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【100分de名著】『論語と算盤』(渋沢栄一) #2

こんにちは、『猫の泉 読書会』主宰の「みわみわ」です。

番組の第2回目は 「信用」で経済を回せ  というテーマで、渋沢栄一(1840-1931)の、商業道徳にまつわるエピソードを紹介していました。
今日は、テキストを元に気になったことをまとめます。

〇渋沢栄一が商業道徳を必要と考えたきっかけ

 明治35年(1902年)62歳で妻と欧米へ。
 イギリスで、「日本の商売人は約束を守らない」と苦情を言われる

 「商業は規律なく営まれているため、詐欺こそ商業の本質と見なされるようになった」と、日本の農商務省が出した『興行意見』(明治17年/1884年)にもあった。

 日本の商工業者にとって大変な損失、と渋沢は考えた。

〇信用で経済を回すとは

 1.カネを回すために…金融整備
 2.ヒトとモノの動きを促すために…インフラ整備
 3.カネ、ヒト、モノを回せる人材を育てる

 渋沢の徳川昭武の随行員(1867年2月~1868年)時代に見た、ナポレオン三世の経済政策

〇紙を情報のインフラと捉えて重視した渋沢

〇なぜ明治時代に商業道徳が劣化したか?

 もともと日本には、
 商業道徳の重要性を訴える石門心学も、近江商人の心得もあった。

 しかし、実際には商売人は軽蔑されていた。
 「商人と屏風は直うちゃ立たぬ」
 
 また、渋沢は封建制度の影響を考えていた。
 「いじけた根性」
 「国家を愛するとか道徳を重視するという考え方はどこかへいってしまった」
 

〇孔子は信用を一番重んじた

 孔子の考える政治の3つの要

 1.食料確保
 2.軍備充実
 3.国民からの信頼

 はじめに一つを捨てるしかないとしたら、軍備、
 その次に捨てるとしたら食料と孔子は言っている

〇誰もが納得できる常識をつくろう:他国との交易も視野に入れて

 「常識は、知情意(知恵、情愛、意志)でできている」
 渋沢は、常識を形成する智・情・意のバランスが均等に成長したものが完全な常識であろうと考えた。

〇誰が信用できるか?

 志がいかに真面目で良心的かつ思いやりにあふれていても、その振る舞いが鈍くさかったり、わがまま勝手であれば、手の施しようがない。
 むしろ振る舞いが機敏忠実、人から信頼されるのであれば、その人は成功する。

 「一個人の生き方には、結果よりも過程に価値がある。
  しかし、影響力を広範囲に及ぼす人の生き方は、そうはいかない。」

 現実世界は、一つの原理では割り切れない、矛盾にあふれた世界

悪人が悪いまま終わるとは限らず善人がよいまま終わるわけでもない。悪人を悪人として憎まず、できればその人を善に導いてやりたいとも考えている。だから、最初から悪人であることを知りながら世話をしてやることもあるのだ。

〇感想
随分腑に落ちました。
自分が誠実であり続けても、必ずしもうまく回らないことがあるのが現実です。
渋沢の人物評価方法には、人の上に立つ者向けと、人の下で駒になる者向けの2通りの原理がありました。

 上に立つ者:多少狡猾でも振る舞いが機敏忠実で人から信頼されればよし
 下にいる者:成果よりも、志が大事

下にいる者に上に立つ者が、責任を持つということは、成果が大事ということです。
一方、孔子のいうように、軍備・食料を欠かしても信頼を得るというのは、逆に守ってやりもせず、食わしてやりもせずそれでも信頼をさせ続けると言う意味です。むしろこの二つが欠けた状態で信頼を得るなんて、いかにして?と孔子に聞いてみたいところです。

■本日の一冊:NHK 100分 de 名著 渋沢栄一『論語と算盤』(守屋 淳/NHK出版)


 

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