球根栽培法(「軍事問題の論文を発表するにあたって」〜「われわれは、武装の準備と行動を開始しなければならない」)

「球根栽培法」という昔の地下文書がある。日本共産党が1950年代に始めた武装闘争の精神を伝える文書である。
この文書は画像データではネット上に落ちているが、テキストデータがなかったため、個人的なメモとして、ここに記載する。

(注意)
・旧字・略字・旧仮名遣い・仮名遣いの間違いについては、現在の字体・仮名遣いにしている。
・不明瞭な部分は「*」で表している。
・元となる画像データは、東京大学社会科学研究所図書室のものを使用した。
 (https://library.iss.u-tokyo.ac.jp/cgi-bin/img/img.cgi?mode=view&rgtn=6507157334&no=001
・このメモを使用して負った損害は補償しない。

球根栽培法 / 家庭園芸研究会編

軍事問題の論文を発表するにあたって

 第五回全国協議会は、満場一致で新しい綱領を採択した。この軍事問題についての論文は、われわれが不十分ながら行ってきたこの問題についての実践の発表であると共に、新しく採択された綱領にもとずく具体的な指針である。新しい綱領は、「民族解放・民主政府が妨害なしに平和的な方法で、自然に生れると考えたり、或いは反動的な吉田政府が、新しい民主政府に、自分の地位をゆずるために、抵抗しないで自ら進んで政権をなげだすと考えるのは、重大な誤りである。」と述べて、国民の革命的闘争を組織するように訴えている。この論文はこの点を明らかにしたものである。
 われわれは軍事問題を真剣に取上げ、それを行動にうつさなければならない。それなしには、新しい綱領をを実現することも、このための闘いに勝利することも出来ないのである。わが党が、社会民主主義者の諸党と根本的に異る点は、この問題をとりあげ、明確な目標のもとにこれを実践する点にある。
 いまや、総ての国民はこの問題を取上げることを求めており、これなしには勝利し得ないことを理解している。従って全党が、この論文を新しい綱領や、第五回全国協議会の一般報告とあわせて討議し、これを単なる論文として終らせることなく、実践のための武器にされんことを希望する。

われわれは、武装の準備と行動を開始しなければならない

問 われわれに、何故軍事組織が必要か。


 武装した権力を相手に闘っているからである。日本の国民の利益を守って、国民を現在の奴隷状態から救い、民族解放、民主革命を闘いとるためには、アメリカ帝国主義者の日本に対する占領制度を除かなければならない。
 ところが、彼等は、日本の国民を支配するばかりでなく、ソヴエト同盟や中華人民共和国をはじめ、アジアの諸民族を侵略し、支配する野望を持っている。この野望を達成するために、近代的な軍事科学によって武装された、軍隊と軍事基地を日毎に強め、新しい戦争計画を押し進めている。また、反動的な吉田政府を助けて、日本の国土と国民を彼等の相棒に仕立てようとしている。
 売国的な吉田政府は、アメリカ帝国主義者のこの野望に同意し、占領制度を延長するための日米安全保障条約を結び、警察や予備隊、海上保安庁等の新しい軍隊を強めている。彼等は、これによって、日本軍国主義を再建すると共に、警察や軍隊の周囲に消防団、鉄道公安官、刑務官等やガード、職制、反動的暴力団等を結集し、国民にファッショ的な体制を押しつけているのである。この侵略的な武装力と、一切の暴力組織が、吉田政府と占領制度に反対する国民を弾圧し、戦争によって利益を得る日本の総ての反動勢力を守っている。
 従って、平和的な方法では、戦争に反対し、国民の平和と自由と生活を守る闘かいを推し進めることはできないし、占領制度を除くために、吉田政府を倒して、新しい国民の政府をつくることもできない。彼等は、武装しており、それによって自分を守っているだけではなく、われわれをほろぼそうとしているのである。これとの闘いには、敵の武装力から味方を守り、敵を倒す手段が必要である。この集団は、われわれが軍事組織をつくり、武装し、行動する以外にない。軍事組織は、この武装行動のための組織である。
 この組織は、日本の国民の他の政治闘争の組織と同じく、敵に対する闘いの組織であり、全体の階級闘争の組織と行動の一部分をなすものである。しかしこれは、階級闘争の最も先進的な、最も重要な部分であり、この組織と行動なしには、われわれは敵に勝つことができず、また勝利を保つことも出来ないのである。
 従ってわれわれは、どうしても軍事組織をつくることが必要であり、これをつくらなければならないのである。このことをわれわれが真剣に考え、準備しない限り、国民の利益を守ることも、国民を奴隷的な状態から救うこともできないのである。

