ミッドサマー、ここに注目すると怖くない(かもしれない)

※この記事には映画のネタバレが含まれます。ガチでだめな人はこんな記事を読んでないでさっさと観てください。 

今更ながらミッドサマーを観ました。とても面白かった。
感想記事や考察記事が山ほど投稿されているので、今更自分が書く事なんてなんもないわなと思いましたが、中学時代にルーン文字やヴァイキングにはまった思い出がある者として、どうしても記事を作らずにはいられませんでした。
↑のように書きましたが、一応まだ観ていない方に対しての配慮しようみたいな気持ちがあるので、各見出しにおおざっぱにネタバレの有無を書いています。()の表記を参考にしてください。

※にゃんそんは歴史や宗教、民俗学の専門家ではありません。「この人完全に自己満足でやってる」という事を踏まえてゆるっとお付き合いください。

※なおこの記事では、ルーン文字をなるべく縁起の良い方に解釈していきます。


元ネタ?ウプサラ異教神殿の祭祀の話(ネタバレほぼ無し)

※この項では不確定な情報を扱います。


 他の考察でも言及されているように、11世紀ブレーメンのアダムは『ハンブルク教会史』の中で「ウプサラにオーディン、トール、フレイの三神像を祀った異教神殿がある」と語っており、さらに「そこで9年ごとに行われる大きな祭祀で人や動物が神殿近くに吊るされ、そこには供物奉納用の泉もある」と残しています。ミッドサマーはこれをモデルにしたのでは……?ともっぱらの噂なんですが、資料によるとこれを残したアダム自身はスウェーデンを訪れた事がなく、デンマークでの噂話が元になっているとか。本当のところはわかりません。11世紀のことだし。
 実際ウプサラでそんな神殿址が見つかったのか、というと「それっぽいものは見つかってはいるものの、ひょっとしたら別の神殿かもしれないし、住居の一部なのかもしれない」との事で、なんともいえない感じです。調査が進めばまた明らかになるかもしれない事ですが、そういう想像の余地があるところにテーマを持って来るってなんか良いですよね。


 そういえば11世紀は北欧にとってどんな時代だったのでしょう。まず10世紀終わりごろからデンマークはスヴェン双叉髭王が治め、11世紀にはクヌート大王の時代となります。そうですね。ヴィンランド・サガです!!(まだ読んでない人は読んでね)

 この頃デンマークにとっては現在のスウェーデンはまだ『スウェーデン』ではなかったそう。資料によるとクヌート大王の時代では「イングランド征服後この地方を支配するためにイングランド王子を送り込んだところ、すぐに殺害されてしまった」との事。デンマークとは敵対関係にあったようです。これはブレーメンのアダムが生まれる前の出来事だと思われますが、それを踏まえて「異教の祭祀はデンマークでの噂説」を考えると、当時敵対関係にあったスウェーデンの土地の人々を野蛮な民族扱いするための印象操作というものもあったのかな……と考えてしまいますね。さらにクヌート大王の時代はヴィンランド・サガでもおなじみ!デンマークにキリスト教が入り、この広まりと共に国土を広げている時代でもあります。キリスト教化が進んだデンマーク人と、キリスト教やノルド以外の血筋を受け入れたくない現地人の衝突、みたいなものが見えてくる気がしますね。
 ホラー的には「ここまで歴史的背景を想像してしまっては不気味さが薄れちゃうじゃん!」というところですが、今回は「ここに注目すれば怖くない」なので頑張りました。どちらかというと歴史苦手なのに……

次の項目から微妙なネタバレが入ります。


キリスト教的に見て不気味かもしれないポイント(微ネタバレ)

 正直「別にキリスト教じゃなくても引くわ」だと思いますが火葬シーンを中心にみていきます。 

まず舞台であるスウェーデンの基本的な情報を簡単におさらいします。

スウェーデン王国
位置:北ヨーロッパ
宗教:大部分がキリスト教
ルーツ:北方ゲルマン人
『福祉大国』や、ノーベル賞の主催国として有名です。ボルボ、IKEA、H&Mなどの発祥の地。親しみやすい印象のテキスタイルや長く愛されるデザインなど、家具やファッション方面でもファンの多そうな国です。

