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ちいさな物語

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2021年9月の記事一覧

オルゴールの音色(1分マガジン)

今日は女の子のお誕生日。 しかし世間的には今日はクリスマス。 女の子のお家はケーキ屋さん。 両親はその日は毎年忙しい。 帰ってくるまで女の子はいつも一人ぼっち。 待つ間、ピアノの鍵盤を人差し指で一つずつ押す。 自分で奏でるバースデーソングほど悲しいものはない。 「はぁ…」 そして突然両手でバンッと鍵盤を叩いた。 その瞬間、鍵盤の端から「きゃっ!」と声が。 見るとそこには小さな妖精。 「あなた誰?」 妖精は何も言わず自分のスカートをパンパンとはたいて 鍵盤の上で踊

美味しいもの「見つけたよ!」

「そこのあなた!お腹空いていませんか?」 「え?僕?まぁ、空いてると言えば少し空いてますけど…」 「さぁさぁこちらの『チョコレート』をどうぞ~♪」 「え?チョコレート?どこにそんなものが…」 「え!これですか⁉︎どう見たってこれは花じゃ…?」 「いえいえ、これは『チョコレートコスモス』っていうんですよ。 だからこれはチョコレートなのです!」 「はぁ…」 「あ!食べたら今度は、喉が渇いてきたんじゃないですか⁉︎」 「えぇまぁ…(というか食べてないんだけど…)」

ぼんさんと川柳で遊んでみました。

つい最近、こんな記事を投稿しました。川柳です。 するとコメント欄でみんなが「きゅんとした」と言ってくれて ねじりは正直、ニマニマしましたよっ! すごく嬉しいと最近は、ニヤニヤというより 自分は「ニマニマ」だなって気づきました。 みなさん、スキやコメントを本当にありがとうございます。 そんな中、ぼんさん(ぼんやりRADIOさん)が こんなコメントをくださいました。 空いてる手 八の字描き 君に触れ ぼんさんのコメントに、これは 「感化された川柳です!(照)」と、ありま

博士の薬の隠し味(1分マガジン)

白いあごひげを揺らしながら、博士は言った。 「本当によかった…本当に…」 博士は泣いていた。 喜びの涙を流しながらそれはそれは盛大に。 実はつい先程、博士は弟子3号を泣かせることに成功したのだ。 3号が飲んだのは綺麗な青い液体の薬。 彼女は最近恋人に振られたのだが、明るく元気に振舞い 無理をしていた。 だから博士は、彼女にある薬を飲ませた。 悲しみさえ無視してしまうほど疲れた現代人が 「泣きたいだけ泣ける薬」を。 成功した嬉しさに大泣きする博士。 「さて、今度はワシも

「好きな人の特徴」

私の好きな人の特徴? そうねぇ… 耳は思ったより小さいわね。 え?なんでわかるのかって? だって思いきり出てるもの! え?髪が短いからかって? まぁそういうことにしときましょ。 目は小粒かも。あ、つぶらかも。 時々♡になるわね。 それがまた可愛いのよ。 彼すごく忙しそうだけど、一応毎日会えてるわ。 夜にだけ。なんの前触れもなく現れるの。 夜に勝手にやってきて面白い話をするだけして あとはいなくなっちゃの。 ほんと、勝手な人よね。 でも毎日ちゃんと面白い話を残していってく

ふたり、海を渡る。

ある日、ふたりに「あるモノを作ってほしい」と頼まれた。 いいよと返事をしたのだが、それを持って今度は どこへ遊びに行くのだろうか? でも詮索したりはしない。 ふたりには基本的に自由に遊んでもらい いつもワクワクしながらふたりの土産話を聞く。 これがいつもの流れ。 帰ってきたらまた教えてくれるかな? そんな感じで私はいつものんびりと構えていた。 * 朝起きるとふたりの姿はもうなかった。 「随分と朝早くから出かけたんだなぁ」 見ると、ふたりに頼まれていた「あるモノ」がなくなっ

「俳句から生まれる物語」

まずはこちらの句をどうぞ。 そよ秋風ここは君のカフェテラス この句は、shinoさんが詠まれた句である。 みなさんはこの句を読んだ時、どんな光景を想像しただろうか? ちなみにこの句を詠んだshinoさん自身の解説にはこう書かれてある。 第五句 季語:秋風 そよ、は、そよそよのイメージ。 都会の街角。秋風をふと感じたその場所は、君とよく来た君が大好きなカフェテラス。 2人はまだ付き合ってるのかな?いや、きっと別れた後に、男性が秋風と共に、昔の彼女を思い出したに違いありませ