夜
君みたいな良い人なんてのは何一つ得がないよな。誰かを傷付けるより傷付けられた方が良いなんてさ。鋭いナイフで斬りかかる世の中の不条理って奴を、君は武器も持たずに受け止めてさ。平気そうに傷を薄く摩って、そんな顔で笑ってるけど痛みも傷も感じてないわけないよな。
君みたいな良い人なんて何一つ得がないんだよ。人の為に生きることができない僕からすればさ。でもだから僕をそばに置いておいて欲しいんだよ。僕は僕のことしか考えられないけど、それでも君に降りかかる雨を一緒に被るくらいは出来るんだよ。君が痛みを感じた時に、同じくらいの痛みを感じて痛いんだよ。分け合えるわけではないから、それも結局、何の得にもならないんだけど。どんなことがあっても涙一つ見せないで、でもきっと何処かでは泣いてるんだろ。それに気付かれないように仮面をした君の心は、ガムテープでぐるぐる巻きにされて苦しそうだよ。なあ、僕は只管自分のために無駄に生き長らえているから、反対に君は誰の為に死にたがってるのか分からないんだ。命を削ってるのか分からないんだ。君は君の何が許せなくて君を殺し続けているのか分からないんだよ。生き延びる方法は一つじゃないんだよ。生かす方法は一つじゃないんだよ。そ
れに気づいてほしいから、僕をそばに置いてくれよ。
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