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ちいさな物語

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#いま私にできること

スキップ日和 #シロクマ文芸部

こどもの日の今日は学校が休みのため、僕はつい寝坊してしまった。 いつもより遅い朝ごはんを食べる眠そうな僕を見て 「こどもはいいわね」と、お母さんが言った。 僕のお母さんは時々「こども」である僕を羨ましがる。 正直その意味はよくわからないけれど、大人も色々あるのだろう。 だからこそ僕はずっと思っていたことをお母さんに言ってみた。 「じゃあお母さんもこどもに戻れば?」 するとお母さんは驚いた顔をして、それからちょっと困った顔をした。 僕にはお母さんが今どんなことを考えたの

幼馴染 #シロクマ文芸部

桜色の髪が風に揺られながら桜子さんはふと思います。 私たち出会ってからもうどれくらいになるのかしら、と。 桜子さんのすぐ隣にいるのは透き通るような肌をした真白さん さらにその隣にいるのはグリーンアイが魅力的な若菜さんです。 三人は幼い頃からずっと一緒、今でもとても仲良しです。 「もう春ねぇ。私、久しぶりにあれが食べたいわ」 「あ、私も同じこと思ってた」 「あら、私だって」 小さい頃から三人で歩く時の並びはいつも決まって 桜子さん・真白さん・若菜さんの順番でした。 そう

アルバイト(4コマ漫画)

ーー おふたりさんのアルバイト日記 ーー 【本日のアルバイト】 おふたりさん 今日もアルバイトお疲れ様でした♬ * 前回のアルバイトはこちら。 ではまた。

キャンバス #シロクマ文芸部

目の前には一枚のキャンバス。 題名と作者は、わかる。 けれどそこに描かれてあるものが僕にはわからない。 そこにあるのはただ真っ黒なキャンバスだけ。 時折人が来てはその黒いキャンバスに見入っている。 どうやら他の人には見えているらしい。 「美しい」「色がいいね」 そんな会話が聞こえてくる。 誰よりも長くキャンバスを見つめている人がいる。 僕は聞いてみた。 「ここには何が描かれているのでしょうか?僕にはただ真っ黒にしか見えないのですが」 「おや、そうですか。今あなたには季節

逃げるチョコレート #シロクマ文芸部

チョコレートが、逃げた。 「待ってよ。何で逃げるの」 逃げたのは昨夜私が作ったチョコレート。 なのにチョコレートは平然と私の声を無視する。 私にとって記念すべき初めての手作りプレゼントになるはず、だった。 といっても料理は上手じゃないから、溶かしたものを型に流して 固めただけのチョコレート。 それでも大好きな先輩の為に心を込めて作ったものだった。 でも何故か今私はその自分の作ったチョコレートを追いかけている。 どんなに頑張っても逃げ足が速くて捕まえられない。 (自分で

節分は二人三脚で

2月3日「節分」当日。 現在私たち三人は節分を楽しむため 節分でまくお豆さんの用意の真っ最中〜。 するとおふたりさんからこんな質問が。 「ねじちゃーん。鬼さん誰やるの~?」 当然のように自分がやろうと思っていたのですが おふたりさんからの要望もあり、今回はじゃんけんで決めることに。 「じゃあ勝った人から好きな役を選ぼう」 「いいねぇ!じゃあいくよ~。じゃんけん…」 「ぽんっ!」 私はというと…はい。さっそく負けました。 こういう時しっかり勝つのがおふたりさんです。 ま

スタート #シロクマ文芸部

布団からテーブルから何から何までなくなった部屋に わたしは一人ぽつんと立っていた。 あの布団もあのテーブルもここにあったもの全て 探して探してようやく出会ったお気に入りのものたちだった。 お気に入りのものたちに守られた「囲いの中」は それは居心地がよかった。 誰にも自分を傷つけられることもなく ここにいるみんなに守られているようで ずっとここにいられたらいいのにと思っていた。 けれどこれからの暮らしにはどれもこれも すべてが小さすぎた。 わたしを守ってくれていたこの部