問 敵の武装力と対抗できる軍事組織をつくることができるか


 もちろんできる。しかしそれは非常に困難な仕事である。何故なら、敵はきわめて近代的な軍事科学によって武装している。彼等は優秀な武器をもち、しかもこれに習熟している。そのうえ日本の国土は比較的小さく、交通が発達している。山岳地帯でさえ村落があって、通路が開かれている。このことも、敵の機動力を助け味方の行動範囲をせまくしている。従ってわれわれが、小さな軍事組織をつくって、敵に真正面から対抗しても、敵は直ちに我々を滅すことができる。
 しかし、この敵の有利な条件は、よく検討すると全く外観的なものである。何故なら彼等の武装力は、日本の国民と国土に依存している。彼等の近代的な軍事行動の基礎となる、軍需品の生産と輸送は、労働者階級の手に握られている。ところが、この階級こそ、最も戦闘的なわれわれの味方であり、主力である。
 労働者階級は、敵の軍需品の生産と輸送に反対して、これを破壊し、敵を麻痺させることができるだけでなく、武器をつくって自ら武装したり、これを農民に与えて、農民の武装を援けることさえできる。日本に工業が発達し、たくさんの熟練労働者がいることは、国民の武装を容易にしているのである。
 また、敵の機動力に不可欠な交通路線は、起伏の多い国土を通っており、これは農村の、幾百万の農民の前にさらされている。この農民も、労働者階級と同じく、敵の収奪に苦しみ、これと闘っているわれわれの味方であり、農村の主力である。
 更に、反動的な吉田政府が、彼等を守るために養ない育てている、軍隊の多くの部分も、彼等に搾取され、抑圧され、生活の道を失った労働者と農民の出身であり、常に動揺し、内部で対立している。彼等は吉田政府の政策に反対して、われわれの味方に参加する条件さえ持っている。
 その上、最も重要な問題は、敵と味方の軍事対立はわれわれが必ず勝利するための歴史的な階級闘争の一つであり、その基礎に立っていることである。従って敵が自分の力を強めるために、諸政策を行えば行うほど、それが国民の利益に反し、国民の生活を破壊し、国民のあらゆる形の闘かいを呼び起し、これをはげしくして、国民から孤立するのに反し、味方の行動は国民の利益の上に立っており、活動することによって、一層の支持と援助を受けることができるのである。
 しかもこの闘かいで、われわれは、国際的な強い同盟者を持っている。アメリカ帝国主義者と吉田政府の侵略政策に対して、全世界の平和を愛する人々が、こぞってこれに反対し、日本の国民の闘いに指示と期待をよせている。特にソヴエト同盟や中華人民共和国をはじめ、人民民主主義諸国は、機会あるごとに日本の国民を励ましており、多くのアジア諸民族は、共同の敵、アメリカ帝国主義者に対して、既に武装して闘っている。このように国際的に団結した人民の力は、アメリカ帝国主義者を戦闘とする侵略者の陣営より遥かに強力なものである。
 これらの条件を考えるならば、日本の情勢が敵にとって必ずしも有利でなく、敵がみかけほど強固でないことが理解できる。従って、われわれが問題を正しくとらえ、発展させるならば、敵の武装力に対抗できる軍事組織をつくることができるだけでなく、彼等と闘って必ず勝利することが出来るのである。
 既に、国民の間では、部分的ではあるが、彼等に対する**的な行動が組織されており、武装を求める先進的な闘争も行われている。しかも情勢は、これを全国民的な規模に発展させ得る条件を備えているのである。
 唯、この発展のためには革命の指導者であり、前衛であるわが党が、この問題を真剣に考え、総ての闘争を意識的に、計画的にこの立場から指導すると共に、軍事組織と武装行動のための準備を、具体的にとりあげることが必要である。全党が、この指導を行い、準備しない限り、国民を武装させる条件を発展させ、この条件に応じた武装を達成することはできないのである。

