“障がい”は個性じゃないけれど。全盲のやんちゃボーイ「バズ」
障がいを持つ猫をお迎えする際に考慮することを考えるきっかけをくれたのが今回の猫、“バズ”だった。
バズは先天的に目に障がいを持っている。しかし、そんな障がいをもつバズだからこそのかわいさに、ファン心理をぶち抜かれ、「うぅ、、」と悶えつつ文字を起こしていました。
今回保護猫シェルターQUEUE代表の松本さんから伺った話を、以下でまとめています。
マンションに迷い込んだ先は。
―― 模様はハチワレで、推定1〜3歳ということですが、年齢ってもう少し具体的にわかりますか?
一応、推定3歳ということでやってます。かなりアバウトなんですが。
―― その「やってます」という表現、よくわかります。「そういうことにしてます」ってことですよね。
病院でもそのまま「推定推定1〜3歳」と伝えられて。きっと約1歳ってことにしておいたほうが譲渡も決まりやすいんだろうとは思うのですが、個人的に1歳には見えず、3歳弱くらいかな?と思ってます。
―― なるほど。ありがとうございます。neco-noteで、バズは「先天性で目が見えない」と記載がありますが、これはどんな様子ですか。
猫専門の眼科の受診はしておらず、かかりつけの動物病院の先生に診断を出してもらっている状況です。なので、詳細はわかりませんが、先天的に眼球が小さい「先天性小眼球症」だろうと診断されています。
―― じゃあ、もう生まれた時から目が見えていない?
はい、そうですね。
―― そうすると「よく生きてるな〜!」って思いますね。元々バズは野良ですか?
一応、外にいたところを保護されました。ただ、保護当時の状態から見るに元々野良猫として生活をしていた様子ではないと思っています。
保護主の方がマンションに住んでいる方だったんですが、おそらくバスが目の見えないまま外を歩いていて、知らないうちにマンション内に入ったんだと思うんですね。そこで、保護主さんがバズを発見し、保護したのち、QUEUEに連絡をくれました。
保護当時はそこまで痩せていなかったし、ノミやダニが全然体にいない。体も一切汚れてなくて、肉球がきれいだったんです。何より、人馴れしていたので「これは、迷子か捨てられたんだろうな」と思いました。
警察や愛護センターへの届け出、マイクロチップの確認を行なったのですが、飼い主さんを見つけることはできませんでした。
―― 状況的には、どこかの家から出てきたパターンも考えられますよね。
そうだと思うんですけどね。でも、目が見えないなりによく外で生きていたなと思います。
―― 本当に目が見えないと、いろんなリスクがありますもんね。無事でいてくれて何よりありがとうと思いますね。
そうなんです!本当に無事でよかったです!
―― 「首が右に傾いてる」のも保護当時からですか?
保護当時は今よりもっと傾いていて、ずっと首をかしげている様子だったんです。最近、ちょっとずつだけど真っ直ぐになりつつあります。
―― リハビリができてるのかも。今後ももう少しよくなるかもしれないですね。
真っ直ぐ歩くこともできるようになってきたし、体重も増えてきたのでよかったです。
―― それが一番安心しますよね。「とりあえず食べて!」ってお母さんに昔言われてたようなことを、まさに自分も猫たちに対して思います。
わかります、わかります。ご飯食べるのが一番大事ですからね。
「全盲のやんちゃボーイ」こと、バズ
―― このシェルター(QUEUE)にきたばっかりのころってどんな様子でしたか。
元から人馴れはまったく問題なかったんです。ですが、目が見えない上に知らない環境に来たので、最初の頃は前足で探り探り歩いている様子でした。部屋の中をあちこち登っては落ちてを繰り返していたので、こっちがバズから目を離せなかったですね。
「何か怪我を防ぐような対策を部屋にしたほうがいいかな」と考えていたら、バズはあっという間に環境を把握してくれて。部屋の配置を変えないようにするといった工夫はしてますが、それ以外は特段気にかける必要なく生活していますね。
―― 目が見えないので空間の把握に時間かかったということですね。
シェルターにきた当初は、人間でいう白杖みたいな感じで前足を使って部屋の中を歩いていました。
そうした動き方が、いかにも「身体的に何か障がいがあるんだろうな」という様子だったので初めこそ色々と不安ではあったのですが、今はそれもなくなりました。気付かない人は本当に気付かないくらい元気です。
―― あぁ〜。言われてみれば、僕もバズに以前会ったとき、障がいのことを伝えられるまで気付かなかったです!
顔をよく見れば少し目が小さいのがわかると思うのですが、寝てると勘違いする人もいる程度ですね。猫に触れ合う機会が多くない人であれば、他の健常な猫と変わらないように見えると思います。
―― 行動がしっかりしていると、身体の障がいがあることに気付かない場合もありますよね。
ダメだとわかっていても、腹は減る。
―― バズの空間把握能力はすごいですね。なんか他にバズに関してのエピソードとかってありますか?
