本当にディーン・スミスは選手交代をしないのか?

目次

概要

抽出した数字

①スミスが交代枠を使った数について

②選手交代のタイミングについて

検証、選手交代に効果はあったのか?

考察

まとめ


概要

世界で一番不毛なデータを抽出しました。

アストンヴィラサポーターの間では選手交代をしない、遅いことでお馴染みのディーン・スミス監督。けれど、それは事実なのでしょうか?彼が交代策を用意していない根拠はどこにあるのか?実は試合展開を巧みに予想・操作した戦略なのではないか?少しでもスミスにとってポジティブなデータが出るように、これまでのアストンヴィラの12試合を振り返ってみましょう。


抽出した数字について

以下は今回の検証にあたり抽出した数字の一覧。かなり見づらいけど、各試合ごとに得点、失点、選手交代を試合時間でチェック。引用元はプレミアリーグ公式アプリから。

スクリーンショット 2020-12-23 21.01.19

【交代シチュエーション】に関しては後半で最初に動いたシーン、タイムラインに沿ってシチュエーションが異なった場合は併記した。(前半での負傷交代を除く。備考欄参照)。【被交代シチュエーション】も同様に、タイムラインに沿ってシチュエーションが異なった場合には併記。


①スミスが交代枠を使った数について

なんと意外にも3枚全て使い切った試合が3試合もあるという意外な数字に。やはり確かめてみるものである。2枚替えも3試合あり12試合のうち半数の6試合で複数交代を実行している。残り6試合のうち5試合は交代1人のみ、直近の1試合で初めて選手交代を行わないという判断を下した。

アストンヴィラはここまで12試合を戦い、最大選手交代可能数は12x3の36。

上記表より、スミスが使った交代枠の数は合計で20。

20/36の選手交代数であり、これは最大数のおよそ56%

12試合を戦っているので、1試合平均でおよそ1.7人交代させている計算になる。はず。

つまりスミスは1試合に1人は交代枠を使い、展開によって2人目も出てくる可能性がある、といったところだろうか。ううむ、これまでは印象論だけで交代させない監督だと思っていたが、実際には1枚はほぼ確実に交代させ、むしろ頑張っている方にすら見えてくる。

一方、ヴィラと対戦したチームのほとんどが交代枠3枚を使い切っているという数字も出ている。確かに相手チームが3枚選手を切っている試合展開で、自チームの監督が1枚しかカードを切っていない状況では「地蔵」「交代ルールを知らない男」などと揶揄されても仕方ない部分があるのかもしれない。

唯一10節で対戦したウルブズのみが交代1のみとなっている。


②選手交代のタイミングについて

①にて少なくともスミスが選手交代を行なっていることは証明されたわけだが、ではこちらではそのタイミングについてまとめたい。

今回ピックアップした選手交代について、試合中に訪れるシチュエーションは3パターンしかない。リード時、同点時、ビハインド時である。詳細な交代の意図に関しては試合内容やピッチに送り出される・ベンチに下がる選手によって細かく分かれるが(例えばリード時にウイングの選手に代えて、同じポジションの選手を出すのか、或いは守備的な選手を出すのか、など)今回はそういった要素は加味しないこととする。一般的にリード時の選手交代であれば逃げ切りを図る場合が考えられ、同点・ビハインド時には展開を打破すべく攻撃的なカードが切られることが多いと考えられる。

それでは、上記表を見てみよう。選手交代が行われた11/12試合において、アストンヴィラがビハインド時に動いたのは4回。リード時に動いた回数も4回あり、そのうち1回は同点時に動き、得点後に2枚目を切った形になる。同点時も4回、こちらも1回に前述の試合を含む。3/11が先行逃げ切りが確定したシチュエーションであるが、逆に言えば残りの8試合は交代カードを切ったにも関わらず、シチュエーションが変わった試合は1試合のみとなる。

…あれ?雲行きが怪しくなってきたぞ?


検証、選手交代に効果はあったのか?

ビハインド時を詳しく見てみよう。少なくともプレミアリーグでは引き分け、つまり同点に持ち込まなければ勝ち点を得ることはできないため、このシチュエーションにおいては攻撃的なカードを選択しているケースが多いだろう。では、その攻撃的な選手がピッチに現れるまでにヴィラは何分間のビハインドを背負い、交代選手は試合を動かすために何分与えられたのだろうか?

