【言葉遊び空論09】倒文

 倒文は 現代日本語において 公式的な言葉遊びの技法名としては 存在が確認されていない

 しかし これから記述する技法を 説明する上では 便宜的に こう呼ぶ事が 現時点では妥当と判断し これを 採用する事とした

 正式・公式 あるいは よりメジャーな 名称を ご存じであれば お伝え頂きたく候

 さて 倒文の本題に入る前に まず この言葉が発現する その源流となっているであろう 倒語という技法について 簡単に説明していく

 必要であると 思った場合は メモをする あるいは 音読するなどし 水分補給を まめに行なう事が 許されている



 『とびだせどうぶつの森』に 登場する 占い師:ハッケミィの セリフに以下のようなモノがある

ケッハ モルタァ
ケッハ モヌラタァ
ルタスリク バツユマ

 この言葉を 反対から読めば 「眉唾 クリスタル 当たらぬも八卦 当たるも八卦」 となる事は もはや 周知の事実だろう

 ある言葉の文字列を逆順にして読む

 このような技法は 通常 倒語 と呼ばれる(「倒言」と表記される場合もあるが 本項では統一して 倒語と称す)

 呪文である事を 表現する際に 何らかの言葉を 逆順で読ませる という表現方法は 思いの外 よく見られるが それは 意味不明な言葉に対する ある種の 神秘性を見出す 心理の表れであろうか(それが重度に”洗練”される事で 古歌や童謡の裏の意味 などと言った言説が 出現するのかもしれない)

 だが 「呪文のように聞かせる為に言葉を逆に読ませる」 という表現の 源流と探る中において 『日本書紀』の 以下のような記述は 見逃せない

初、天皇草創天基之日也、大伴氏之遠祖道臣命、帥大來目部、奉承密策、能以諷歌倒語、掃蕩妖氣。倒語之用、始起乎茲。

 大まかに言えば 神武天皇即位時 臣下であった 道臣命(みちのおみのみこと)が 「諷歌(そへうた)・倒語(さかしまごと)」で 妖気を払った という旨を 語っている

 ここに言う 「倒語=さかしまごと」は ”逆から読んだもの”という意味とは 必ずしも言い切れず 実際の所は どのような表現法であるかは 一切不明である (諷歌は「別の言葉に言い換えたもの」を意味するらしい)

 もしもこれが 「何らかの言葉を逆に読んだもの」という意味合いの 表現であったとすれば まさしく 呪文逆読み法の 源流と見て 間違いないだろう

 そこは 専門家諸君に 委ねるので 宜しく

 一方 呪文に限らず 日常的には ある言葉を逆順にした表現が 定着しているケースも多く ショバ代のショバは「場所」から ダフ屋のダフは「札」から ガサ入れのガサは「家探し(や"さが"し)」から などは 俗語・隠語として 倒語を用る例が 古くからある事を 物語っている

 果ては 商品名 店名などの ネーミングの多くに 日常的と言って良いほど 目を向ければ そこに倒語があるかの 如くである

──鰻を焼いたものを、なぜ"カバ焼き"って称うんです?
──あれはな、鵜に呑みこまれるようなバカな魚なんだ。昔は、ノロとか、ヌルとか、ナガとか称ってたんだ。だから”バカ焼き”だ”バカ焼き”だって称ったんだけれど、そいつがひっくり返って、”カバ焼き”になった。
──ぢゃあ、”バカ焼き”でいいのに、なんで”カバ焼き”にひっくり返すんです?
──ひっくり返さないと、よく焼けないだろ。

 「ワイハー」「ザギンでシースー」「パイオツカイデー」「C調」「トーシロー」などの いわゆるズージャ語も 倒語の例として 扱われる事は多いが ズージャ語の場合は そのまま逆順に読まれる という訳ではなく 厳密には 語音置換 と言えよう(当然 語音置換の一種として 倒語がある訳だが)

 逆順に読む事 これが 倒語の事始め

 (参考 ⇒ 都道府県をローマ字に直して逆から読んだ結果www

 しかし 上記までに見た倒語は 本来意味する 一つの事柄を指す 言い回し という類でしかない



 倒語には 今説明したタイプとは 別に もう1つのタイプが 存在している

 そして こちらの方こそが 言葉遊びにおいては 特に 重要視される 倒語の性質となっている

 お解りだろうか

 次回を乞うご期待と 先伸ばす訳にも いかないので 進める

 松竹芸能所属の漫才コンビで 髪吹き芸と名高い 海原はるか・かなたの漫才に 以下のようなネタがある(※余談だが「ネタ」も「種」の倒語である)