問 労働者や農民の軍事組織をつくるには、どうすればよいか


 武器をとって、国民をこの奴隷的状態から救い、民族解放、民主革命のために献身する意志と決意と能力を持つ人々を決集する以外にない。軍事組織の最も初歩的な、また基本的なものは、現在では中核自衛隊である。従って、われわれは、この人々を中核自衛隊に組織しなければならない。
 中核自衛隊は、工場や農村で、国民が武器をとって自らを守り、敵を攻撃する一切の準備と行動を組織する。戦闘的分子の軍事組織であり、日本に於ける民兵である。従って、中核自衛隊は工場や農村で、武装するための武器の政策や、獲得、或いは保存や分配の責任を負い、また、軍事技術を研究し、これを現在の条件に合せ、闘争の発展のために運用する。更にこの実践を通じて、大衆の間に軍事技術を普及させる活動を行う。
 中核自衛隊は、これらの活動を直ちに具体化して準備しなければならない。このことは、工場や農村の平和闘争や反ファッショ委員会など、あらゆる形の抵抗自衛組織をつくり、これに協力し、これを強める活動を当面の最も重要な仕事とする。
 抵抗自衛組織による、抵抗自衛闘争は、工場や農村における最も先進的な闘いである。これ等の組織は、既に職制や職場内の暴力組織、或いは、警察等の抑圧機関に対して、英雄的な行動を組織している。工場では軍需品の生産や輸送をはばみ、農村では、山林の解放や軍事基地への土地取上げと闘い、漁村では、爆撃演習のための出漁禁止と闘っている。
 軍事組織は、この闘争を更に広く、また深く発展させることによって、国民を武装する条件をつくり出すことができるのであり、自ら武装する準備を具体化し得るのである。また、これに協力し、参加することによって、抵抗自衛闘争の中から、新しい戦闘的な分子を軍事組織の中に吸収し、組織の力を常に拡大させることができるのである。従って、抵抗自衛闘争は、軍事問題を発展させ、軍事組織をつくる現在の環である。
 ところが、この抵抗自衛組織の問題について、党内に誤った考え方があり、それが問題の発展をさまたげている。この考え方は、抵抗自衛組織の指導は、軍事委員会や、軍事組織が行うものであって、細胞や党機関の仕事ではない、という考え方である。これは誤っている。
 既に述べたように、軍事組織は、全党がこれをとりあげ発展のために努力しない限り、組織することはできない。従って軍事問題は、軍事委員会や軍事組織だけの問題でなくして、細胞や党機関全体の問題である。
 特に抵抗自衛組織とその闘争は、軍事問題を発展させる現在の環ではあるが、この闘争自身は、細胞や党機関によって行われるものである。そうしない限り、労働者や農民の政治的、経済的日常要求と結合し、闘争を発展させることはできない。
 軍事委員会の任務は、国民を武装させるための研究と準備を具体的に進め、軍事組織をつくり、これを指導し、発展させていくことと、敵の武装力を内部から弱め、敵の部隊をわれわれの味方に引きいれる工作を組織し、指導することである。
 現在の軍事組織は、工場や農村の戦闘的分子から成る中核自衛隊であるが、軍事委員会は、この基本的な組織を発展させることによって、更に労働者や農民のパルチザンや、人民軍を組織していくことを大きな目的とし、これを政治的に軍事的に指導する責任を負うものである。中核自衛隊も、この軍事委員会の指導と統制のもとに、将来のパルチザンや人民軍の基幹としての研究と準備を行わなければならない。従って、軍事組織は、軍事問題を発展させるために、抵抗自衛組織とその闘争に積極的に協力し、当面の活動では、これに参加して闘うことが必要であるが、この問題だけに自己の任務を解消してはならないのである。
 この両方からの誤りを改めないと、抵抗自衛組織が発展しないだけでなく、軍事委員会が特種の部署としての独自性を失い、組織活動の一つの専門部に過ぎなくなったり、或いは反対に、党機関が軍事活動の総てをうけあう危険性をおかすようになるのである。われわれが、この混乱を除くならば、抵抗自衛闘争は、急速に拡大し、発展し、労働者や農民の軍事組織は、飛躍的に前進するであろう。

