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野球肩・肘は肘肩関節だけが原因じゃない

先日、栃木県内の野球選手(小学生〜高校生)の肩肘障害を防ぐために活動している団体の
MSBP(Medical Support Baseball Player)とちぎの研究会に参加してきました。




今回はPTによる症例検討会と桐蔭横浜大の河崎賢三先生の講演の二部構成で行いました。



栃木県以外でもこういったアマチュアの野球選手を支えている県は多く、その活動内容や研究結果は肩学会や肘学会、その他の研究会などで多数報告しています。



ここでの活動の目的は、


野球肘障害の「離断性骨軟骨炎=OCD」の早期発見。そして、野球寿命を伸ばすこと。



栃木県ではオフシーズンであるこの冬の時期に地区を分けて実施しています。



実施内容としては大きく分けると
①アンケート調査
②理学所見 (PT)
③ドクターによるエコー検査
④運動指導 (PT)


理学所見と運動指導でPTが活躍するわけです。



と、少し前置きが長くなってしまいましたが
河崎賢三先生の講演のお話をします。

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題名は

「野球肩・肘は肘肩関節だけが原因じゃない
〜胸郭出口症候群と末梢神経障害の診断と治療〜」



胸郭出口症候群(Thoracic outlet syndrome : TOS)


TOSは従来、なで肩の女性
とくに、パソコン業務を行う人に多いと認識されていましたが、現在ではスポーツ障害で注目されていて、

オーバーヘッドスポーツの約81%を占める

と言われています。

主な症状は腕のだるさやしびれ。




野球選手で言えば、
・上肢神経症状がある方が1シーズン中の肩肘痛の割合が多い
とも報告されています。



TOS存在下では上肢痛をきたす可能性が高く、
疼痛の原因のパターンとしては、
・重複神経障害(double clash syndrome)
・末梢神経の疼痛閾値の低下

が挙げられます。



PTが行うことが多い誘発テストでは、
・ライトテスト
・アレンテスト
・ルーステスト
などが挙げられます。

こちらを参考に。

https://matome.naver.jp/m/odai/2145604650987020701




7月に行われた、日本肩関節理学療法研究会にて、群馬県の慶友整形外科病院で行われている、ルース30というルーステストを30秒行うものが紹介されていました。




河崎先生の病院では、このTOSに対して、ハイドロリリースを行うことが多いとのことです。


ハイドロリリースについては、

解剖・動作・エコーで導くFasciaリリースの基本と臨床―筋膜リリースからFasciaリリースへ (Fasciaの評価と治療) https://www.amazon.co.jp/dp/4830627360/ref=cm_sw_r_other_apa_i_-wP0Db6X9Z11D


肩痛・拘縮肩に対するFasciaリリース (Fasciaの評価と治療) https://www.amazon.co.jp/dp/4830627379/ref=cm_sw_r_cp_apa_i_8xP0DbBF9CC32

この辺の小林只先生の本に詳しく書かれています。




PTがテストや圧痛箇所を特定し、先生がエコーで確認しながらリリースする流れ。


ここで、一つの疑問が。


「徒手じゃだめなの?」


結論から言うと、だめなわけじゃないです。

これは小林只先生がおっしゃっていました。
でも、エコーで確認することが望ましい。



自律神経が集まるデリケートな頸部を徒手で、大雑把にリリースをかけてしまうと、めまいなどの症状が出てしまい患者さんが嫌がるケースが多かったとのことです。



下肢や体幹と比べると圧痛点は探せてもピンポイントでリリースをかけるのはやっぱり難しいと思います。



ですので、

評価(PT)
   ↓
ハイドロリリース(Dr.)
   ↓
再評価・トレーニング指導(PT)

の流れで行うようです。



ざっと、お話してきましたがまとめると。

・野球肩肘障害はTOSを合併していることが多い
・TOSの治療はハイドロリリースが主流になってきている
・PTが行うことは評価、そしてトレーニング指導



もちろん、ハイドロリリースだけじゃ改善しないOpe適応例もいることは忘れてはいけません。



野球肩肘の障害がある選手を評価する際は、まずはTOS所見をしっかり取ることが重要ですね。



野球人口が減っているという悲しいニュースもありますが、少しでも長く野球を楽しめるようにサポートしていきたいですね。

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