「ここ(相方)の嫁はん『タネコ』ちゅうねん」
「タネちゃんです」
「でこいつの本名『コンドウ』ちゅうねん」
「そうそう」
「せやからここの嫁はん『コンドウタネコ』」
「もうハッキリ言って最高」
「なに言うてんねん『コンドウタネコ』下から読んでみなはれ」
「なになに?」
「『コネタウドンコ』(こねたウドン粉)」
「お前なんちゅう事言うねん!!」

 先ほどの ズージャ語などが 例示された 倒語と 何が違うのか

 考えて頂こうか

 時間切れなので 答えと行こう

 ここでの 「コンドウタネコ」と「コネタウドンコ」の様に ある言葉の文字列を逆順にすると ”正順とは異なった言葉”として通じる

 まさしく これである

 言葉遊びの技法としては 大いに こちらの方が 主流であろう

 因みに 正順と逆順の文字列で 異なった言葉になる タイプの倒語の場合には ”猥褻な”内容を表しているものを 特に たいこめと呼んで 区別する事がある

 「たいこめ」という名称は 「鯛釣り船に米押しダルマ(たいつりぶねにこめおしだるま)」の略語(鯛米)から来ている

 意味? 自習するように

 しかしながら 逆順で 猥褻な内容と言うと 例えば 漢字表記ではあるが 「感性」は グレーゾーンと なるのであろうか

 有識者の検討が要されるだろう

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(古賀亮一『電撃テンジカーズ』より)

 一方 江戸時代に 発表された 雑俳集『折句紀の玉川』では 一句両吟と呼ばれる いわば 倒語俳句が 紹介されている

川の岸 晴れ来る無雅な 花筏
(かわのきし はれくるむがな はないかだ)
(たかいなは ながむるくれは しぎのわか)
高い名は 眺むる暮れは 鴫の和歌

気の楽さ 長閑草花 其所に咲く
(きのらくさ のどかくさばな そこにさく)
(くさにこそ なはさくかどの さくらのき)
草にこそ名は咲く門の桜の木

※濁点の有無不問

 また 発表された時代や作者は不明だが 倒語の名作と 謳われるモノに

酔いしれ占う仲良いあの娘
(よいしれうらなうなかよいあのこ)
(このあいよかなうならうれしいよ)
この愛よ叶うなら嬉しいよ

 というモノが ある

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 余談だが 2014年に廃止された 寝台列車「あけぼの」は 停車駅の 群馬県『高崎駅(たかさき)』と秋田県『象潟駅(きさかた)』 両駅名が 倒語であった

 倒語関係にある 地名自体 珍しいというのに 同車輛の運行路線という形で 文字通り 繋がりを持っていた という 世にも珍しい例といえる

 


 倒語の 例示を このように見ていくと 正順逆順どちらか読んでも 同じ文字列になる 「回文」という技法を 想起する人は 多いだろう

 実際 倒語は 回文を主軸として 亜種的もしくは類似品的な 扱いで 紹介される事が多い

 待遇として 健全とは 言い難い

 ここで ハッキリと 優雅に そして 力強く 回文からの独立宣言を 果たす必要があろう

 倒語における 正順と逆順で別の言葉になるタイプは 単に「異なる言葉になる」というだけに 留まらない

 それは何か

 即ち 異なってはいるものの 双方の文に 何らかの 関連性がある という構成である

 如何なる関連性か

 安倍晋三が 内閣総理大臣に就任(第1次安倍内閣時代)した際の テーマとして 「美しい国」という 言葉が よく使われたが この言葉を 逆から読むと 「にくいしくつう(憎いし苦痛)」になるといった 揶揄も 聞かれた

 変化球だが 元号「明治」が 発表された際 明治を「治・明」と逆転し 「おさまるめぇ」と呼んだのが 当時 流行したのだと聞く

 倒語に限らず このような 言い換え 逆転といった 操作によって 皮肉や暗示を 表現する事は 言葉遊びにとって かなり 常套的手段と言って良い

 このような 元の言葉に対する 皮肉 揶揄 もしくは対義 といったものも まさしく 関連性を持った倒語である

 しかし なんという事か! このような形で 関連性を持った倒語 というものすら ほぼ作品としては 恵まれていないのが 現状なのだ

 いやいや まだ望みはありますぞ

 関連性という枠組みを より広範にすることで 更に抽出されうる モデルがあるではないか

 つまりは 何らかの展開の前後を言い表したもの とでも言おうか

 加えて言えば その仕組みを 非常に解り易く 提示する方法は 会話調となっている もの つまりは 相対する語り手の それぞれの内容が 倒語で成立している場合を 指すケースこそ 関連性を保持する倒語の最単純モデルとなろう