 にゃんそんはキリスト教について一般教養程度の知識しかありませんが、それでもなんとなく「キリスト教の考え方では土葬がおすすめ」というイメージがあります。『新約聖書のヨハネの黙示録』より、遺体を焼いてしまうと最後の審判の時を骨粉状態で迎えるかもしれないわけですよね。「あっ、わし粉じゃったわ」ってなるかもしれない。それは大変だ。(ただ土葬は土地の確保が必要ですから、宗派により様々な埋葬方法も取り入れられており「もう土葬一択と言えなくなっている」という事も把握しています)
 これを書いている私は日本人で火葬が日常的ですが「自分たちが土葬がメインの国の出身者だったら」と想像すると、遺体を焼く行為は信じられないかも。(それにしてもバーベキューみたいな焼き方は無いですけどねw)また差別的な見方になってしまいそうで申し訳ないんですが、もし自分がもっと彼らに近い人種だったら、自分達とほぼ変わらない見た目の民族が理解できない行動をとっているという事にとてつもない異様さを感じるかもしれませんね。実際アメリカに居る時にペレがこんな風習のある村の出身だったなんて想像できないと思いますし、逆にこれが明らかにエキゾチックなキャラクターに誘われての旅だったら「そのくらいの僻地だったらショッキングな風習があるかも」と身構えさせたような気もします。

 登場人物について注目すると、この大学生達からは特に敬虔なキリスト教徒感を感じません。別に火葬だからと言って衝撃を受けてるかどうかはわかりませんが、遺体をあっさり扱っているように見えてるかもしれません。遺体を火の上にセットするところはたくさんの村人が見守っていますが、遺骨を取り出す時は数人しかおらず、また遺骨も壺などには入れず先祖の木に撒くスタイルです。

 先述のとおり現在キリスト教でも合理的な宗派では火葬が増えてきているとの事ですが(土葬はスペースの問題があるため)ホルガ村の火葬はどちらかというと、キリスト教以前の時代の火葬の考えと近いのではないでしょうか。作中にも北欧神話の巨人の名前やルーン文字が登場している事から、なんとなくそう感じます。

 キリスト教以前の時代の火葬の考え方は「死者の魂は風に乗り、オーディンの支配するヴァルハラへ迎えられる」(※)というもの。
 遺体が焼かれる前ではまだ魂が宿っているとし、火に包まれ煙となったところで風に運ばれ旅立って行く。そのため、この遺骨にはもう魂は宿っていないとされているのかもしれません。だから村人総出ではなく選ばれた数人で遺骨を撒く、という事なんでしょうか。いやーわからんな~。
ヴァルハラは本当は勇敢な戦士の魂の行先なのですが、ゴチャゴチャしてしまうのでここではとりあえずヴァルハラとしています。

 しかしこのキリスト教以前の時代の信仰というのも実は一枚岩ではなかったようで、他の宗教でいう神殿のような統一された造りの宗教施設もあまりなかったようです。なので、ホルガ村のような解釈の村があってもおかしくないですよね。


スウェーデン語のお話(微ネタバレ)


「ビクスミンディグ(byxmyndig)」 
 作中では「セックスができるライセンス」と表現されているため「ゲッ!セックスするのにライセンスが必要なのか?!」「そんなものにもコミュニティの支配が?!」という印象を受ける部分ですね。
 こちらのスウェーデン語の意味を調べてみると「合意年齢」だそうです。なんかそう書かれると馴染のある言葉に感じるかもしれない。日本の社会で言うところの「初潮が来たから赤飯炊いた」みたいなものに通じるかもしれませんね。(実際これも不快感を感じる方がそれなりに居る風習だったりしますが)そういう前時代的な気持ち悪さというか『母体として扱われる女性』の息苦しさのようなものを感じますね。