問 何故、抵抗自衛闘争は軍事問題を発展させる環なのか


 労働者や農民は、政治的、経済的要求を闘いとる場合に、いろいろな形の闘争を行い、決して一つの固定した形にとらわれない。抵抗自衛闘争も、公然たる敵の暴力支配と、これに対する闘争の発展の中から生れた、一つの新しい政治闘争の形である。
 この闘争の特徴は、ストライキやデモと異って、それが恒常的な政治闘争の本質を持っており、抑圧と搾取のための総ての暴力に対抗して、闘っている点にある。その方法は、敵の監視や力の限度を利用し、その弱点や透間を攻撃して、敵に打撃を与えるのである。これによって、工場では軍需品の生産と輸送を破壊し、農村では軍事基地の建設をはばみ、漁村では爆撃演習を阻止するなどと、直接敵の軍事目的に打撃を与えている。従ってこれは、闘争の方法も、敵に与える被害と打撃も、現在の軍事的、政治的目的と効果に一致した、最も先進的な闘争ということができる。
 もともとわれわれの軍事的な目的は、労働者と農民のパルチザン部隊の総反抗と、これに結合した、労働者階級の武装蜂起によって、敵の権力を打ち倒すことにある。しかしこれは失敗することの出来ない、最后の闘争の形である。この期間までの長い過程は、その準備としての防ぎょ戦の段階である。
 この防ぎょ戦の段階は、非常に長期に亘るものである。この時期に於ける、敵に対する攻撃は、敵の力を弱め、分散し、透間をつくり、透間を攻撃することによって、敵を更に弱める仕事を、くりかえし、くりかえし行い、敵に打撃を与えると共に、味方を訓練して、力を経験を蓄えるようにしなければならない。
 ところが、この抵抗自衛闘争は、防ぎょ戦の段階における攻撃の原則に従って組織されている。この闘争は、敵の軍事目的と国民を弾圧する力を弱め、破壊し、麻痺させることを目指しており、この闘争が発展するならば、敵はこれを監視するために、自分の力を分散しなければならない。しかし、敵の力には限度があるから、総ての地域や経営を監視することは困難であるし、総ての職場を監視することは尚更できない。それ故に敵は透間をつくり、攻撃の機会を与え、打撃を受けるのである。
 この敵の力を、その限度にくぎづけにし、到るところに透間と弱点をつくることは、われわれが大きな勝利を得る道であり、この勝利と結合して、更に高い軍事行動、即ち武器を持った中核自衛隊や、パルチザンや、人民軍の行動を開始することができるのである。
 それ故に、抵抗自衛闘争は、軍事問題を発展させる当面の環である。全党は、あらゆる努力を、この闘争の発展のために集中しなければならない。この闘争の発展と、武装のための具体的な準備が結合しない限り、軍事組織は、小数分子の小規模な仕事から、大きな力あるものに発展することはできないのであり、武装のための一切の準備も、実戦から離れた遊ぎにすぎなくなるのである。

問 日本でパルチザンを組織することができるか


 パルチザンを組織することができるし、また組織しなければならない。これは非常に効果的な闘争の方法であり、敵に決定的な打撃を与えることができる。
 ただ、これを組織する場合には、慎重な準備と計画が必要である。労働者や農民が、武器をもち、パルチザンとして組織的に行動することは、敵に対する打撃を数百倍にすることであるが、危険もまた、数倍かするのである。
 われわれが、パルチザンを組織する場合に、先ず考えなければならないことは、パルチザンは、労働者や農民の抵抗自衛組織の強化、中核自衛隊の組織の発展を通じて、この基礎のうえに組織する、ということである。
 もしも、この基礎なしに、抵抗自衛闘争や、中核自衛隊から離れて、パルチザンを組織するようなことがあれば、それは労働者や農民の闘争から孤立し、根のないものとなって、長続きしないのみか、必ず破滅するのである。
 何故なら、パルチザンの目的は、敵の弱点、透間、過失等を攻撃し、敵の分散した力に対して、味方の集中した力で打撃を与えることにある。従って、攻撃の目的を達成したら、直ちに転廻して、次の機会を持たなければならない。敵から、自らを守る、味方の地域へ引揚げることが必要である。ここで守られながら、敵の新しい弱点、透間、過失等を見つける仕事と、これを攻撃する準備を行わなければならない。
 ところで、パルチザンが、自から守ることのできる、味方の地域とはどこであろうか。中ロのパルチザンには解放区という、大きな根拠地があった。朝鮮でも、人民共和国という国土がある。しかし、現在の日本には、このような地域がない。それのみか、国土がせまく、交通が発達しているために、パルチザンが進路を変えて、移動する広い地域さえない。
 このような条件の中で、パルチザンが自らを守る道は、パルチザンを支持し、これを援助し、守ってくれる最も戦闘的な大衆の中にとけこみ、大衆から守られる以外にない。つまり、攻撃のために結集し、攻撃の后には、大衆の中に散開し、とけこむのである。
 このためには、日本のパルチザンは、なににもまして、人民の信頼を得なければならないし、大衆路線に立たなければならない。パルチザンを、抵抗自衛闘争や、中核隊の発展の中から組織するのは、パルチザンと国民のとの結合を深め、パルチザンにとって、欠くことのできない、自らを守る拠点を、最も戦闘的な人々の間に求めるためである。そうしてのみ、この拠点を基礎に、攻撃のための集中と、退却のための分散が、自由自在に行われ、また、新しい戦闘的な分子を、常にこの闘争の中から引きいれることができるのである。
 このようにして、闘争がくりかえされ、大衆行動と軍事的勝利が蓄積されるならば、われわれは、敵の支配を地域的に麻痺させ、心の根拠地をつくりあげることができる。もし、敵の支配することのできない味方の根拠地をつくるならば、パルチザンの活動は、飛躍的になるであろう。
 また、こうしてわれわれの武装力によって、敵の支配がくつがえされ、軍事組織も参加した、民族解放民主統一戦線が、地域的な支配を確立するならば、これこそ、われわれの権力にほかならない。
 かつで、われわれの一部にあった根拠地主義の誤りは、この大衆との結合を軽視し、敵の監視からのがれて、山岳地帯に根拠地を求め、そこから軍事問題を発展させようとしたことにある。これは明らかに、誤っている。
 しかし、大衆闘争の発展と、軍事的勝利の后には、われわれは、意識的に計画的に、根拠地をつくらなければならない。特に、山岳地帯に根拠地がつくられるならば、それは大きな力になるであろう。ここには日本の最も封建的な搾取と圧迫が支配しており、解放される以外に生きる道を失った、われわれの味方が生活している。
 しかも、山岳地帯は、われわれが味方を守ることに有利で、敵が攻撃するのに困難な自然の要塞となっている。
 われわれは、将来これを根拠地とする時が来るであろう。
 日本でパルチザンを組織することができ、それが発展しうる条件があることは明らかである。従ってわれわれは、抵抗自衛闘争を強めると共に、ちゅうちょすることなく、この準備を直ちに行わなければならない。

