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あっちゃんが亡くなった日のことについて気持ちを整理したかっただけのこと

2023年、私は前厄で、大殺界だった。
だけど去年の年末に知って以降は、特になんにも気にすることもなく今年を過ごしてきた。

10月24日までは。

10月19日、私が人生の半分ぐらいの間愛していた櫻井敦司が、ライブ中に体調不良となりステージを降りたことを知った。

このときには当たり前に回復して、またステージに立つんだと全く疑っていなかったし、疑う余地もなかった。
ただ健康そうには思えないし、もう60間近だし、ゆっくり休んでほしいなとは思ったけれど。


そもそも私はコロナ以降BUCK-TICKのライブには足を運んでいなくて(アルバム聴いたりyoutubeの配信を見たりはしていたけど)、今年夫と行こうかな、とりあえずまた今度にしようかな、などと二の足を踏んでいた。
(コロナ禍以後チケット代ちょっと高いよね)
(なんでもそうなんだけど)
(2人で行くとなると結構な出費だよね)

私がBUCK-TICKの情報を得ているのはもっぱら公式LINEか上のTwitter(Xか)のアカウントなんだけど、そのアカウントにすら最近はログイン頻度が落ちてきて、まあ平たく言うとBUCK-TICKに熱狂的なタイミングではなかったのである。
だからフォロワーさんたちが公式からの続報がないことにやきもきして、そして心から心配していることを、恥ずかしながら全く知らなかった。
のんきに日常を過ごしていたのだ。

そして、10月24日。

私は娘を幼稚園へ迎えに行っていて、園庭で少し遊ばせているところだった。
6歳を目前にして、もう母と遊ぶよりはお友達と遊んだほうがなんだか楽しいことに気づき、年少年中では母にくっつきたおしていたにも関わらず今では母が近寄ると一目散に逃げて、友人たちときゃあきゃあやっている。
そんなふうなので、私はありがたく2歳の下の娘の遊びに専念しようとするのだが、下の娘はねえねとは違い、あまり私の手をとって遊びたがらない。
1人でやれすべりだいだ、やれお砂場遊びだ、やれ延々と手洗いだと楽しくやっているので、寂しく思いつつも楽をさせてもらっている、そんな風に園庭のすみでスマホをいじっていた。
(ママ友がいないわけではない)

ブブッと通知が届いた。

”親愛なるファンの皆様へ”
”「大切なお知らせ」がございます。”

途端に心臓がざわざわと早まった。
絶対に良い知らせではないことは明白だった。
そして、今体調を崩して休んでいる(であろう)あっちゃんについての知らせだということも。

もしかして?

いやいや、
やめてよ、
まさか

でも何かあったんだ。
何が?
もしかして長く休むのかな、続けられないぐらい悪いのかな、
病気が見つかった?寝たきり?

一瞬でそんなことが頭を駆け巡って、それでも知らずにはいられなかったのでLINEのリンクをタップした。

ページは重たくて、全然開かない。
私はその間に何度も脳裏に”死”が浮かんで、そのたびに消した。
だってまさか。

やっと開いたページからまず目に飛び込んできたのは「脳幹出血」、そして「早すぎる旅立ち」の2文字だった。

だめだ、と思って咄嗟にページを閉じて、そこらへんでのんきに遊んでいる2人の娘に目を向けて、信じられなくてまたページを開いた。
今度はあっけないぐらいさっと開いたページをもう一度見て、「あっちゃんが死にました」ということが書いてある文章をよくわからないまま何度も読んで、それでもまだ信じられなくて、もう一回閉じた。

震える声で子供に「帰ろう」と言ったけど、どちらも全く聞いてくれなくて、私は現実味がなさすぎて涙も出ないまま、ママ友と他愛もないおしゃべりをして、くだらない愚痴に笑って、なんだか別のだれかが全部やってくれているみたいだった。