 ここで簡単な言葉のお話です。北欧のデンマーク、スウェーデン、ノルウェー、アイスランドの言葉はとても似ています。学生時代にちょっとだけデンマーク語を勉強していた身からするとなんとなく懐かしく感じました。以下、作中に登場するスウェーデン語で日常的に使えそうな奴。
※北欧語は読み仮名をふるのがとても難しい言語です。一応ふってますが、あてにしないでください。

「乾杯!(Skål)≪すこーる≫」
綴りは微妙に変わる事もありますが、デンマークでもノルウェーでもアイスランドでも「すこーる!」と言えば「乾杯!」です。音はみんな一緒。なんとなくこの辺の国の人達の同じルーツ感とか、感じますよね。

「ありがとう(Tack)≪たっく≫」
これも綴りは変わっても北欧4か国読み方みんな一緒。

 ということで、ここまで覚えれば北欧に行ってもとりあえず乾杯できるようになったという事ですね。北欧の砕けた挨拶は「はい!」でだいたい通じるとおもいます。なので……

酒持った人に手を振られたら「はい!」
手招きされ、酒を貰ったなら「たっく!」
周りが盃を掲げ始めたらタイミング合わせて「すこーる!」
ワッハハハ!!


たぶんそのあとはみんな何言ってっかわかんないと思うんですが楽しいと思います。がんばって!

※ちなみにデンマーク語で「酔っちゃった」は「やぃばーふる(jeg var fuld)」ですが、google翻訳でスウェーデン語&ノルウェー語に翻訳してみてもほぼほぼ一緒でした。すごっ


北欧神話と9(微ネタバレ)

 北欧神話の世界樹・ユグドラシルはアースガルド他9つの世界に木陰を落とし世界中に根を張っているといわれています。9という数字に縁のある世界観ですね。
 実はルーン文字もこの「9」に縁があります。9つの枝で作られた格子を使っても表現する事ができるのです。

枝のルーン2

このような並びをイメージしてもらうと良いかんじです。

枝のルーン1

ね、こんな感じ。

 でもなんで「9」なんだろう。この格子は参考図書に倣って作ったものなのですが、見てください。縦とナナメに3本ずつ。3つのまとまりが組み合わさって3になっている形です。
 もしや、「3」を3回繰り返す事に魔術的な意味があり、それが「9」に繋がっている……?

 三角形の建物については「オーディンの槍・グングニルを表しているのかも」という考察も読みました。「三角形」「3」という数自体にも、もしかしたら何か意味があったのかもしれませんね。
 ユグドラシルは大きく分けて3区画だそうですし、北欧神話の運命の女神ノルンも三人一組。それに素数ですしね。

 そういえばダンスバトルのスタート時も女性たちが三重に輪をつくっているところからのスタートでしたね。

次の項目から通常版ラストシーンまでのネタバレが入ります。



メイポールダンス(ネタバレ)

 ミッドサマーの一番楽しそうなシーン、メイ・クイーンを選ぶダンスバトルについてです。

 「音楽に合わせてポールの周りをぐるぐる回りながら踊る。ずっと同じ方向と思いきや突然止まって反対回り」これで次々と脱落者が出ます。時計回りと反時計回りを激しく繰り返す、というのはかなり大変ですよね。「ひょっとしたらこれを読んでいる方の中にも同じものを思い浮かべている方がいるかも」と思うのですが、日本にも「順逆」の回転を激しく繰り返す舞があります。巫女の舞や『将軍舞』と呼ばれる神楽です。
 詳細は気になる人だけ検索してもらうとして、この『将軍舞』という神楽は幻の舞という事でNHKの特集で取り上げられていたものです。激しい回転を繰り返した末に演者が失神し、『神がかり』となるそう。この『神がかり』は神託を得るためのものではなく、邪悪を祓うための『神がかり』だそうです。なんかちょっと近くなってきた気がしますね。(※古代日本の巫女さんも激しい旋回運動でトランス状態に突入したそうです)


 ではメイポールダンスに戻りましょう。順逆回転を含む激しいダンスを繰り返し、参加者がバタバタと倒れます。そして勝ち残った者が女王となり、最後の生贄を選定をするのです。この最後の生贄が熊の皮を着せられ、最も深き淵へ追放される『邪悪』となります。つまり、女王には『死の世界へ追放すべき邪悪な精霊』が誰に宿っているか見破る力が宿るとされた、という事でしょうか。もしそうだとすると、遠く離れた国になんとなく共通するものを感じますね。たのし~

