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成人式にでなかった話

2019/01/14(月)成人の日

私は病院にいた。

入院したのは1/10。

それから毎日、回診に来る先生に

「成人式に出たい」と泣きついた。

それでも退院も外出も許されなかった。



振袖

高校を卒業した時、振袖を買ってもらった。

高校卒業と同時に自立する私へ親からのプレゼントだった。


高卒・短大卒の親に、中卒の兄、私が言い続けた"お医者さんになる"って夢を「おう!がんばれ!」と軽く応援してくれてはいたものの、家系の人たちからは遥か遠い異世界の話で理解を得難かった。理解しようにも勉強することにそんなにお金がかかるとは、親も思っていなかったのかもしれない。

義務教育のはずの中学校でお金がかかること、中高一貫という制度、「センターって何?お金かかんの?!」から始まる会話、

だんだん金食い虫のような扱いになっていった。


中学生の頃、私がリビングで宿題をしている時、顔を上げると向いの席で悪酔いしている父と目が合った。父は唐突に

「なんなその目は。俺の金で生活してるんやろ、ちゃうか、俺の金で勉強してるんやろが、ちょっと勉強できるからって偉そうにするな」

と怒鳴った。


機嫌がいい時は

「うげ、勉強してんの?!
ななはすごいな、さっぱり分からんけど
ほらスルメあげら」

とおつまみをくれることもあった。


テスト前、夜遅くまで勉強していると
「電気代がもったいない」と電気を消された。


親としてどうかと思うことが多々あるが
こういう人も世の中にはいるんだなと受け流していた。気にしても、メリットは私が親になる際のいい反面教師くらいだろう。

ただ、父の気分(お金)に自分の将来を左右されるのだけはごめんだった。

だから補助金のもらえる地域枠を第1志望にしていたといっても過言ではない。


無事合格し補助金をもらえることになった。
そして晴れて"経済的自立"を手に入れた。
自分の人生が親のお金に左右されない安心感に浸り、自分の夢を自分で叶える覚悟を改めて握りしめた。


母はレンタルの振袖を見に行こうと私を誘った。

そこで私も母もある振袖に一目惚れした。
レンタル費用も格別高かった。

母は「買っちゃお。」と言った。

「そんなウン十万もするのにレンタルでいいよ。」

「ななは、全然違う世界に行くんやから、1つくらい良いもの持っとき。パパに頼んどくから。」

そんなお金あるはずもないのに、

母は嬉しそうにその振袖に合う帯を探しだした。

「そんないい振袖にちゃっちい帯やったらあかんやろ」って、これまた良い帯をお店中から見つけ出してきた。

そして本当にその振袖の購入を決めてしまった。

なぜ父が許したのか不思議だった。
私は母が怒られないかの方が心配だった。



一年後の成人式

今日は成人の日。
駅には振袖姿の新成人たちが沢山いた。

羨ましかった。

結局、私は振袖を前撮りでしか着ていないし
父にも見せていない。

あんなに良いものを買ってもらったのに
成人式に行けなかった苦い思い出が蘇った。

それでも父が生きてる間に一度は振袖姿を見せたいと思う。

家庭環境に恵まれなかったとしても
地獄のような入院生活で成人式に行けなくても

私は私の人生を自分で歩いているよって

あんたなんかに夢を壊されていないよって

こんなに素敵な振袖を、ありがとうって

伝えたい。


成人式に行った人も行かなかった人も
自分の人生を自分らしく歩めますように

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