さあようやく帰ろうかと思ったところで、夫から電話がきた。
多分ニュース見たんだな、きっと心配してかけてくれたんだろうけど、その電話はあっちゃんが死んじゃったことが本当のことみたいですごくつらくて、電話に出て「大丈夫か」って言われて、大丈夫なわけないやんと思って「大丈夫じゃない、」って言ったところで自分でもびっくりするぐらいぼたぼた涙が出てきた。
大丈夫じゃないよ、大丈夫なわけないよ、あんたよりずっと前から好きやってん、大丈夫なわけないやん、人生の半分好きやねん。
そう思ったけどそれは言えず、やっとのことで「まだ幼稚園おって今我慢してるところやからやめて」と言って切ってもらった。
言葉に出すのをやめたら涙も意外とすぐ引っ込んで、ママ友にニコニコできたりもして、母親ってこういうものなんかな、それとも私が存外薄情なんかなと考えながら帰路についた。

そんなふうに思っていたのに、自宅のドアを開けて、一歩中に入ったらもうだめだった。
あっちゃんが死んじゃった。

娘2人はびっくりしていたけど、私はわりと感情の起伏の激しいタイプの母親なので(いややな)、ママがまた荒ぶってるわ、、ぐらいだった。
そもそも5歳と2歳、まだ人が死ぬことを理解する前なので、致し方ない。
ひとまず娘たちにおやつを食べさせて、Twitter(Xな)を見た。

みんながあっちゃんのことを嘆き悲しんでいて、あっちゃんに感謝の言葉をつぶやいてる人もいて、私は水中にいるみたいに息苦しくて、でもきっとみんなそうで、私もみんなと同じようにいろいろつぶやいて、ちょっとずつ気持ちを落ち着かせて、、、、って全然落ち着くわけない。

娘のピアノ教室にも連れてったけど、ほんまに落ち着くわけない。
旧友とLINEで話しても、実母と話しても、現実感がなかった。
ないのに、心臓だけがずっとバクバクしていて、手は冷え切っていた。

実家でもう一度ゆっくり「大切なお知らせ」を読んだ。
ああ、あっちゃんは私が19日に心配だなって思ったその2時間後ぐらいにはもう亡くなっちゃってたんだな、
今日このお知らせがくるまで知らなかっただけで、私はもうあっちゃんがいない世界を生きてたんだなと寂しくなった。
ご葬儀が終わっているということは、当たり前だけどもう火葬も済んでいて、あっちゃんはこの世のどこを探してももうそのかたちはない。
私はあっちゃんが亡くなったら十字架をかけて手を組んで棺に入るんじゃないかと思っていたけど、絶対そんなことはないんだな、じゃああっちゃん吸血鬼で甦れないんじゃないの、いいのそれで、ってすごい馬鹿げたことを考えてあほらしくて笑った。そして泣いた。あっちゃんもうどこにもいないの。


今日、例年のように武道館でBUCK-TICKのライブがあった。
私は家で家事育児に追われながらも(嘘ですダラダラしていました)、終演後のレポを心待ちにしていた。
終わった途端、本当にたくさんの人がライブのレポをあげてくれて、私はそのTLを見ていたらまた涙があふれて、、。
ユータの言葉、アニイの言葉、ヒデの言葉、そして今井さんの言葉、、
「笑えねーよ、なに死んでんだよ」
これを今井さんが言ってくれることがどれだけ私の心を慰めてくれたか。
本当にそうだよ、あっちゃん、なに死んでるの、今井さんをおいて、ヒデをおいて、アニイを、ユータを、そしてファンをおいて。
私も笑えないよって思ったよ。

「生きていたいと思う、愛されてるなら」

あっちゃんの訃報を聞いてからずっと、鼓動がリフレインしている。
きっとみんなそうだと思う。

あっちゃん、ずっと生きていてほしかったよ。
でもあっちゃんはこれからもずっと歌っているから、だから大丈夫。
あっちゃん愛しているよ。


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