北欧と木(ネタバレ)

 先祖の木にアッテストゥパンで亡くなった村人の遺骨を撒いていましたね。ペレも「先祖代々の墓」と説明しています。村の建築物からも読み取れますが、北欧は木造建築が非常に多い地域です。もちろん船も木造です。資料によると、「アイスランドに移りたてのノルド人達がものすごい勢いで森林を伐採しまくったところ、あっという間に森林破壊が進んでしまった」とありました。そして北欧神話の世界の中心は世界樹・ユグドラシルであり、ルーン文字のほとんどが木や植物の意味や属性を持っています。作中からもこういった背景からも、北欧の人達にとって木や植物は実用面でも精神面でも欠かせないもののような気がしますね。作中にも木や森、ハーブ、花など植物がたくさん登場しており、非常に温かみを感じます。

 ラストシーン直前の「痛みや恐怖を感じない」というシロップなんかも全然迷信だと思うんですが、それも信じている様子がみられます。生贄達は草や木で飾り付けられたり(飾りつけというか一体化してるものもあるけど)草木に精霊的な力を感じているのかも。

 クリスチャンはガチで動けなくなっていましたが、他の考察等でも取り上げられているように組み合わせれば麻酔薬となるような植物もあります。そういった伝統的な麻酔薬とおまじないを使い分けていると考えると、「昔魔女や魔法使いと言われた人達もこうだったのかなあ」とイメージしやすいですね。

 それでは、ちょっと触れましたので「痛みや恐怖を感じない」というシロップについて考えていこうとおもいます。そのシーンを振り返ると「イチイの木から採った」と言っていますね。イチイの木をルーン文字で表すと複数ありますが代表的なものは「ᛇ(Eoh)」です。このルーンには目的や活動の他に守護や避ける事などの意味もあります。この状況から読み取るなら「恐怖や痛みを避けるお守り」という事ですね。彼らにとっては普通に痛いし怖かったはずなんですが……。私はここのシーン、表現が難しいんですがスッキリしたというか「常識が通じない奇妙な村」から「普通の世界」に戻って来れた場面のように感じています。
 ホルガ村全体を支配していた魔術的というか呪術的な雰囲気が、ウルフとイングマールの恐怖生命の不可逆性を悟った表情で払われます。「生きたまま炎で身を焼かれる事は痛いし怖い、死ぬのは恐ろしい」我々にとっては当然ですが、ホルガ村の村人にとってはそうではありません。命は循環しますし、古くから伝わるおまじないも薬草や儀式も、ルビ・ラダーのメッセージも全て正しいはずなのです。イチイの木から採ったシロップを貰ったではないですか。なのに恐怖心がある。痛みもある。なぜ効かない。「儀式のためのシロップを間違えるはずがない」という事は彼らが一番知っていると思います。死の直前に彼らは全てを悟り、絶望した……ように見える場面ですよね。魔法も呪いもなければ、新しい命として村に戻ることもたぶん無いんだ。だとすればアッテストゥパンはなんと恐ろしい儀式だったのか……というところまで考えた顔かと言われるとちょっとわからないんですが、もしそういうニュアンスが含まれているのだとしたら「もうどうしようもないところでこんな事に気付いてしまうなんて」と切なくなりますね。
 特にウルフは先祖の木のシーンで声を荒げたり(他の村人が彼に気圧されて静かになってるせいもあるかもしれませんが)「信心深い村人」という印象を受けやすいキャラクターです。そんな彼に「死の間際に『村の伝統』を疑わせる演出」だとしたら残酷だなあ~

次の項目からディレクターズカット版ラストシーンまでのネタバレが入ります。



北欧神話との結びつき(ディレクターズカット版ネタバレあり)

