(過去作)宗教勧誘と語ってみる 前編

(学生時代に書いた文章を再掲)


「人の心が読めたらいいのに」

誰しも一度は考えたことがあるのではないかと思う。
確かにそうだったら便利なことも多いだろう。
嘘とか簡単に見破れるし、相手がどう思っているかが解るし。

しかし、誰の心の声も聞こえてしまうというのも怖いものだ。

(「サトラレ」という映画があったよね)


とはいえ誰もが少しは心を読むことはできるはず。
顔の表情とか仕草とかで機嫌のよい悪いはわかるだろうし、
注意深く見れば相手が自分をどう思っているかをある程度知るのはそれほど難しくはない。

私が住む西条は大学があるだけの町なので、アパートにはほとんど学生が住んでいる。
当然その学生を狙っての妙な製品販売や詐欺が多い。

そして・・・

宗教勧誘も


(注:今回は長いだけで、それほどネタに走ってません)

いつもの土曜日、習慣通り早起きして掃除洗濯をすませ料理をしていた。
料理といっても昨晩作ったカレーを鍋で温めていただけなのですが。


そのとき、ふとチャイムが鳴る。
「誰だろう?」と思って玄関のドアを開けると一人の男が立っている。
歳は26歳くらい、スーツを着てて、笑顔が爽やかな好青年だった。

宗教勧誘の人(以下:宗)
「すいません、私「○○会」のものでして、少しお話させてもらっていいでしょうか?」

よく聞き取れなかったのですが、彼がつけていた名札には「キリスト教会」の文字があるので、宗教勧誘だというのはすぐにわかる。

私は宗教を信仰している人を否定する気はありません。
むしろ最近の荒れ果てた世の中をよくするような考え方を見出すのなら頑張って欲しいとすら思っています。敬意も少し払ってます。
従って、無下に断るような真似はしません。


私「今なら少しはいいですよ」

断る理由もなかったので少し話を聞いてみます。彼は終始笑顔で話してきます。

宗「ありがとうございます。早速っですが、聖書を読まれたことはありますか?」

私「ええ、子供の頃にちょっと読んだことありますよ。」
(↑「モーセの十戒」(海が割れるやつ)とかその手のやつですが)

宗「そうなんですか。それを読まれてどう思いましたか?」

私「まあ子供のときでしたから、夢物語読んでる感じでしたね。」

宗「そうですか。今日は聖書に書いてある言葉を一つ知っていただきたいと思いまして。」
とページをめくります。
結構こういう言葉は嫌いではないので、ちょっと興味津々です。

宗「聖書には『人は与えてもらうより与える方が幸せを感じる』とあるんですよ。」

私「ああ、聞いたことがありますね。」

宗「そうですか。これについてどう思われますか?」

私「まあ常に心に留めておくべきことであると思いますね。」

宗「すごく私も大事にしている言葉なんですね。」


その後もあたり障りのない倫理観をしゃべってきます。
この辺で私のテンションはもう下降するのみです。
仮にも宗教を信仰しているならもう少し実体験を話すとか、自分なりの解釈とか言え!と。
そもそも「人は与えてもらうより~」なんてどこの宗教も同じようなこと言っとるわ!


普段の私なら「あなた方の目指す理想をあなたの自分なりの解釈で教えてください」と意地悪な質問をするところです。
(大概の宗教勧誘はこの質問にまともに答えることができません)

しかし、相手がいい人そうだったので最後まで聞いてあげることにします。
ちなみに露骨に嫌悪感を出さず、私も終始笑顔で対応します。

宗「こういうことを考えていくのって大事なんですよ。」

私「そうですよね。」
(浅いこというならとっとと帰れよ)

宗「私もあなたと同じ大学の工学部卒業生なんですよ。建築系なんですけど。」

私「へ~、そうなんですか。」
(くだらん情報なんかどうでもいいわい)

宗「今ではこういう活動しているんですけどね。」

私「そうですか。」
(就職に失敗したのかな?この人)


そのあともどうでもいい世間話を数分して彼は帰っていきました。
確かに僕は笑顔で対応してましたけど、もう少し「早く帰れ」という心を読んで欲しかったですね。
多少はその感情を顔に表してたはずでしたし。

彼は人の心の声が聞こえない、まだまだ甘い人でしたね。
私だったら間違いなく心の声を聴いて早めに切り上げるところです。
断言します。

そして彼が帰った後ふと気付くと、なんとなく焦げ臭い。
慌ててカレーの入ってた鍋をみると、案の定完全に焦げ付いてました。

もうね、「荒れ果てた世の中よりこのカレーをなんとかしろ!宗教のバカ!」と心の中で叫びましたよ。

そんなことを叫んでもしょうがない。
全てはカレーの心の声が聞こえなかった私の責任なのです。

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