会話調倒語

「団体かな」  (だんたいかな)
「中、居たんだ」(なかいたんだ)

「ノーネクタイか?」(のーねくたいか)
「買いたくねーの!」(かいたくねーの)

「彼が世帯主だ」 (かれがせたいぬしだ)
「出し抜いた倅か」(だしぬいたせがれか)

「与党案アウトや!」(よとうあんあうとや)
「野党案アウトよ!」(やとうあんあうとよ)

 このような 正逆順において何らかの関連性を持つ倒語の例は 極めて少ないものの この点は 回文では決して 成立し得ない まさに倒語独自の技法たる威厳を 強く象徴している

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 駕籠真太郎『反転世界』では 2種類のストーリーが 同時に進行し
対応するコマごとの セリフが 倒語で展開されている

 内容も 雰囲気を一転させて 表裏性を描いた 快作である



 「本項は ”倒文”という タイトルであったはずです! 倒語については 十二分に 百四十四分に 千七百二十八分に 解りました! そろそろ 本題に 入っても 良い頃だと思います!」

 その意気や良し それでは 倒文に 参ろう

 ご覧頂いた通り ここまでは 倒語の解説だった

 倒語とは何であったか

 まとめると 「ある言葉の文字列を 逆順にして読まれるもの」 そして特に 言葉遊び技法としては 「ある言葉の文字列の 正順と逆順で 全く異なった(あるいは対義的な)言葉になるもの」 であった

 鍵となるのは 「文字列」!

 倒語において 逆順の対象となる単位は 即ち 文字だ

 基本的に倒語は 「ミルク」⇔「クルミ」などの かな文字単位 時には 「AKARI(灯)」「IRAKA(甍)」などの ローマ字単位 場合によっては 「脳卒中」⇔「中卒脳」などの 漢字単位 いわば 各文字ごとの分割単位で 操作がなされている(漢字単位の場合は『可逆語』という呼び名が独立して存在している)

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 それでは この 逆順対象の単位の枠が 拡大していくと どうなるだろうか

 You can cage a swallow, can’t you, but you can’t swallow a cage, can you.
⇒ 燕を鳥籠に入れる事は出来るよね、でも鳥籠を飲み込むのは無理だよね
(※swallowは「燕」以外にも「飲み込む」の意味を有する)

 これは 英語における回文の一種 ワードユニット方式と呼ばれるものであり 正逆順の対象を文字単位ではなく 単語単位に拡大させたもの となっている

 ワードユニットは 見てもお解りの通り その特性上 英語圏特有の言葉遊びであり 日本語にとっては きわめて困難な技法ではある

 敢えて日本語の場合を想定すれば 文節単位 という応急処置によって 辛うじて 一命を取り留められる形で残るだろう

だって 十分 あれば 十分 だって
(※ 十分⇒ジップン/ジュウブン)

処分 出来ない 最中 食ってる 人を もってしても 人を 食ってる 最中 出来ない 処分
(※ 最中⇒モナカ/サイチュウ)

 そして更に 正逆順対象の枠が 拡がると どうなるだろうか 自ずと 察することが 出来よう

 行き付く地点は 文章単位となる

 大変に お待たせした!

 「ある文章が 各文ごとに 正順と逆順になる事で 異なった 内容の文章となるもの」こそ 即ちこれ 倒文である



 冒頭でも 一応は触れたが 元来 「倒文」なる技法は 現時点で 存在が確認されていない

 この技法名に 相当する名称 それ自体も 見受けられなかった為 この名称は 本項において 便宜上 仮称として 付したものである事を 繰り返し ことわっておく

 さて この倒文 現状としては 非常に 作品数が限られている

 倒文の好例としては 以下のようなものがある

<結婚前>↓に向って読んでください
男:やった!待ちに待った日がようやくやってきたよ!本当に待ちきれなかったよ!
女:後悔してもいいかな?
男:ノー、そんなのありえないよ。
女:私のこと愛してる?
男:当然だよ!
女:裏切ったりする?
男:ノー、どうしてそんな風に考えるのかな?
女:キスして。
男:もちろん。一度だけじゃ済まないよ!
女:私に暴力を振るう?
男:永遠にありえないよ!
女:あなたを信じていい?
<結婚後>↑に向って読んでください