雨化粧 #シロクマ文芸部

雪化粧があるなら雨化粧もあるの? 妹が僕に聞きました。 聞いたことがないなぁと答えると 妹はそれって変よねと言います。 何でもそういうことってあるだろ? これはあるけどこっちはない、とかさ。 すると妹は「そういうのがいやなの」と 怪訝な顔をしました。 雪化粧があってなぜ雨化粧はないのか。 もちろん僕にはそんなことわかりません。 でもそもそも雪化粧とは雪による白さで 化粧をしたように景色ががらっと変わることをいうわけで。 だから僕は、雨は雪みたいに白くもないし何も変わらな

本物ではないけれど

ある日のこと。 おふたりさんが突然こんなことを言ってきた。 「ねじちゃん。私たち、恵比寿さんになりたいの」 どうやらまたどこかで影響を受けてきたらしい。恵比寿さん…あぁなるほど。七福神だね。でもなんで恵比寿さまなんだろう? 「あのね、鯛を抱えたいの」 鯛?たしかに恵比寿さまは釣竿と鯛を持っていた気がするけど。 「だからねじちゃんにね、メインの鯛と恵比寿さんっぽい服を用意して欲しいの」 おやおや難しい注文がきたぞ。まぁでもふたりの頼みならしょうがない。可愛いふたりの

連想パワー #シロクマ文芸部

新しいは、ぴかぴか。 ぴかぴかは、光。 光は、照らす。 照らすは、太陽。 太陽は、エネルギー。 エネルギーは、僕たちのパワーの源。 エネルギーよ 必要としているみんなのもとへ 今こそ届け。 【おしまい】 *** 今週のシロクマ文芸部でした🐨

アルバイト(4コマ漫画)

4コマ漫画を描いてみました。 もしよかったら見ていただけたら嬉しいです。 【アルバイト】 もしかするとみなさんが食べるケーキにのっている苺も おふたりさんがのせたものかもしれませんね🍓 その時は少しでもふたりのことを思い出してもらえたら嬉しいです🍰 以上、ねじり的4コマ漫画でした~。 まぁそもそもこれが「4コマ漫画」と呼べるものなのか 「4コマ漫画風」はたまた「4コマ漫画風味」なのか。 正しくはわかりませんが、個人的には描いてて楽しかったです♬ ちなみに。 これは以前に

【絵本】 お星さまの穴

ある夜のことです。 おふたりさんはいつものように夜のお散歩を楽しんでいました。 すると空からキラキラと光るものが地面に落ちるのが見えました。 ふたりが急いでかけよると、そこには 見たこともないものが二つ並んでいました。 すると相棒さん。 突然そのお星さまを すぽっ! するとどうでしょう。 お星さまのキラキラが少し強くなりました。 それを見ていたねじりさんも同じく すぽっ! こっちのお星さまもさっきより少しキラキラが強くなりました。 おふたりさん、まずはほっと一安

夏休みの夢 #シロクマ文芸部

逃げる夢を追いかけて、僕はもう何日も 朝から晩まで眠り続ける日々を過ごしている。 あの日逃げた夢で頭がいっぱいの僕は 「あの夢をもう一度見たい」というただそれだけのために 一日のほとんどの時間を「眠る」ことに捧げていた。 どうしたらもう一度同じ夢が見られるのか。 一番大切なことではあるが僕にはその方法がわからないので とりあえずできる限りの時間を使って眠ることにした。 逃げた夢を追いかけていることについては、願掛けの意味も込め 誰にも話すことはしなかった。 今はちょうど夏

熱き戦い #シロクマ文芸部

「珈琲と共にあるのはこの私よ」 「いいや、珈琲に合うのはもちろん僕でしょう」 「それは違うな。この僕こそが相応しい」 こんな主張が延々と続くのはいつものこと。 珈琲の目の前では今日も こうして熱き戦いが繰り広げられている。 珈琲はこの家主の大好物。 さっき話していたのはその大好物である珈琲のお供に 毎回「誰が選ばれるのか」というもの。 そこで華々しく登場したのは、甘いもの集団のスイーツ部。 「そりゃ私たちでしょう。甘いものは定番中の定番よ。相性抜群!」 自分たちの発言に