ユミル 
 村に入ったばかりの場面で出会う赤い顔のおっさんことオッドが自身のワンピースのような装束を「ユミルを讃える服」と説明しています。さっそくでてきました。
 ユミルは北欧神話では『原初の巨人』とされ、全ての巨人や神々、人間の住む世界はこの巨人から生み出されたとされています。北欧神話が好きだと最初からニコッ!としてしまいますね。

川の儀式 
 ディレクターズカット版に追加されている儀式の中で登場する『最高の宝と実り多い木』を捧げてもなお空腹だ、という女神は一体何者なのか。アッテストゥパンは72歳になった村人が自らの命を新しい赤ん坊に与えるという儀式なので、私はこの川の儀式で「空腹だ」という女神は冥界のヘルなんじゃないかな~と感じました。北欧神話の内容ですが「ヘルは死者を生者へ戻す事ができる」というエピソードがあります。
※古代北欧での死者の行先は2種類あるとされています。ひとつは前の項でも登場した、勇敢な戦士の魂が招かれるというヴァルハラ。そしてもう一つがヘルが支配するといわれるヘルヘイムで、老衰や病死した者の行先とされています。

 アッテストゥパンで亡くなった村人たちは火葬され煙となる事でヘルの下へ行き、贈り物を捧げる事で赤ん坊として蘇ると考えられていたのかな?ただアッテストゥパンの場合は見た感じ自死なんですが、彼らは戦士ではないの事と、72歳で命のサイクルを終えたと考えるとニュアンスは自然な死に近いのかな…?

 ペレが生まれる前から燃えている火がこのお祭りやアッテストゥパンで亡くなった村人の火葬に使われているようなので、死者の国とのつながりを感じます。「精霊よ、死の世界へ還れ」この火でもって浄化、いや、この火で焼かれた者は死者の国へ行くという考えられているのかも。


ールーン文字の読み解き編ー


席になってるルーン文字(ディレクターズカット版含むネタバレあり)

 もう様々な考察で語り尽くされていますが、ルーン文字になるように並べられたテーブルだったり席だったりを見てみます。

「ᚱ(Rad)」
 ディレクターズカット版で最初に登場する座席です。旅や移動、忠告などを意味するルーンだったような気がします。この村のキーワードである『巡礼』と繋がっていそうですね。

「ᛟ(Ethel)」
 
アッテストゥパンで旅立つ二人がここに座っています。彼らがこれから旅立つ意味も故郷に新たな命を渡すためでもあるので、意味を感じます。

「ᛈ(Peorth)」
 クリスチャンにおまじない飯が配られる場面での座席です。

座席のルーン1

 カメラに写っていたパーツを繋ぎ合わせるとこんな感じかな。という事で、「ᛈ(Peorth)」としてお話すると、意味は発覚とか開始などです。クリスチャン中心に見るならおまじないが動き出しています。マークの方はここで「見せるから」と誘われて連れ出され、ひどい目に遭いますよね。コニーの状況を詳しく話してくれる村人も登場しますが、こんなに人の良い村人として事情をお話してくれてるのにこれ全部嘘だったんだなあと思うと恐ろしいです。

「ᚣ(Yr)」
 ジョシュが居なくなった翌朝の朝食の席です。これはちょっと苦しいかな?こんな感じで考えてみました。黄色が長老です。

座席のルーン2

 ここを考えるのは非常に難しいですね。まずカメラが長老たちの席とクリスチャン達の列を映すだけなので全体を把握できません。それぞれのカットで映る画面端の様子から推測しました。まず長老が今朝の報告をするシーンの最も引いてる画面では、画面左側に横にのびている机と、カメラの寄りに伴って隣の列の人(横向き)が見えます。さらに寄ると画面右側に横席に座っている人の後ろ姿が見えます。一方、クリスチャン達の列の突き当りまでが移るカットからは左右、少なくとも画面右側には机が伸びてなさそうに見えます。これをヒントに考えて可能性があるのは「ᚢ(Ur)」「ᚣ(Yr)」。意味は、「ᚢ(Ur)」が変化や忍耐、「ᚣ(Yr)」が発見などなので、私は「ᚣ(Yr)」の方を推します。

