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ちいさな物語

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2023年6月の記事一覧

海砂糖 【#シロクマ文芸部 】

「海砂糖はじめました」 とうとう今年もこのタペストリーに出会う季節になりました。 「海砂糖」は 角砂糖 にちょっと似ています。 立方体に固めたあの角砂糖のように、この海砂糖も 海に住む生きものたちの形に砂糖を固めています。 ただし、砂糖以外の成分については秘密なので 詳しいことは僕にもわからないんですけどね。 ちなみに海砂糖といえばこの辺りでは夏の定番で 大体この時期になると色んなお店で見かけるようになります。 そして夏が終わる頃、そこら中にあったタペストリーは いつの

ねずみ屋【#シロクマ文芸部 】

「銀河売りのねずみたち」のお話はじまりはじまり〜。 *  長年愛されてきた「ねずみ花火」 そのねずみ花火を作っている会社「ねずみ屋」では 毎日沢山のねずみ達が花火作りに勤しんでいる。 ここでは働く誰もが花火作りの仕事に誇りをもっていた。 ありとあらゆる花火を作っているねずみ屋は 足元でくるくる回る「回転花火」も作っていた。 今でこそ知らない者はいないこのねずみ花火だが 実は元々はこの名ではなかった。 「銀河」 これが回転花火に最初につけられた名だった。 中心に渦を

先生も知らない【#シロクマ文芸部 】

ガラスの手だよ、これ。 いいや、これは絶対に足!あし! 違う違う。これは葉っぱだよ。 だーかーらー!花だってば〜! …………。 * 今は美術の時間。 生徒はみんな、目の前にある 「ガラスの置物」を描くのに集中している。 そのうち、描くのに飽きた誰かが この置物は一体何だ?と言い始めた。 不思議な形をしたこのガラスの置物について それぞれみんな自分の考えを主張している。 そしてそんな生徒たちのことを私は 少し遠くから静かに見守る。 手、足、葉っぱ、花、などなど。 他にも

猫と僕と恋と【#シロクマ文芸部 】

恋は猫のようだと 僕はそう思っている 恋は猫 彼らはいつも突然 僕の前に現れる そこの路地から あそこから 向こうから 音も立てず静かにやってくる それは何の前触れもなく ひっそりと しっとりと 恋は猫 彼らがいつ現れてもいいように 決して油断をしてはならない ぽけっと気を抜いていたら 彼らはいつの間にかふっと いなくなってしまうのだから 恋は猫 こちらがどんなに見つめていても 彼らは気がつかないふりをするだろう だって自分のペースを乱さないのが お決まりのスタ