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【本】『砂漠が街に入りこんだ日』(グカ・ハン、原 正人/リトル・モア)

こんにちは、『猫の泉 読書会』主宰の「みわみわ」です。

とても浅い夢をみたあとのような不思議な読後感のある短編集です。

あとがきによると、韓国出身の女性作家が、外国語として後天的に(ただしたった六年間で)修得したフランス語で執筆したデビュー作だそうです。

八つの短編集はそれぞれ独立している物語のように思えますが、繰り返し出てくる、雪、異国、母、疎外感、といったモチーフが共通していて、現代的です。

どれも、語り手の性別や年齢や国籍が、あいまいなまま話が進んでいき、何かの拍子にひょいっと開示される感覚が、新鮮で現代ぽいです。

霧の中を歩いているような話で、悲しさとかやるせなさは伝わってくるのだけれど、それに対してどうにかするとかいうような強い気持ちにつながって行かなくて、初音ミクの透明感のある美しい歌を聴いているような感覚でした。

あと、やっぱり日本人が日本語で書くなら、この順番で並べないな~と思う箇所や表現がちょこちょこあって、それこそが翻訳(著者が非母語のフランス語で書く)の翻訳(そのフランス語を日本語へ)の面白さの一つだと感じました。

短編のタイトルはこんな感じ
そういえば全部に「丸いもの」「白いもの」がでてくる話とも

ルオエス

真珠
家出
真夏日
聴覚
一度
放火狂

ルエオスと言う場所の物語です。どの短編も面白いけれども、たぶん読みやすいのは「真夏日」だと思います。私は「真夏日」と「一度」が好きになりました。比較的幸せな気持ちで終わっているからです。

本日の一冊:『砂漠が街に入りこんだ日』(グカ・ハン、原 正人(訳))

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