「ᛁ(Is)」
 メイ・クイーンの宴の時の座席はシンプルな長い机です。明瞭だったり、流れを止めるものという意味や、障害という意味もあるそうです。ダニーに寄り添って考えるなら、他の村人たちがメイ・クイーンとなったダニーを祝い、喜び、「あなたは家族よ!」と暖かく笑いかける中、「クリスチャンは何もお祝いのコメントしてくれないのね。ペレなんか勢いでキスまでしたのに怒んないし」
 なんとなくクリスチャンが浮いてるような気分になったのは私だけでしょうか。

黄色い神殿の床
 これは厳密には座席ではないのですが、座席枠にします。生贄がそれぞれの場所にセットされてからの真上からのアングルを元につくった図です。歪みが気になる方申し訳ない、耐えてください。

黄色い神殿

ちょっと見辛いですが、5つのルーン文字が見えてきました。

「ᛜ(Ingwaz)」「ᛟ(Ethel)」「ᛝ(ing)」「ᚷ(Gyfu)」「ᛄ(Ger)」
 「ᛜ(Ingwaz)」と「ᚷ(Gyfu)」を足して「ᛄ(Ger)」と捉えてもいいかもしれません。フォントの関係でうまく表示されませんが、「ᛄ(Ger)」はグングニルを表すルーンとして公式の考察ページにも紹介されているものです。「ᛟ(Ethel)」についてはこれまでにも触れているので省略して、「ᛝ(ing)」「ᛜ(Ingwaz)」はどちらもアルファベットでは「ing」に対応するものなので、変形したほぼ同じものとして扱ってもいいと思います。変化などの他に火という意味もあります。火!!「ᛄ(Ger)」の要素を分解して「ᚷ(Gyfu)」の意味も生かすなら「火による贈り物」みたいな感じになりそうです。これじゃん……
 あとルーン文字関係ないですが、熊以外の生贄の配置が村人と外の人が向かい合うような配置になっていますね。(生贄の詳細な配置確認しようと思ったら試聴期限過ぎちゃったんで間違ってるかもしれませんが)たぶんこんなかんじだったような気がする。

黄色い神殿2

なんとなく木っぽい。苦しいかな?


見やすいところにあるルーン文字(ディレクターズカット版含むネタバレあり)

メイポールにある「ᚱ(Rad)」「ᚠ(Feoh)」
 富や存続という意味ですね。「実りの多い旅を」という縁起の良いものを感じます。

石板に書かれたルーン文字(9文字)

石板のルーン

9文字全部並べると長いのでせっかく区切られていますし、3つずつ見ていこうと思います。
「ᚷ(Gyfu)」「ᛉ(Eolhx)」「ᚷ」
「ᚷ(Gyfu)」は贈り物や交換、調和などの意味があるそうです。「ᛉ(Eolhx)」導く事や安定など。3文字を合体させると、「贈り物と引き換えに安定を得る」というところでしょうか。
「ᚱ(Rad)」「ᚱ」「ᛏ(Tyr)」
「ᚱ(Rad)」は旅や移動の他に忠告やメッセージを受け取る事等もあり、「ᛏ(Tyr)」は正しさや名誉、率直さなど。3文字合体させると、「巡礼や忠告は正しく、受け入れられるべきもの」みたいなニュアンスになりそう。
「ᚾ(Nyd)」「ᛈ(Peorth)」「ᚷ」
「ᚾ(Nyd)」には忍耐や義務などの意味があります。「ᛈ(Peorth)」は発見などの他に誕生などの意味もあります。「義務を果たす事で誕生が贈られる」とかそういう感じなんでしょうか。
 これら3つを合体させると「日々の安定を感謝し、神へ捧げものをするべし。聖典のメッセージや巡礼を受け入れるべし。これらの義務が果たされる事で(巡礼を終えた生命は)新たな命となり村に与えられる」
 詩のセンスが試される瞬間でしたね。恥ずかしいのでこの部分のコメントはやめてください。

