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ep.2

「私は、遠くに逃げるよ」
といった。
貴女の背中には翼が生えていたんだ。
淡く蒼い空にふわりと羽を広げて、その言葉のとおりに遠くに消えた貴女に、僕は会う術を持たない。
勝手だった。貴女は酷く勝手で、だけど空を飛ぶ貴女は、どうしようなく綺麗だった。
蒼色に溶け込む透明な羽を僕はまだ覚えているんだ。

「遠くに逃げよう」

と言ってくれればよかった。
僕には翼が無いけれど、行けるところまで貴女と行きたかった。
どうして置いていくの、とは聞けなかったから、
だから黙って、俯いたんだ。
僕の寂しさや悲しさや虚しさは、
貴女が飛び立つのに、きっと重荷になってしまうから。
その重荷で貴女が堕ちてしまわないか怖かったから。
だけど、僕は貴女と居たかったよ。

「世界はきっと君のことを愛してくれる」

なんて、到底僕には信じられなかった。
だって僕には翼がないんだ、貴女のようにはなれない。
貴女と一緒には居れない。

「ねえ、あと一歩踏み出して、

 この青色の一部になれたら、そうしたら、

 こんな僕でも、

 誰かに綺麗だと言ってもらえますか。

 貴女に愛してもらえますか。」

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