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遅刻をくり返したあとの世界 another side

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『遅刻をくり返した後の世界』は1990年代から2000年代にかけて 「猫キャット」が撮りだめたすでに無くなってしまった場所のガイドブック。 世界一身近なゴミの中で宝探しを続けてき…
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#レトロ

赤白の鉄塔の中で受肉を願う人型たち

東京タワー東京都港区芝公園4丁目二番地八号 2000.7    東京タワーは赤と白の鉄骨で組まれた、日本一有名な電波塔でした。1959年から、その役目を東京スカイツリーに移行するまでの約60年間、情報をのせた電磁波がこの333メートルのアンテナから発信され続け、関東平野ほぼ全域のテレビがそれを受像していたのです。そういえば、ここのてっぺんから飛び降りたふたりの子供がおこす奇跡を描いたマンガ「わたしは真吾」のことを、私たちは大好きでした。 わたしは真吾  1999年の

宮城県、気仙沼沖のデイヴィッド・ハミルトン

昭和記念公園2007.5  貸し自転車で一周できてしまう島を、Uちゃん、K子、私の三人は、全身を蚊に刺されながら走り抜けていました。1991年の夏休み、Uちゃんの祖父母の住む宮城県気仙沼沖の大島へ遊びにきているのです。無人島へ行ったり密漁のウニをご馳走になった素晴らしい旅行。けれど私は翌日、ボーイフレンドとの約束で二人より一日早く東京へ帰らなくてはならず、一人でフェリーに乗るのをつまらなく感じていました。  今でも腹立たしく後悔するのは、約束の相手のことを、もうたいして好

横浜ドリームランド①

神奈川県横浜市戸塚区俣野町字沖原700番地 2002.2.17  薄っぺらい板に描かれた、Uちゃんが好きだと言っていた70年代ロックスターのような人物たちが、風雨にさらされ残骸になりかけています。その看板は、簡易的なビニールテントの屋根を目隠しするように、鉄骨のこちら側にだけ貼り付けてありました。テント内の壁面にもペラペラの板に描かれた、ギターを抱えた数名のミュージシャンと踊り子。真っ赤にペイントされたテント内の鉄骨に、磯場のフジツボのごとく密集した電球たちが、乗り物が動