「お前なんて読むの」ルーン(ルーンガルドゥル、バインドルーン)編
 「ルーンガルドゥル」「バインドルーン」とは複数のルーンが合体したものです。

ルーンガルドゥル

 上段は若者(18~36歳)の小屋に初めて入ったあたりでジョシュがノートに書かれたもの。
 「ᛖ(Eh)」と「ᛉ(Eolhx)」が組み合わさったような形に見えます。「ᛖ(Eh)」はパートナーシップや優しさ、信頼、旅などの意味があり、「ᛉ(Eolhx)」は安定など、なので組み合わせると「安定した旅路」もしくは「結婚へ導く」等でしょうか。そういえば結婚相手は長老が決めるとか言ってましたね。

 下段はラブストーリーのタペストリーにあった「なんだこれ」なルーン。もし図のように分解して「ᚾ(Nyd)」「ᛃ(Jeran)」なら……
 「ᚾ(Nyd)」義務の他に希望や試練という意味もあるようです。「ᛃ(Jeran)」は実りなどの意味を組み合わせて「達成される希望」のようなものになりそうですね。パワーあるな。ではそんな感じの組み合わせだと仮定してタペストリーを読んでみましょうか

 とある男性に恋をした少女は摘んだ花を枕の下に入れて眠ります。そこで見た夢のシーンで登場する8つのルーン
「ᛈ(Peorth)」「ᚱ(Rad)」「ᚠ(Feoh)」「ᚫ(Aesc)」
「ᛞ(Daeg)」「ᛟ(Ethel)」「上図下段」「ᚳ(Ken)」
 「ᛈ(Peorth)」は誕生や発覚など、「ᚱ(Rad)」は旅や忠告、行動など、「ᚠ(Feoh)」は富や存続など、「ᚫ(Aesc)」伝達や表現など、「ᛞ(Daeg)」は積極性や均衡など、「ᛟ(Ethel)」は故郷や家庭など、「ᚳ(Ken)」知る事や閃きなど
 ラブストーリーなので「ᛟ」は家庭や愛、「ᚠ」は存続の方向で読み取った方がよさそう。ここで登場する「ᚫ」「ᚳ」はなんとなく近い意味なような意味で書かれていそうな気がする。さらにラブストーリーで考えるなら「ᛈ」は愛の芽生えというところでしょうか。まとめます。

「『おまじないを実行する事で彼にも愛が芽生え、恋が叶うだろう』というメッセージが夢に表れます」

 こんな感じでしょうか?作文センスが求められる部分ですね……

 その後のコマへ進んでみましょう。
「ᛟ(Ethel)」「なんかサボテンみたいなやつ」
 このコマは「愛を実らせるためにやる事をやる」というニュアンスでしょうか。

その次のコマの「ᛟ(Ethel)」
 
ここの「ᛟ」は愛情や家庭に繋がるものとしての「ᛟ」のような気がします。(どうでもいいけどなんで金髪少女の陰毛が真っ黒なんだという疑問が見るたびに湧いてくる画像です。そこは金髪であって欲しかったけどイラスト的には金色の陰毛は見えにくいからアウトなんでしょうか……でもパイに入ってた陰毛金髪だったじゃん)

「なんかよくわかんないやつ」
 愛を実らせるためにやらなければならない事の実行編ですね。

そして「ᛞ(Daeg)」
 
「実行する」という事かなと。

「実食」

 ややっ、これはほのかに香る処女の経血の香り。そして、ムッ……この舌ざわりは?!間違いない、処女の陰毛!!このハリの強い毛質から生まれるジャリジャリとした食感……そして、その絶妙な細さ故に歯や舌に絡まり、取り除こうとすればどこかへ逃げてしまう!まさに恥じらう乙女のよう……マーベラス!

そういう事ですよね。違うかな?

ラストの「ᚠ(Feoh)」
 二人はいつまでもいつまでも幸せに暮らしましたの「ᚠ(存続)」!と思いました。めでたしめでたし。

 しかし、改めて見るとこのタペストリーはなんとなく漫画的に感じますよね。自分が漫画よく読むからかな?

