳述とは
何が真実かを判断するのは裁判所であるから、記憶に反することを陳述されると国家の審判作用が害されるので
虚偽の陳述とは 記憶に反する陳述を指すのだ。

犯人が偽証罪の教唆をおこなえば偽証罪の教唆犯は成立します。
なぜなら犯人が偽証罪の対象とならないのは、単に証人適格がないだけであるし他人に偽証させるほうが、より国家の審判作用を害すからなのだ。

賄賂罪の保護法益は
職務の公正及びそれに対する社会一般の信頼であるのだ。
よって 賄賂とは およそ人の需要または欲望を満たす利益一切を指すのだ。
そして職務 とは職務として行いうる一般的抽象的範囲にあればよく
職務に関しとは 職務に関連してという趣旨に解すべきであるから職務と密接関連する行為も含むのだ。

職務権限が変更された後に以前の職務について賄賂を収受した場合は
公務員の異動は日常茶飯事であり特に直前までおこなっていた職務は
公務に対する社会の信頼を害する危険性が高く、可罰性が高いため
過去の職務に対する信頼が害される以上、公務に対する社会的信頼という保護法益の侵害を認めることができるため
職務に関しとは  
公務員の現在の職務権限に属する必要はなく、過去の職務権限内の行為に関するもので足りるため
通常の収賄罪が成立するのだ。
ちなみに事後収賄罪は あった との文言を充たさないため成立しないのだ。

詐欺ないし恐喝をして賄賂を収受した場合
公務員は両罪が成立し観念的競合となるのだ。
被害者は被害を受けているとはいえ、財物交付の任意性が認められるから贈賄罪が成立するのだ。
ちなみに公務員が職務行為に仮託して詐欺ないし恐喝をして賄賂を収受しても、賄賂の罪は成立しません。

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