スクリーンショット 2020-12-23 21.43.57

セオリーとして言われるのが後半15分、試合時間60分前後での交代が目安とされるため、交代選手には25~30分程度の時間が与えられて然るべきである。しかし上記表から、そこに近い数字を出しているのは第5、6節のみであり、また第6節においては4点ビハインドの状況であることから交代策は「遅い」と判断することが出来る(第6節では前半終了時で0−4のビハインド。後半スタートから交代を行なってもなんらおかしくないシチュエーションである)。

第8,9節においても途中出場の選手に与えられた時間はわずか15分程度であるが、スミスは15分あれば得点が挙げられると考えているのだろうか?およそ75分を戦って1点しかとれていないのに?

さらに驚くべきはリード時の交代である。ビハインド時ですら「動くのが遅い」と判断できるにも関わらず、リード時をピックアップすると以下の通りとなる。

スクリーンショット 2020-12-24 19.16.07

なんとリード時の選手交代でも一番早い時間で76分、その時点で3-0のリードと、言ってしまえば既に試合の大勢が決している段階である。さらに、ほとんどの交代が80分以降となっており、これでは交代出場する選手もアピールするには不十分、自身の試合勘やフィジカルコンディションの維持に努めるばかりである。

(ぶっちゃけ面倒くさいので割愛するが、同点時の交代でも第10節を含め62,81,75,80分での交代なので、およそ試合に影響を与えているとは言い難い)

よって、前述の項①、項②とあわせ、

「スミスは選手交代に消極的である」

と考えることが出来る。


考察

では、なぜスミスが選手交代について消極的なのかについて考察していきたい。

考えられる要因については主に2つあり、ひとつが「レギュラーと控え間の実力差」、もうひとつが「変則日程におけるコンディション管理」の面である。

一点目においては、例えばナカンバの例が顕著だ。彼はここまでプレミア全試合においてベンチ入りを果たしているが、出場は4試合で103分、スタメン出場は1試合のみ(フル出場)で、3試合が途中出場。出場時間はそれぞれ3分、10分、0分である。ナカンバは守備的は選手とされており、主に途中出場では逃げ切りのシチュエーションが多くなると考えられるが、7勝しているにも関わらず、クローザーとしての出場機会も満足に得られていないのが現状である。この表面的な部分を切り取ってみただけでも、ナカンバがプレミアで通用するレベルにはないと判断されている様子が窺える。このポジションのレギュラーはドウグラスであるが、彼が出場停止となった試合以外においては全試合スタメンであることからも、その信頼の差が見て取れる。この出場機会の差においては、監督がマネジメント方法を考えるのか、またはトレーニング内でナカンバが彼自身の評価を覆すのか、或いはチームとして実力者を補強することで、控え選手の出場機会を改善していくことが望ましい。

二点目において、まず、お気づきの方もいただろうが、前項で出したビハインド時において、それぞれ第5−6、8−9と連敗を喫している。アストンヴィラは12試合を戦い4敗を喫しているが、この連敗2つのみとなっているのだ。今回は試合日程については考慮から外しているが(ちなみに5−6節の連敗においては第4節から中4日、5節〜6節間、6節〜7節間はそれぞれ1週間空いている。第8節は代表ウィーク明けとなっており、第9節では新城戦が中3日、10節狼戦が中6日で組まれていた)、例えば過密日程での連戦が控えている場合、ひとつの案として1戦目と2戦目でローテーションを行うことも考えられる。スカッド全体を毎試合フレキシブルに使うのではなく、交代まで考慮した上で出場選手を限定するローテーションであれば、中2−3日での連戦で疲労・負傷リスクを下げることも出来るのではないだろうか。こう考えると、試合中の負傷に備え交代枠を80分前後まで用意しておくことは急な負傷でピッチ上の人数が減ってしまうことを避ける上で重要であると考えられる。なお、スミスが実際にローテーションを採用したかどうかは問わないものとする。結果は皆さん自身がご存知のはずである。


まとめ

さて、ここまで下らない、数値の相関関係もわからない、恣意的なデータでスミスの選手交代について考えてみました。結論としては、


「スミスは選手交代を行うが、動きは遅く、試合に与える影響は小さい」


というところではないでしょうか?

果たして、冬市場でのスカッドの入れ替えや、延期になった試合のリスケなどがあった場合、スミスはどう動くのでしょうか?前回の冬市場では動きが遅かったこともあり、結局最終節まで残留争いをすることになりましたが、今季はなんとか上を目指して欲しいものであります。

ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。

2020.12.24

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?