問 われわれの軍事組織はどのような活動をするのか


 敵の武装力を破壊し、敵に勝利するために、役立つ軍事行動は全て行わなければならない。既に述べたように、われわれが当面している軍事情勢は、長期に亘る防御戦の段階である。この段階でのわれわれの戦術は、守勢に立つのではなく、敵の分散した小さな勢力を、味方の集中した力で攻撃する軍事行動を積極的に行うことである。
 この戦術の原則は、常に国民の利益を守り、大衆闘争と結合し、その指示の中で、敵の力を分散して弱め、味方を必ず有利な立場において攻撃することである。常に攻撃の主導権は、味方が握らなければならない。有利な人員と有利な地形で、有利な闘いをするのであり、敵の陣地に引きいれられるのではなく、味方の計画に敵を引き入れ、有利な条件で打撃を与えるのである。もしも、味方が不利であれば、闘ってはならないし、敵が結集すれば、味方は散開して逃げなければならない。
 われわれの軍事組織は、この根本原則に従って、敵の部隊や売国奴達を襲撃し、それを打破ったり、軍事基地や軍事工場や軍需品倉庫、武器、施設、車輌などをおそい、破壊したり、爆発させたりするのである。
 占領制度を除くためには、われわれはあらゆる手段をとらなければならないし、また、それは許されるのである。この場合には、通常の支配者の道徳は適用されないのでありそれに影響されてはならないのである。
 従来われわれの一部には、職制や売国奴に対する直接的な行動や、敵の武装力に対する意識的な攻撃を総て一揆主義と考えたり、また大衆の職制や売国奴に対する憎しみからくる直接行動や、自発的な軍事行動をテロリズムと考える傾向があった。そのため、これ等の闘争を階級的組織的行動へ発展させる活動が不充分であった。
 しかし、現在の情勢は、このような考えでは、闘争を発展させることができないほど先鋭化しているのである。従って、われわれは、この直接行動を意識的、計画的に組織すると共に、大衆的自発的な行動に対しても、進んでこれに協力し、指導し、軍事組織の行動と結合させていかなければならない。
 しかし、われわれは、このような襲撃や破壊や爆発を手当り次第にやるのではない。われわれの総ての行動は、国民の支持と信頼を基礎とし、これを高める立場に立たなければならない。帝国主義者の行動は軍事的な成功だけを求めて、それが大衆の間にいかなる影響を与えるかを、全く考慮しない。従って彼等は、軍事的成果のためには、何の関係もない、大衆を殺傷することさえ行うのである。
 われわれは、敵にいかに大きな打撃を与えても、国民に犠牲を強いたり、国民の支持と信頼を失う行動は、軍事的な敗北と考える。それ故に、敵の部隊や売国奴に対する襲撃は、われわれに敵対する明白なものに限られる。また、軍事基地や施設や軍需品の破壊や爆発も、国民に犠牲を与えないように慎重に計画して行わなければならない。
 例えば、敵が悪質な宣伝を行っている発電所や鉄道の破壊は、敵にも打撃を与えるが、国民にも大きな打撃を与える。従ってそれは現在の段階では行ってはならない。行う場合は敵のみ打撃を与えるような、周到な準備と計画が必要であり、これを破壊する必要と意義についての、徹底的な宣伝が必要である。
 更にわれわれは味方の部隊に犠牲がでることが明白な攻撃をしてはならないし、闘いには犠牲は当然であり、敵を倒すためには、味方も何程かの犠牲を覚悟しなければならないのであるが、これは闘いが終っての結果であって、これを当然なものとして行動することは現在の段階では許されない。何故なら、われわれにとって、一番大切なものは、自己を犠牲にして、この闘いに参加している民族の英雄たちである。この英雄達の経験を豊かにし、決定的な闘争に備えて、力を蓄積しない限り、最後の勝利は得られないのである。
 このような原則に立ち、国民の信頼を基礎にして、敵の武装力に対する、直接的な攻撃を加えることが、軍事組織の活動である。