若者の家のお手洗いっぽいところの扉に書いてあるルーン
 マヤが鏡の前で髪を整えている場面ですね。こんなルーンが扉に刻まれています。

扉のルーン1

 ぱっと見た感じ赤で書かれているような感じに「ᛚᛉᛚ ᛉᛉᛉ ᛚᛉᛚ 」と読めそう。

 ですが、他にも読めそうなパターンがあったので、色分けして見てみました。

扉のルーン3

「ᛏᚳᛚ 」

扉のルーン2

「ᚣ」


扉のルーン4

「ᛖ」

 これまでのような感じで丁寧に書き出すとかえってごちゃごちゃしそうなので、ざっくり意味だけ並べていきます。

「ᚣ」 守護、発見、行為
「ᛚᛉᛚ」 
女性、水、感情、安定、創造、導き
「ᛏᚳᛚ 」 勝利、男性、正しさ、照らす、知る
「ᛉᛉᛉ」 導き、安定、創造
「ᛚᛉᛚ 」 女性、水、感情、安定、創造、導き
「ᛖ」 移動、信頼、パートナーシップ
「ᚣ」 守護、発見、行為

 えっこれ、もしかして、えっちなことじゃない?!にゃんそんがえっちなだけでしょうか?「この場所で発見する」「年頃の女性の感情を導く(恋愛的な方かも)」「男女が出会い、気付く」「(二人でいる事で心などが)安定な状態へ導かれ、創造へ(たぶん子作り)」「二人の感情が安定へ導かれ、パートナーとなる」をまとめると……

「この場所で恋の相手を見つけてセックスしてパートナーになっちゃえよ」って、コト?!若者の家、そういう目的だったのか?いやしらんけど。だとしたら、マーク、シコるとかいう次元じゃないじゃん
↑は勢いで読んだ感じですが、もしかしたら気になる相手とパートナーになる前に村長に相談して血縁関係を確認するというステップが入るかもしれませんね。

あとがきと資料まとめ

 古代北欧の歴史や文化、そしてルーン文字の事を寝ても覚めても考え続けた本当に楽しい数日間でした。『ミッドサマー』という映画のおかげです。素晴らしい映画を生み出してくださり本当にありがとうございました。心の底から感謝します。
 ルーン文字自体は一文字で様々な意味を持つ漢字のような文字です。作中でも言われていますが、意味の取り方も読む人次第なところがあると思います。こんな記事をまとめましたが私はただヴァイキングと北欧神話が好きなだけのど素人です。あてにしないでください。そしてそんな複雑な文字の解読という事で、今回は占いの本等も参考にしました。それ+作中の雰囲気等です。特に記載がないものについてはだいたいウィキペディア情報と考えていただいて、興味がわいたらご自身で深堀してみる事をおすすめします。それでは本の紹介をします。

ヴァイキングの考古学 (世界の考古学) ヒースマン 姿子

歴史や当時の習慣などの参考にしました。


ルーン文字:古代ヨーロッパの魔術文字 (アルケミスト双書) ポール・ジョンソン

マジョコマジョリカ やさしいルーン占いの本 (クツシタネコシャ出版) くつしたねこ

ルーン文字を読み解く際の参考にしました。


図解 北欧神話 (F-Files No.010) 池上 良太

北欧神話の基礎知識はこちらから

「将軍舞」については2011年5月6日放送 NHK『神楽烈々 〜幻の舞「将軍」 を追って〜』で知りました。たぶん再放送だったと思うんですが、二年以上は前かも。

ルーン文字はこちらからコピペしました https://unicode-table.com/jp/

デンマーク語は受講当時のメモ+確認はgoogle翻訳です。講師の先生、その節は本当にお世話になりました。

 自分がイラストや漫画などの創作活動をしている事もあって、今回の記事内で予告編や本編のスクリーンショットを使用する事に非常に抵抗感がありました。そのためこの記事の全ての画像は自作したものです。かえってわかりにくいものになってしまった部分もあり、そこはごめんなさいです。とりあえず大変だった。

2021年8月20日 にゃんそん

追記
そういえば最後の一人選ぶガチャのルーン文字と選ばれた村人の服のルーン文字って関係あったりするんでしょうか。試聴期限切れてからの出てきた疑問なんで、もし確認できる人いたら代わりに注目してくれると助かります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?