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【本】『ピノッキオと巡るイタリアお菓子の旅』(岩本 彬、向井順子/コスミック出版)

こんにちは、『猫の泉 読書会』主宰の「みわみわ」です。

今日は、新刊の『ピノッキオと巡るイタリアお菓子の旅』をご紹介します。
素敵な挿絵のある、イタリア郷土菓子のレシピ本です。

本の話の前に、この本を書かれた岩本さんのお店 ”Pasticceria Bar Pinocchio” のことを書きます。

ちょっと前まで、わたしは井の頭線の富士見ヶ丘駅前にある古いビルの、うらびれた外階段を上って、二階のイタリア郷土菓子屋さんに行くのが楽しみでした。

扉を開けると、中はちょっと薄暗くて、奥にカウンターがあって、いつも渋めの音楽がかかっていて、壁にはイタリアの地図やスポーツTシャツが飾ってありました。

入ってすぐ右には、ちょっとした本棚と大きなテーブルがあって、そのテーブルを囲んで、くつろいだお客さんたちが楽しそうにおしゃべりしていていました。テーブルに何かゲームのカードを広げて遊んでいることもありました。

なんだか「冬のこたつ」みたいなお店だな、というのが第一印象でした。

一般的にいうと、常連客がくつろいでいるところに、わたしのような一人客がぽっと店に行っても、わりと後回しにされることが多いものです。

でも、この ”Pasticceria Bar Pinocchio” では、店主の岩本さんが、絶妙に良いタイミングで声をかけてくれました。そうやって、どのお客にも丁寧に気を配ってくれているのがわかって、とても嬉しかったものです。

カウンターには、焼き菓子の入ったガラス瓶がいくつも並んでいました。
焼き菓子は家族が喜ぶので、必ず買って帰るのですが、持ち歩くと形が崩れてしまうケーキやゼリーなど、どうしてもテイクアウトできないお菓子があります。そういうのは、飲み物と一緒にいただきました。

お店に行って、岩本さんに今日は何があるんですか? と尋ねて、そこでしか味わえないものを、のんびり食べてから、焼き菓子の袋を抱えてホクホクしながら帰ったものです。

クリスマスのときには、岩本さんが手早く描いた可愛らしいサンタねずみの絵の紙袋にお菓子を入れてもらいました。お店のファンの人がサンタの袋にせっせと色塗りをしている光景をみたことがあります。素敵なサンタ袋が続々と出来上がっていました。人柄だなと思いました。

もちろん、焼き菓子も、食べると気持ちがほぐれてゆくような美味しさでした。とうもろこしや、アーモンドなどの素材の味が豊かで、甘味はほんの脇役に過ぎません。

そういう素敵なお菓子を扱うお店が、気が向いた時にいつでも行ける場所にあるという毎日が、どれほど豊かで幸せなことだったかなんて、その時は全然わかっていなかったです。

その後、お店は同じ富士見ヶ丘駅近くにお引越しをしました。地下にある、これまた渋くて素敵な内装で、和菓子屋さんからのガラスのショーケースも設置されて、さぁ、コロナに負けずに、もっといろんなお菓子を…!と思っていた矢先に、大変な交通事故に遭ったと伺いました。何時間もの大手術をなさったという話も伝わってきました。その後、本当に残念なことにお店は閉店してしまいました。

その岩本さんが書かれた、イタリア郷土菓子を紹介する本がこちらです。
交通事故の後、リハビリしながら書かれたそうです。

この本のおかげで、やっとわたしも、お菓子とその名前がわかるようになりました。何度も教えてもらったのに、結局覚えきれなかったのです。
味が素朴で、食べるとホッとするお店の菓子の雰囲気を丁寧に描いている素敵な絵と一緒に眺めて、懐かしんでいます。

我が家にはオーブンが無いので、作ろうとしたら、まず環境からですね。

ともあれ、この本のおかげで、本を開けばお店のお菓子のことを詳しく思いだせるので嬉しいです。

いつかまた、岩本さんのお菓子をお店のファンの人たちと一緒に味わえる日がきたらいいなと祈っています。

それでは最後に、我が家の ”Pasticceria Bar Pinocchio” の焼き菓子ベスト3をご紹介しましょう♪

第三位:無花果のビスコッティ(頁28)

ガリガリ系です。
日ごろ、柔らかくて食べやすいお菓子ばっかり食べていたため、この硬さにちょっとカルチャーショックでした。
手間をかけて丁寧に作られたお菓子なら、こちらも丁寧に丁寧に食べるべきだなぁ、なんて、ガリガリかじりながら考えたものです。

第二位:バーチディダーマ(頁86)

そういう名前だったのですね(汗)
意味は、「貴婦人のキス」なのですって。
「チョコをはさんでいる丸いお菓子」という認識でいた自分のズボラさんをを恥じております。口の中でふわふわと溶けてゆく感じが大好きでした。

第一位:シチリア風アーモンドビスコッティ(頁8)

不動の人気でした。なるほど、この本でも筆頭です。
赤や緑のドレンチェリーの載った焼き菓子で、外はカリッとしていますが、中がもっちりしていて、我が家でも大・大人気でした。

本日の一冊:『ピノッキオと巡るイタリアお菓子の旅』(岩本 彬、向井順子/コスミック出版)

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