問 われわれの軍事科学とは何か。


 それは民族解放・民主革命を達成するための革命戦争の技術と法則である。われわれは、これを学び、これを運用しない限り、一歩も前進することはできない。
 何故ならば敵は、彼等の近代的な軍事科学によって武装しており、しかも長年に亘る経験にもとづいて行動している。しかるに味方は、いま行動を開始したばかりであり、その武装も比較にならないほど弱勢である。従ってわれわれが、有利な防御戦の条件を充分に活用し、敵を攻撃するためには、革命戦争の軍事科学を学び、運用する以外にない。
 ところで、われわれの軍事科学は、武器をつくることやそれを保存したり、使用したりすること等の技術的な問題から、地形や条件に応じて味方を配置し、力を充分に発揮する作戦や、全革命戦争の見透しと戦術など、日本の革命戦争に必要な一切のものを含んでいるのである。従ってこれはできあいの軍事科学をそのまま採用し、その法則を受入れるだけでは達成されない。もし、その様な方法をとれば、われわれは、それを実践に通用することができずかえって敗北の原因となるであろう。
 われわれの軍事科学の最も基本的な法則は、マルクス・レーニン・スターリン主義である。何故ならば、われわれの軍事行動は、階級闘争の一部であり、その最も戦闘的な闘争手段である。マルクス・レーニン・スターリン主義はこの階級闘争の勝利への道を教える法則である。われわれはこれを基礎にして、日本や中国やソヴエト同盟の軍隊の法令や**令、勝利や敗北の経験、革命戦争の戦略や戦術等を研究し、日本の軍事組織の発展と、革命戦争の実践に適用する新らしい軍事法則を確立しなければならない。
 例えば、日本の旧い軍国主義の軍隊の条令は、日本の国民の身体や、能力や、習慣を基礎にし、それを軍隊組織の目的に合致させている。これ等のことは、われわれが学ぶべきことである。しかし、この軍隊は他国の人民を支配し、これを奴隷化することを目的としている。従って、この軍隊の周囲は総て敵であり、信頼することの出来ない人々である。この結果、彼等は人民を信頼し、その創意性にもとづく作戦を考えることも、組織することも出来なかった。
 彼等が、本土作戦を叫びながら、竹槍で戦車を襲撃する一億玉砕の道しか国民に与えることができず、敗北したのはこのためである。しかし、われわれは、国民の信頼を基礎とし、例え、竹槍を持っても敵より有利な条件をつくりだし、敵に打撃を与える作戦を生み出さなければならない。中国では人民軍がこのことを達成している。中国の人民軍は、国民の支持と信頼を基礎にして、劣悪な武器で優秀な武器と闘って勝利することが出来た。われわれはこの点では日本の軍隊からではなく、中国の人民軍から学ばなければならない。
 従って、われわれが軍事科学を学び、新しい法則をつくるためには、マルクス・レーニン・スターリン主義を基礎にして、内外のあらゆる経験から学ばなければならない。また、これを日本の革命戦争に適用して、実践を発展させると共に、この実践の発展の中から、実践に役立つ生きた法則を確立してゆかねばならない。
 われわれがこの立場を忘れて、軍事科学を内外の資料から引きだし、教条主義的にこれに引きずられるならば、軍事問題を発展させることができないだけでなく、大きな損害を受けるであろう。