 詳しい経緯は 不明だが 少なくとも 2007年ごろには 既に コピペとして 広く出回っていた ネタではあるようだ

友「本当にごめんな」
俺「おいやめろって!」
友「妹が…妹が病気で…金がいるんだ…」
俺「大丈夫か?気をしっかり持てよ」
友「…ありがとう………」
俺「に…いや、10万でよかったら貸してやるよ」
友「本当にありがとう…あと、その…なんていうか…」
俺「ほら、晩飯の残りで良かったら食ってけよ」
友「ありがとう…」
俺「…なに言ってんだよ。それに、俺たち親友だろ?」
友「実は自殺しようと思ってて…お前がいなかったらもう…」
俺「そんなに気にすんなよ」
友「こんな夜中にごめんな」

 上掲の作品の初出は 2011年であると思われるが 「意味が分かると怖い話」系で 登場したネタである

 「意味怖」系で もう一つ

浮気をしたのが彼女にバレてしまった。
2週間、ずっと連絡不通だった彼女がやっと電話をくれて部屋に呼んでもらえた。
だけどお互い気まずくて無言のまま時間だけが過ぎていく。
謝りたいけど言葉が出てこない。
その重い空気に耐えられなくなった僕はトイレに逃げ込んでしまった。

自分への不甲斐なさと彼女への罪悪感に襲われ僕は頭を抱え込んだ。
ふと横を見るとトイレットペーパーが目に入った。
よく見ると「真美より」とペンで書いてあった。
なんだろう…、不安に駆られながらも紙を引き出すとそこには彼女からのメッセージが書かれていた。
メッセージは何行にもわたり、僕は1行ずつ噛み締めるように読んでいった。



真美より

あなたは私を裏切った それは事実
でももうすべてリセットしていいと思うの
あなたと過ごした宝物のような日々
それが私にとって大切だと気づいたから
なにもかもぶち壊してしまうこと
許されないことだもんね
あなたが浮気していたことは
全部忘れてしまえるわ あの娘と
あなたとの関係もこれで帳消しってこと
にしてあげるお互いつらかったよね 私と
あなたは 十分に苦しんだからこれから楽
しんじゃおうよ 一緒にね

隆史へ



読み終えた時には涙が溢れていた。
ドアの外には真美の気配がする。
早く出て行って彼女を抱きしめたい。
そして謝って、もう二度と悲しませないって約束するんだ。

 トイレットペーパーに書かれた 「真美から」から「隆史へ」に 掛ける文章

 トイレットペーパーの構造上 紙を伸ばす際は 最下段である 「隆史へ」から 綴られている 文章になる事となる

 かなりの手間と 脳細胞の労力を 費やした彼女を 思うと 感慨深いものがある

 これらは先ほどの 結婚前後のネタも そうだが 文章単位という点を セリフ単位 という形で 巧みに昇華させている


< ↓ 純愛>
僕らは結局離れてしまう
それも今回で最後だ
思い返すは君と過ごした九十九回の冬
寒空の下、ぎゅっと握り締める
じわり汗の滲んだ手を
ふって、僕は一歩踏み出すことにした
人混みの向こうから現れた笑顔の君を
待つ僕だけが知っている、これが百回目だと
生まれ変わる度にここで待ち合わせしてたんだ
僕らは必ず巡り合う
< ↑ 悲恋>

 文字通り 明確な 文章単位の 正逆順で 構成されており 恐らくは 倒文として 最も 正統派と言える 作品である

 ここにおいても 「正逆順によって意味が正反対になる」操作が 仕組まれている事 一目瞭然だ

 倒文においては 倒語に比して その内容は 圧倒的に ”正逆順が対義的なもの”で 覆いつくされている

 何故 倒文は このように いわば”正逆対義調”に なり易いのか

 一因として 考えられるのは ズバリ 言ってしまえば その方が 創り易い からである

あっ幼女じゃないか!!
ん?ナンカ違うぞ……
なんだ大福か

 最単純モデルとして 上の3行型で 見てみよう

 2行目の 「ん?ナンカ違うぞ……」が その前後の文を 切り替え・分岐表現に なっている事 お気付きだろうか

 前記の作品例の一文から 引用すると 「それも今回で最後だ」や 「そう思っていたけれど」「なんてもう言わない」が 典型である

 これにより必然的に その前後に位置する文は 対称的(対義的)な内容と なっているはずであり つまり長編化は この操作を 連鎖的に 行なう事で 成り立たせる事が 可能となる

