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ちいさな物語

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2022年4月の記事一覧

優しい境界【ひと色展】

僕はここに来てから ずっと俯いていた やっとのことで取れた休み なんとか気分を変えたくて 海の見える場所まで来てみた けれど僕はずっと顔を伏せたまま 海を見る余裕もない 忙しい毎日に僕の心と体は 疲れきっていた ここに来たって 海なんか何も見ていない ただ下ばかり見ていた もういい加減 疲れたよ 何もかも めちゃくちゃだ つらいよ… つらい… 僕はもう限界だった どうしたの? 泣いてるの? どこか痛いの? 君は… どうしたの? 泣いてるの? どこか痛いの? ご

ふたりだけの秘密【ひと色展】

一緒に遊ぼう? 今日から夏休みって聞いたの だからね 一緒に遊ぼう? 夏休み初日 青空の下 涼しげなワンピースを着た彼女が突然 僕の目の前に現れた 君は誰? どこから来たの? 彼女の爽やかな笑顔は その場に漂う熱い空気を ほいっと 静めてくれるようだった それにほんのちょっぴり 息もしやすい気がする 何をして遊びたいの? ふふっ 彼女が笑うと そよ風が吹く ほんのり涼しいそよ風 心地いいなぁ えーっとね かけっこ! そう言って急に めいっぱい駆け出す彼女 おい

何のため?

抜き足、差し足、忍び足… ぬきあし、さしあし、しのびあし… 呪文みたいに唱えながら歩いているこの方たち。 そうです。おふたりさんです。 「何してるの?」 声をかける私にふたりは同じポーズをして 「しーっ!」 ……… 理由はよくわかりませんが 何やら静かに歩く練習をしているみたいです。 一体なぜそんなことを? けれどふたりはにこにこするだけで 何も教えてはくれません。 ううむ。気になるなぁ… それは何のため? * その後もふたりは相変わらず練習を続けていまし