問 われわれは、敵の武装力に対して、内部工作をする必要はないか。


 もちろん内部工作をしなければならない。しかし、この内部工作は、われわれの軍事目的の全体からみれば、これは第二義的なものである。われわれは、彼等が敵対している限り、これを攻撃して打破らなければならない。この攻撃と結合して、内部工作を組織するならば、それは大きな意義を持っている。何故ならば、われわれが、民族解放・民主革命を達成するためには、総ての国民が総てこれを求め、武装を含むこの闘いを支持し、これに参加することが必要である。しかし、これだけでは勝利は困難である。更に、敵の陣営を内部から麻痺し、混乱し、反乱を行って敵の支配力や抵抗力が維持できなくなることが必要である。このための工作の一つが敵の武装力に対する内部工作である。
 敵の武装の中で最も重要なものは、アメリカ占領軍と日本の軍隊、及び警察である。この三つはわれわれと対峙している敵の武装力の基幹である。敵は、この武装力を基礎にして、この周囲に消防団、鉄道公安官、刑務官やガード・職制・反動的暴力団等の、国民を抑圧する一切の暴力組織を結集しているのである。われわれの内部工作は、この総てに行われるものであるが、その中で、三つの基幹に対する工作が特に重要である。この基幹を弱めるならば、一切の暴力組織は、その支柱を失い、更に弱まるのである。
 この三つの武装力は、日本の反動勢力をるために、同じ役割を果しているが、それぞれ異った性格を持っている。例えば、アメリカ占領軍は、侵略者であり、多民族であるが、軍隊や警察はわれわれと同じ日本人である。アメリカ占領軍が、極めて惨虐な侵略的性質を持っているのに対して、警察は弾圧機関として、むしろファッショ的な性格の方が露骨である。われわれはこのような彼等のもつ、いろいろな性格や特徴を理解し、それに応じた内部工作をしなければならない。
 内部工作の基本的方針は、総ての工作と同じように、彼等の正しい政治的、経済的要求をとりあげて、売国的な幹部に対する闘争を組織すると共に、階級的、政治的自覚を高めて、国民の側に立ち、アメリカ帝国主義者と吉田政府に対する闘いに参加させることにある。
 特に軍隊と警察に対しては、彼等の民族的自覚を高め、一切の国運動への弾圧を拒否し、進んでこの運動に参加させるようにすることが必要である。アメリカ占領軍に対しては、ウォール街の侵略政策をバクロし、戦争に反対し、平和を守るために日本国民と結んで一切の外国領土からの引揚げを要求させることが必要である。
 これ等の工作で、最も重要な事は、わが党が民主的な諸団体と協同して、彼等に対する特別の行動隊を組織し、あらゆる問題を彼等に訴え、われわれの味方に引きいれるための公然たる活動を行うことである。このことと結合して、内部にいろいろなサークルや細胞を組織する活動を行わなければならない。
 彼等は、抑圧者の手先となっている*果、彼等自身も基本的な人権を全く無視されている。従って、内部に於ける闘争は、大胆に行うべきあるが、その組織は、極めて慎重に取扱わねばならない。特に軍隊では、日常的な反抗を組織すると共に、敵と味方が武装して闘っている重要な時期に少数の売国的幹部を除いて、全体をわれわれの側に参加させるための投降、反乱等を組織する必要がある。このためには、組織の温存とそれに対する系統的な指導を行わなければなわない。
 われわれは既に、これ等の工作を行っている。しかし、これは部分的であり、きわめて小規模である。特に、党機関が、他の民主的諸団体と協同して、公然と工作することに欠けており、また、軍事委員会が内部の組織を系統的に指導することが不充分である。これ等の点を改めるならばこの工作も軍事的な大きな力に成長することが出来るであろう。

