マガジンのカバー画像

遅刻をくり返したあとの世界 another side

17
『遅刻をくり返した後の世界』は1990年代から2000年代にかけて 「猫キャット」が撮りだめたすでに無くなってしまった場所のガイドブック。 世界一身近なゴミの中で宝探しを続けてき…
運営しているクリエイター

#2000年代

心のもやに建てられる、特殊建造物群

江ノ島 神奈川県藤沢市江ノ島 2000.9.20-21  心象風景とは、経験や感情、感覚によって作られた想像上の風景のこと。  英語に直訳すると、サイコロジカル・ランドスケープ(Psychological landscape)ですが、実際には「mental image」などと言われているそう。  よく夢に、建物と乗り物が出てきます。  子供の頃には、「いつもの電車に乗ったのに、見知らぬ駅に着いてしまう」という夢をよく見ました。原因はたぶん電車通学で、小学一年の時か

夕凪の甲板を疾走する影は、軍手で作った海賊の指人形を握りしめる

氷川丸神奈川県横浜市中区山下町山下公園地先 2004年〜2006年  1970年代の終わる、小学校低学年の夏休み。昨年101歳で亡くなった祖母が私と3歳下の妹を、横浜の山下公園に停泊する氷川丸に連れて行ってくれました。でも、ほとんど記憶がありません。妹と祖母と3人で、広い甲板のベンチに座ってクレヨンでスケッチした、向かいに停泊する大きなフェリー「さんふらわあ号」の方が印象にあります。祖母が真剣に絵を描くのを初めて見た私は、思いがけずうまいことに驚くのですが、すると薬剤師だ

存在しない貝柱と70年代のドッペルゲンガー

貝ベッドのラブホテル東京都墨田区錦糸町 2000.4.8  学生時代からよく行っていた町田駅前の高原書店という古本屋で、ある本のカバーの袖に掲載されていた古い映画のスチール写真が気になり、そのためだけに買ってしまったことがあります。ようやくその映画を見たけれど、退屈で居眠りしてしまった。目が覚めてから、自分はあのスチール写真が好きだったのだと気がつくのです。  そんな、やけに惹かれる存在しない映画のスチール写真を、自分たちで撮れたらいいのに。例えば架空のサスペンス映画の

横浜ドリームランド②

神奈川県横浜市戸塚区俣野町字沖原700番地 2002.2.17  私たち猫キャットは、どこか無自覚に狂気のようなものを漂わせている夢の国に到着し、長蛇の列にうんざりしながら小雨の降りしきる園内を徘徊していました。横浜ドリームランド最終日。パレードの音や子供たちの叫び声が絶え間なしに聞こえてきます。  ひと気のない場所を二人で渡り歩くようにして、その最期の姿をカメラに収めていったのでした。 トップスピン 巨大なうす紫いろの重機のような乗物に ラズベリー色のライトが幻想