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遅刻をくり返したあとの世界 another side

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『遅刻をくり返した後の世界』は1990年代から2000年代にかけて 「猫キャット」が撮りだめたすでに無くなってしまった場所のガイドブック。 世界一身近なゴミの中で宝探しを続けてき…
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#60年代

肥大化した古着アーマーがアニエスベーという毒針で粉々に砕け散った日

 2000年11月。21世紀を迎えたその年、29歳になったばかりの私とK子は、当時私が住んでいた三軒茶屋のひび割れた暗いマンションの一室で、自分たちにしかわからない試行錯誤をしていました。100円ショップで見つけたいびつなパーティグッズ、用途のわからない雑貨、渋谷地下街の婦人服屋の店頭ワゴンでK子が掘り当てたくちびる模様のラメシャツなどを持ち寄って、試し撮りしながらゴソゴソと話し合っていたのです。  この頃の私は、これからどうしたらいいのかわからないけれど、死ぬよりはマシ、

ゴミを部屋に置いたまま忘れてしまうと土に還ってしまい、何を拾ったのかわからなくなってしまいます⑧

 1991年。UちゃんとK子と私は、拾った大量のビールコンテナと、木材、フェンスの網などで組んだ巨大やぐらの上で、真っ暗な11月の夜空を見あげていました。壁面は合板で塞ぎ、高い天井は、牛の皮膚ほど分厚い、透明なビニールで覆ってありましたが、吐く息は白く冷え込んでいます。けれどそのほったて小屋を埋め尽くすほどの衣類に一緒に埋もれた私たち3人は、強烈な幸福感に包まれて最後の一夜を過ごしていました。  長い夏休みを目前に控えたこの年の6月。Uちゃんと私は教室の頑丈な机に腰掛けて話