 このような仕組みの為 正逆対義調な 倒文が 多くを占める訳である 

 とはいえ これは単に 操作の ほんの一例であるに 過ぎない その事 留意して頂きたい

 何はともあれ

 倒文は 近年 徐々に その文学的才能 かつ 技巧的好奇心を 奮い立たせる人々によって 普及の兆しを 見せているようにも思える

 そんな中 画期的な 倒文が 投下された

幸せになりたいの。
嫌よ、貴方と別々に
なんて…そんなの私
じゃないから。一生
私の愛する人は貴方
だから、おねがい。

 この作品の 卓抜たる所以は 「各行の字数が揃えられている」点にある

 これまでのケース 即ち 長短まばらともなる ”一文”という区切りではなく 字数が一定数に制御された ”一行”という区切りで 倒文が成立している この事が 非常に重大なのだ

 当作品を よく見ると 実際は 各一文ごとが 単語の断絶(例えば「貴方」の単語が末尾に「貴」で次行の頭に「方」と改行されているなど)をしている訳ではなく ある程度一文として 成立している

 それを 字数揃えで 収めており あたかも 全体的に 連なった文章として 見せている という訳だ

 要領で言えば これまでの倒文の操作と 差はないのだが 一行分の字数を揃えることで 全体を一つの 段落的見映えとして 整った形で 構成して見せた点は 実に 巧妙な手腕と 言わざるを得ない



 倒文は 傑作が目立つように 思われるが それは 作品の絶対数が 極めて少ない事に 起因している

 ましてや 倒語に至っては 既に言った通り 回文の前座の如き ポジションに 押し止められている 有様である

 言語遊戯の下の平等

 この現状を打破するには 各人の創作力に 委ねる他ないだろう

 以下に 倒語・倒文の設問様式を 敷いた

 わざわざ 敷くまでもないような 設問内容ではあるが 段階は 踏んでいる為 徐々に 技巧向上を 目指していくと 良いだろう

 勿論 創りたいと思えた 設問から 手を付けても構わない

 大切なのは 創る事 これ 言語遊戯精神の 濫觴なり


【問】10字以上の異なる意味となる倒語を作りなさい

【例】
怪人炊いた飯、見掛け倒しの米だ。
(かいじんたいためしみかけだおしのこめだ)
   ⇧ ⇩
(だめこのしおだけかみしめたいたんじいか)
駄目、この塩だけ噛み締めた異端児以下。
【例】
史学科の知人の所見が現実的理論
   ⇧ ⇩
論理的実現が見所の人知の科学史
(※漢字表記のままの倒語)


【問】10字以上の正逆順で関連性・展開性を持つ倒語を作りなさい

【例】
大歓迎!品数では宝庫の低価
(だいかんげいしなかずではほうこのていか)
   ⇧ ⇩
(かいてのこうほはでずかなしいげんかいだ)
買い手の候補は出ず悲しい、限界だ


【問】二字を一単位とした倒語を作りなさい

【例】
泣いていたよ、足が痛い
(ない てい たよ あし がい たい)
   ⇧ ⇩
(たい がい あし たよ てい ない)
大概、明日予定無い


【問】一文節を一単位としたワードユニット方式の倒語を作りなさい

<買い物前>
乗ったバス急いで降り、雨模様見ていた。近くで漫画を買った。
(のった ばす いそいで 降〔お〕り あめ もよう みていた ちかくで まんがを かった)
   ⇧ ⇩
(かった まんがを ちかくで みていた もよう あめ 降〔ふ〕り いそいで ばす のった)
買った漫画を近くで見ていた模様。雨降り、急いでバス乗った。
<買い物後>


【問】3文以上の会話式倒文を作りなさい

【例】
< ↓ 幽霊誤認説>
「私幽霊を見たんだ!!」
「私も見てみましたがアレは違うと思います』
「生きてる人間だとは思えなかったけれども」
『そんな事はありませんよ』
「あの人影は見間違いだったのだろうか……」
< ↑ 幽霊実在説>


【問】5文以上の倒文を作りなさい

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【例】
< ↓ 絶望に打ちひしがれる>
生きようと思う
でもそれは過去の話
全てが無駄に見えた
それで良いのだろう
もう少し頑張ってみようか
そう思ってはいたが
諦めは付いた
< ↑ 絶望から立ち直る>


【問】一行同字数となる一段落式倒文を作りなさい

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【例】
8×11マス
< ↓ 宗教妄信者に告ぐ>
眼を覚ますべき!
改めて己を見直し
神や仏の霊性など
妄信してはならず
科学こそ進歩だと
いう信念を持って
世界を理解すると
同時に人間として
相応しい在り方と
見識を胸に抱いて
この身に誓おう!
< ↑ 科学妄信者に告ぐ>

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