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第十五首-形容詞過去教えむとルーシーに「さびしかった」と二度言はせたり

十五首目。ことばには常にそのことば以上の意味がついてきて、意味は意味を切って貼って足して引いて裂いて縫って繋がって、繋がったら最後、なかなか離れなかったりします。

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さびしさは鳴る。
とかつて書いたのは綿矢りさで、わたしはその音をずっと聴きたいと思っていた。

さびしさ。
そう口に出してみてもそれはただの音でしかなくて、そこにあるのは規則正しい音の配列、ドミファミ、みたいな。

ルーシーの小さくそして柔らかそうなくちびるがゆっくりと開いて、さびしい、が放課後の教室に響く。その終わりをそっとなぞるようにしてわたしは現在を過去に繋ぐ。

さびし――かった。かった? うん、さびしかった。さびしかった? そうそう、それが形容詞過去で、つまりさびしい、の過去。ずっとさびしい気持ちを持ってたよ、ってそんなことば――

「さびしかった。わたしはずっとさびしかったです」

顔を上げると深い海の底みたいな碧い瞳と目が合う。そこから涙がこぼれ落ちて、一直線に床へと落ちていった。瞬間、わたしは聴いた。それは確かにドミファミ、なんかじゃなくて、さびしさ、だった。

形容詞過去教えむとルーシーに「さびしかった」と二度言はせたり(大口玲子)

クラムボン「君は僕のもの」

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