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【本】『ふしぎの国のアリス』(ルイス・キャロル、北村太郎/王国社)

こんにちは、『猫の泉 読書会』主宰の「みわみわ」です。

今日は、詩人・北村太郎訳『ふしぎの国のアリス』について。
先日読んだ、『空とぶ猫』(北村太郎)の関連で読んでみたら、テンポよくて面白かったのでご紹介します。

〇これまでのアリスとの違い

・アリスの語り口が自然

「絵ぬき、会話ぬきの本なんてさ、どこがおもしろいんだよ」とアリスは、声に出さずにつぶやいた。

まぁ、アリスをお嬢様と思って期待する人にはとても残念な語り口かもしれませんね。
現代風というのではなくて、もともとアリスはストレートな話し方をする女の子ではなかったか?と訳者北村太郎は考えたようです。

わたしにとっても、これまで読んだアリスでの違和感が拭われて、こっちの会話の方がごくごく自然に感じます。

もともと、アリスって好奇心があって、どんどん冒険する女の子でしょ? ハートのクイーンに反抗するくらい、実は気骨のある女の子でしょ? そう思うと、お行儀よりも、思ったことをポンポンと口に出す天然な方が、らしいと思います。

・スピード感があって読みやすい。

じつは、アリス以外の登場人物の語り口も結構くだけています。
例えば、パイプをぷかぷか吸っている青虫の言葉は、「あーた、だーれ?」。

さらに「語り手」は体言止めを沢山使って、日本語独特の長い述語部分がカットしています。その結果。情報密度が上がって、話がサクサク進んでゆきます。
そういった様々な工夫で、スピード感が出てきて、面白く読めました。

・ルイス・キャロルが書いた挿絵
この本の挿絵はルイス・キャロル本人によるものでした。もちろん、「アリス」の挿絵というと、ジョン・テニエルのものが有名だと思います。

もともと「アリス」の本は、ルイス・キャロル(1832-1898)が1862年に学寮長の三人姉妹と舟遊びをしたときに聞かせた話をもとにして作った私家版です。そのときは、ルイス・キャロル本人が挿絵を描いていましたが、1865年に出版されるときにジョン・テニエルの挿絵になりました。

ナンセンスな物語の挿絵だと思えば、ちょっとぎこちない感じのルイス・キャロルの絵も味があります。

〇気になった駄洒落

・いなか?
「だって、姉妹は井戸のなかにいるのよ」
「もちろん、そうだよ」とヤマネは答えた。「つまり、いなかさ」

・首切り執行人のぼやき
執行人の意見はこうだ。切り離すべき胴体がないのに、首をはねるなんて、できっこありませんや。そんな仕事、いやいやながらでもやったことありやせんし、この年齢になって、新境地を開くっていうのもねぇ。

・英語ならではの同音異義?
porpoise(イルカ)とpurpose(目的)

〇「アリス」再読して気が付いたこと

再読して、最初の詩と最後のエピソード(眠っているアリスを起こしたお姉さんが、アリスの将来についてかんがえる場面)が実は重要だったのではないかと気が付きました。

もともと「アリス」はルイス・キャロルからアリスへの個人的プレゼントでした。きっとルイス・キャロルは、「あの日のことを忘れないで」「ずっと素敵なアリスでいてほしい」と言うメッセージを最初の詩と最後のエピソードに託したのだろうと思います。でも、アリスの両親は、娘たちをルイス・キャロルから遠ざけたようですよね。

もう一つ。
「カミツレ草」って、翻訳のにときどき出てきますが、調べたらカモミールのことですってよ! いろんな呼び名があるのもややこしいですね。

この次は鏡の国を読んでみたいと思います。

■本日の一冊:『ふしぎの国のアリス』(ルイス・キャロル、北村太郎/王国社)



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