目が見えないのに、めちゃめちゃゴミ漁りが好きですね(笑)
―― きっと鼻が発達しすぎてるのかもしれないですね。
そうですね。真っ直ぐゴミ箱に向かって、一切悩むことなく頭でゴミ箱の蓋を頭や鼻先を使って開けて体を突っ込むんです(笑)。
でも、かわいいのが「バズ!!」と名前を呼ぶと、すぐにやめてくれるんです。
―― お〜!ちゃんとわかってるんですね。
ちゃんと悪いことしてるって自覚があるのが、またかわいいです。バズは食欲が旺盛なので、少しでもご飯の匂いが残ったものをゴミ箱に捨ててしまうと、ゴミ箱にダッシュします。ついつい食欲に勝てなくてゴミ箱漁りをしようとしちゃうんですけど、名前を呼ぶと「あ、やっぱりだめだよね……」って感じで、すぐやめてくれます。
ここが、バズの「めちゃめちゃかわいいな〜」ってポイントですね。
―― その“かまちょ”感がたまらないですね〜!
そうなんですよ〜!バズは本当に甘えんぼだし、かまってちゃんだし、かまってほしくてイタズラしちゃうんですよね。あと、夜は一緒に寝てくれますね。
―― たまらないですね。
電気消して、「さぁ、寝よ〜!」って思って毛布をかぶると、バズがダッシュして腕と脇の間に入ってくるので、腕枕状態で一緒に寝ます。
―― 目が見えてなくても、電気が消えたとか、寝ようとしてるとかわかるんですね。
わかりますね〜!寝る前の雰囲気とかで判断してるのか、なんなのかわからないんですけど、毎晩ちゃんと来てくれます。
バズと一緒に暮らしている「姫太郎」も要チェック🐈
―― 他には何かクスッと笑えるようなエピソードありますか?
それこそ、ジャンプするタイミングをミスっ落っこちたりとかしますよ。そもそも運動神経もあまりよくないので(笑)。目も見えない、運動神経もそんなにない状態なので、おっちょこちょいな出来事はよくあります。
―― おっちょこちょいなのもお話聞いてて感じたし、好奇心も旺盛なのかなとも思うのですが。
音の鳴るおもちゃがとにかく好きで、ボールの中に鈴が入ったおもちゃをひたすらひとりでよく追いかけ回してます。誰かと遊ぶってよりは、ひとりでボールで遊んで、ケージの下にシュートして終わるという遊びをしてますね。なので、結構活発なコですね〜!
―― 他の猫とはどんな関係で過ごしてるんですか?
精神年齢が低いので、子猫から好かれていますね!それにバズ自身もめんどうみがよくて、どちらかというとお兄ちゃん気質というか、年下のコには優しくしてますね。
同年代より上のコとはそこまで仲良くないんですが、同年代ぐらいまでのコとは結構有効的な関係を築けていますね。
―― 地域のお兄ちゃん的な存在みたいですね。
「公園で遊んでくれるお兄ちゃん」みたいなタイプかもですね。
「全盲のバズだからこそ、子供たちに触れ合ってほしい」
―― バズは猫たちとよく遊んでくれるということでしたが、人間とも遊んだりしますか?
はい、人間ともよく遊んでくれます。レーザーポインターは見えないですが、猫じゃらしとかは、風の動きなどで動きがわかるみたいで一緒に遊んでくれますよ。
―― じゃあ、子供のいるご家庭でもバズをお迎えしても大丈夫そうですかね?
たまに危なっかしいところはあるので、あまりに幼すぎるお子さんがいるご家庭よりは、小学校高学年くらいのお子さんがいるお家であれば平気だと思います。
―― こういう障がいなどのハンデを持っている猫の場合、リスクを考えて新しいご家族は大人の人に限定する団体なども多いイメージです。しかし、バズの場合は問題なさそうですね。
そうですね。もちろん新しい環境に慣れるまでの期間は、しっかり見守ってあげてほしいです。それ以降であれば、仕事の7〜8時間程度のお留守番は問題なくできると思います。日中は基本的に寝ているので、そんなに動きも気にならないかなと。
もちろん、新しいご家族が大人でも全然いいと思うんですが、子供のうちにハンデを持ってる動物と一緒に過ごす経験って、子供が学ぶものも多いと思うんです。なので、バズみたいに幅広く適用できるような猫こそ、あえて子供のいるお家に迎えてもらったほうがいいんじゃないかとも感じます。
―― 情操教育的な意味でも、いい経験になりますもんね。
目の前でハンデを持ってる人や動物に接する機会があったときに、バズのような猫と触れ合った経験があるかないかで取れる言動も変わってくると思うので、そういう視点でも大事だなと思います。
「障がいは個性」なんて言い方はしない。障がいは、“障がい”に変わりないから。
いっせーの!でスタートする徒競走で、1人だけレーンの上のハードルの数が違ったり、スタートラインが他の人よりぐんと後ろだったりする。
この事実はどうやっても変わらない。しかし、バズには、他とは違うレーンを走ってるなんて気付かせないくらいの持ち前の能力がある。
自分とは違うレーンを走る人と並走し、隣のレーンをまじまじと見ることで、はじめて“障がい物”がどういうものか知ることは貴重な経験だ。
こうした隣のレーンを見つめる能力は、共感力や他者への想像力とも言われる。と同時に、これらは全て技術でもあると思う。
“障がい物”すらもおもちゃのように楽しんでしまうバズとレーンを並走したい。そうして、共感力を一緒に鍛えたい。こんな経験から生み出された日々は、きっと人生において変え難く尊いものになるだろう。
バズのプロフィールはこちら🐈
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