問 民族解放・民主統一戦線と軍事組織はどんな関係をもつか


 軍事組織の目的は、日本の国民を現在の奴隷的状態から救い、人間らしい自由と生活を闘いとることにある。このために、国民の武装した力によって、現在の反動制度を撤廃し、民族解放・民主制度を確立するのである。従って軍事組織は、民族解放・民主統一戦線の最も先進的な最も戦闘的な行動の部隊である。
 軍事組織は、この統一戦線の綱領に忠実であり、これを実現するために、献身的でなければならない。また、自からの力を強めるためにも、同盟者と協同して、新しい国民の政権をつくるためにも、進んで統一戦線の結成に努力し、地方や全国の統一戦線に積極的に参加しなければならない。そうしてのみ、国民の利益のための、国民の武装組織となることができるのである。これは、形式的な外観的な問題ではなく、軍事組織が、その目的を達成するための一つの原則である。
 従って、われわれは、軍事的な力を過信して、それが政治的な任務を達成する手段の一つであることを忘れてはならない。軍事組織の闘争は、極めて熾烈なものであるが、その目的は結局、民族解放・民主革命を目指すものであり、国民の共通の目的のために、闘っているものです。
 それ故にこそ、軍事組織が、大衆闘争と結合して、敵の武装力を地域的にくつがえすならば、それが直ちに、国民の権力を地域的に打ち立てる力となるのである。
 軍事組織が、統一戦線に参加して、広汎な人々と組織的に結合することは、軍事組織が欠しやすい、いろいろな誤り、特に一揆主義やセクト的傾向を防ぎ、これを克服するうえにも役立つであろう。何故ならば、軍事行動は、敵の弱点や、透間や、過失等を時を移さず攻撃して、直ちに引揚げる速さと鋭さを必要とする。このことから、広範な国民と結合する、幅の広さを忘れがちであるが、統一戦線のための行動という明白な目標は、軍事組織の幅を広げ国民と統合することを性格づけるであろう。
 また今後うまれると思われる、民族主義者や冒険主義者などの軍事行動に対しても、彼等の誤った行動に引きいれられるのではなく、統一戦線の全体の**の立場からこれを正し、手を結ぶことを可能にするであろう。
 これ等のことは、軍事組織の指導と行動が統一戦線にまかされたり、或いは解消したりすることを意味しない。国民の武装力は、指導階級としての、労働者階級の前衛であるわが党の指導のもとになければならない。わが党の指導なしには、国民の武装力は勝利の道を正しく前進することができないし、その任務を果し得ないのみか、かえって破れ去るであろう。
 中核自衛隊や、パルチザン、或いは人民軍は、我が党の軍事委員会の一貫した指導によってのみ、その力を民族解放・民主革命のために捧げることができるのである。

問 結論として、われわれは直ちに軍事組織をつくって、行動を開始すべきか


 慎重に準備し、行動を開始しなければならない。
 既に述べたように、われわれは武装した権力を敵とし、これと闘っている。この敵は、日本国民を奴隷化し、戦争に引きいれるために、国民の生活を破壊し、自由を奪い、弾圧を続けている。わが党が、事実上、非合法化されているのも、この国民に対する弾圧の一部に過ぎない。
 しかも敵は、明らかに武装した行動を全面的に開始している。彼等は、いままでも、国民のあらゆる要求と、そのための闘争をピストルと棍棒によって弾圧していた。しかし、今日ほど露骨に武装し、行動したことはない。ピストルやガス弾や、機関銃や戦車が、臆面もなく国民にむけられているのである。
 従って闘争に参加している広汎な人々が敵との闘いには、それがデモやストライキであっても、すべて軍事的な立場からの指導と計画が必要であることを理解するに至った。すでに一部では、武装して行動することが求められており、また木更津や大三沢等では、敵の武装力に対する国民の自発的な組織が生まれ、攻撃を開始している。われわれは、これを特殊なる例とみなし、力させ破れさせてはならない。この闘争は、国民的規模に発展する条件を充分に備えているのである。
 われわれは、四全協以来その決定にもとずいて、国民のこの要求に応え、武装のための準備を進めて来た。この結果、到る処で抵抗自衛闘争が組織され、或る処では直接的な行動にまで発展している。われわれは、何よりもこの闘争を広げ、発展させなければならない。また、すべての闘争をこの軍事的立場から指導しなければならない。これなしには、軍事問題を大衆路線のうえにのせることができないのである。しかし、このことは大衆闘争を軍事的立場から指導することや、抵抗自衛闘争の発展だけを心掛けるならば、軍事問題が自然に解決されるというのではない。むしろ反対である。軍事問題の発展は、われわれがこれを意識的、計画的にとりあげ、国民を指導してのみ成し遂げられるのである。
 現在、われわれにとって、一番重要なことは、武装し行動する条件が備わっており、国民もそれを求めており、それなしには闘争を発展させることができないということである。従ってわれわれは、直ちに軍事組織をつくり、武器の製作や、敵を攻撃する技術や作戦などを一般化する初歩的な軍事行動から着手し、更に軍事行動に必要な無数の仕事を解決しなければならない。
 アメリカ帝国主義者と吉田政府は、サンフランシスコで偽りにみちた講和条約を結び、日本の国土と国民を奴隷化し、戦争に引きいれる足場を固めた。彼等はこの悪だくみをごまかすために、一切の宣伝機関を利用している。しかし、真実をおおいかくすことはできない。数か月をたたないうちに、国民の最もおくれたまで、彼等の詐欺行為に気づき、憤激するであろう。それ故に、情勢は日毎にわれわれの断乎たる行動を求めるのである。この情勢の中で前衛としての歴史的任務を果すために、われわれは武装の準備を行い、行動を開始しなければならないのである。

――一九五一年十月三日――

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