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【報告】映画の感想おしゃべり会『ダ・ヴィンチは誰に微笑む』

こんにちは、『猫の泉 読書会』主宰の「みわみわ」です。
今日は映画の感想おしゃべり会のご報告です。

映画『ダ・ヴィンチは誰に微笑む』の試写会に行ったお友達・総勢6名で、11月6日にオンラインにて、感想おしゃべり会をいたしました。

とても楽しくて、非常に活発な意見交換ができましたので、その一部をご紹介します。

ご参考ウェブサイト:映画『ダ・ヴィンチは誰に微笑む』(11月26日より公開予定)


●映画『ダ・ヴィンチは誰に微笑む』のご紹介

ダ・ヴィンチの作品とされる絵画「世界の救世主(サルバトール・ムンディ)」が、2017年に510億円で落札された出来事をめぐり、信憑性を問われつつ絵画の価格が上昇してゆく経緯を関係者へのインタビューやオークション当時の映像とで、ドキュメンタリー風にまとめている映画です。

一般人にとって美術品=鑑賞対象にすぎない絵画が、名声や商売のタネになったり、国家プロジェクトの象徴になったり、プロの矜持の争点になったりと、意味合いが変化する様子に圧倒されました。

大富豪や画商たちの生活ぶりや、絵の保管場所である自由港のことなど初めて知ることばかりでとても面白かったです。
さすが絵画に関する映画だけあって、美術に関わる人々の登場人物の身だしなみの素敵な色使いや、絵画を連想させる美しい風景にも心が躍り、また観に行きたくなる映画でした。


●原作本と映画:読んでから観る? 観てから読む?


ご参考:原作本『最後のダ・ヴィンチの真実』(ベン・ルイス・著/上杉隼人・訳/集英社インターナショナル)

はじめに、参加者6名の原作読書状況を確認しました。
・原作本を読んだ:4名
・原作本を未読 :2名

原作本を読んだ方のコメント:

・あの複雑な内容をうまくまとめている!
・登場人物のイメージが鮮明になって良かった。
・原作本が文体であらわした「疑惑」を、映画では効果音や映し方で表現しており、そんな違いが面白かった。
・原作本で共感した人物(3人目の画商)が映画には出てこなくて心残り…。

未読の方のコメント:

・映画でわかったことをもっと詳しく知るために、これから原作を読んでみたい。
・原作読了後、再び映画を観て、比べてみたい。

●映画で知った「美術品取引」のあれこれ

・自由港の倉庫の存在にびっくり!
・古典美術品の価値は学者が、現代アートの価値は人気が決めるという棲み分けにびっくり!
・芸術を商売にするのって、とても大変だとわかった。
・絵画はクローズドな社会における人間関係を作る役割を持っていると思った。

●映画を観ての疑問1:美術品の価値ってどこからくるのだろう?

・買う人の価値観、美しいと思う気持ち。
 →その根拠は? 世間体? ダ・ヴィンチが直筆したという事実?
 →世間と好みが異なっていても、自分自身が納得して美しい! と思う軸がないと、騙されてしまうのではないか。

・絵画「世界の救世主」を大衆が良い作品と言い続けてあと300年も経てば、本物の美術品になるのでは?

●映画を観ての疑問2:ロンドン・ナショナル・ギャラリーが「世界の救世主」の真贋の判断を観客に委ねたのは適切だっただろうか?

・動員数が記録的に伸びた原因は、ダ・ヴィンチ作として掲げた「世界の救世主」だ。
 信憑性を確認しないまま、ダ・ヴィンチ作と決めつけて展示したのは、入場者を騙していることになるのでは?

・ロンドン・ナショナル・ギャラリーは、国営なので動員数を伸ばして入場料収入を増やす必要はない。
 ならば、学芸員の目的は何だったろう? 話題性?

・真贋にたいする追及姿勢について。
 ロンドン・ナショナル・ギャラリーはルーブル美術館と比べて軽率だった。
 結果的に、ルーブルの格が上がった! 
 もしかすると、フランス人はイギリス人に対して対抗意識があるのかも?

・ロンドン・ナショナル・ギャラリーは、どこまで判明しているのかを正直に発表すればよかったのに…。
 まだ謎のある作品として公開したとしても、観客は歓迎したはず。
 

●映画を観ての疑問3:絵画を「修復」するということは

・修復によって違う絵画になってしまう可能性があるのでは?

・修復は功罪相なかばする。修復しなければ、作品はもっと劣化するだろうし、かといって修復しても(後世の技術から照らして見れば)延命にならない可能性もあって、難しい。

・忠実な再現をするのではなく、現代人受けするような修復になっていた可能性は?

・現代人受けするような修復…という話から、翻訳家でエッセイストの鴻巣友季子氏の「原文で言語化されていないことを訳文に盛り込むのは、翻訳倫理に反する」という意見を連想した。

・現在わたしたちが鑑賞しているすべての絵が、そういった、現代人受けする「修復」済みだとしたら? 絵画の見方が変わってくる!

・修復者は名前を(責任と功績)明記すべきでは?

・修復品は、最初は違和感があっても、時間をかけてなじんでゆくこともあるのでは?

・「世界の救世主」の修復作業は、アトリエのように光が十分に差し込むところで行われていた。焼けの心配はないのだろうか?

以上、活発な議論のごく一部をご紹介しました。
読書会同様、同じ映画を観てそれぞれの視点でのおしゃべりはとても楽しかったです。機会ありましたらぜひ、映画も原作本もお試しください♪

■本日の一冊:『最後のダ・ヴィンチの真実』(ベン・ルイス・著/上杉隼人・訳/集英社インターナショナル)

※映画原作本の翻訳者の上杉隼人氏が、映画に関するコラムを書かれています→「誰がいちばん得をして、誰がいちばん損をしたか?

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