【クトゥルフTRPGシナリオ】仮想現実のシリアルキラー

【トーン】
・現代日本、探索者達共通の友人は昨今流行している動画投稿サイトMeTubeにて、キャラクターの3Dモデルを介してライブ配信を行うバーチャルミーチューバー(Vtuber)という活動をしている。友人の配信ということでなんの気なしに視聴していると、急に友人が苦しみだす。友人に降り掛かった怪異を調べるうちに探索者達は深淵を覗き込み、自らも狙われることとなる。


【シナリオ基礎情報】
・旧版クトゥルフを前提に作成しています。
・舞台 :現代日本、シティシナリオ
・PL人数:1人〜3人を想定
・《易》と書いてあるものは難易度を下げたい時に
 《難》と書いてあるものは難易度を上げたい時にどうぞ
・プレイ時間:2〜3時間程度


【推奨技能】
・目星、図書館などの基礎的な探索技能
・最低限(人間同士であれば強い部類に入る程度)の戦闘技能
・コンピューターまたは電子工学


【キーパー情報(シナリオ概要)】
・前後左右の同一平面上を移動し、細長い触手で犠牲者から力を吸い取る神話生物アドゥムブラリが効率的に移動し力を蓄えるための手段として動画投稿サイトMeTubeに目をつけた。探索者達の友人・代々木隆也はアドゥムブラリに襲撃され、MeTubeの配信中に苦しみだし、配信を終了することもなくそのまま動かなくなった。探索者達は、代々木を救うために動き出し、調査を進めるうちに自らも狙われながらも、アドゥムブラリを倒すために奔走する。

【フローチャート】
1.導入
 ↓
2.代々木の家
 ↓
3〜7探索状況に応じて順不同かつ、必ずしもすべて通るとは限らない
 ↓
8.イステの歌
 ↓
9.異次元の影
 ↓
10.エンディング

【1.導入】
・金曜日の夜9時を過ぎた頃、探索者達は各々自宅で動画配信サイトMeTubeでライブ配信を見ていた。左右で瞳の色が異なる爽やかな男前のキャラクターが3Dモデルで動きながら雑談している。いわゆるバーチャーミーチューバー(Vtuber)というやつだ。女性受けしそうなビジュアルと、近所の兄ちゃんという感覚がするような軽快で親しみやすい関西弁でのトークで人気の宵闇シャルルだ。探索者達がこの配信を観ているのは、主にシャルルとして活動している人物が友人の代々木隆也だと知っていて興味半分、応援半分といったところが理由だ。
(その為、探索者がVtuberに興味があるとは限らないが、PLのリアル知識・リアルアイデアと乖離が出ると没入感が下がるので、探索者達とPLは同程度の興味・知識があるとするとよい)

・シャルルの配信は、9時半過ぎまで淀みなく進む。シャルルは「プレゼントで事務所に大量の海苔送ってくれたの誰?ギリギリいらんねん!ちょうど困るねん!別に好きやけどそんな一気に食うもんちゃうし」などと楽しそうに話しており、視聴者から弄られつつも愛されている友人の様子に微笑ましく思っていた。
「あんまり多いから事務所にご自由にどうぞって書いて置いといたんよ。スタッフさんとかが弁当食うときとかにちょっとずつ使うかなって。そしたらある日急にごそっと半分くらいなくなってさ。あれ〜?思ってたらなんかミゾレ姉さんが……っ!?」
そこで彼の言葉が途切れる。キャラクターの3Dモデルがカクカクと震えているが、代々木の身に何が起こったのかは分からない。
探索者達がしばらく呆然と眺めていると、配信のBGMが止まった。代々木本人が切ったのか、それとも何か他の要因によるものなのか。
ほんの数秒の後、ガシャンと音がしたのち静寂が訪れた。今度こそ確実に代々木の意図したものではない。友人の身に何かが起こったのだ。探索者達は、近くに住む代々木の家へと急ぎ向かうことにする。

【2.代々木の家】
・探索者達は代々木の住む某所のアパート、106号室の前で合流する。おおよそは似たようなタイミングで来ており、皆とっさに代々木の家まで来たはいいが合鍵を持っているわけでないためドアの前で立ち尽くしている間に合流してしまったのだ。
なお、ここでスマホ等を用いて配信を確認した場合にもやはりシャルルは動かず、無音状態が続く。
しばらく立ち往生していると、探索者達と面識のない若いスーツ姿の男性がこちらに歩いてくる。スーツにヨレはなくかっちりとした印象は受けるものの髪は明るい茶色に染まっており若々しさが溢れる男性だ。(KP情報:この人物は11-C.大塚正人)

・男性は探索者達を見ると訝しげに「ええと、どちら様ですか?私はこちらにお住まいの方の……仕事関係の者で大塚といいます」と尋ねてくる。探索者達が代々木の友人だと言うか、宵闇シャルルの名前を出すと一応は納得し、とにかく急ぐ状況であることも手伝って探索者達の前で合鍵を取り出し、部屋のドアを開ける。

・代々木の部屋はワンルームで、質素な暮らしをしていることが部屋のあちらこちらから窺える。高価と思しきものはデスク上のパソコンやマイク等、配信機材だけだ。他に特徴的なものは傷んだ木のラックへぎゅうぎゅう詰めになったお笑いのDVDくらいだ。代々木はデスク前の椅子にだらりと座っており、一見して何事もないように見えるが、足元にはキーボードが落ちている。

・代々木に駆け寄ると僅かに目が探索者達の方に向く。高田はさっとパソコンを操作し、ミーチューブの配信を終了した。
「あかん……からだ……うごかんわ」
代々木が絞り出すように声を出すと探索者達が何か返すよりも早く大塚が肩を貸し、
「とにかく病院へ。裏に車を止めてますから」
と彼を連れて行こうとする。
ここで探索者達は幸運または精神分析でロールする。成功すると、代々木は連れなれながら、探索者達に目線で何か訴えていることが分かる。目線の先には一見するとベッドがあるのみだ。なお、すぐにベッドを探す場合には大塚と代々木を見失うことになるが、探索者達の土地勘としておそらく某県立病院に行くだろうという予測はつく。

・探索者達がベッドを調べると、特に技能を要さず代々木のスマートフォンを見つけることができる。代々木のスマートフォンに関係するイベントは7-B.代々木のスマートフォンに記載する。

・探索者達が代々木の部屋を出ようとした時、ザーッという音をたて、代々木が配信で使用していたパソコン画面が砂嵐に変わる。とっさにそちらを見ると、分かってしまう。何かが見ている。目が合っている。砂嵐以外何も写っていない画面から明確な敵意がヒシヒシと感じられてしまう。アレが代々木を襲ったのだと確信する。そしてアレは真っ直ぐにこちらを見ているのだ。
心臓を掴まれるような感覚をおぼえた探索者達はSANチェック〈1/1D6〉
しばらくすると砂嵐と視線は消え、普通のデスクトップ画面が表示される。以降、このパソコンを調べても普通のパソコンでしかないが、手に入る情報については7-C.代々木のパソコンを参照。

【3.株式会社クローバー】
・探索者達がなんらかのきっかけで宵闇シャルルについて調べた場合、すぐにシャルルの所属する事務所セレスティアールとその運営企業株式会社クローバーの情報が手に入る。また、株式会社クローバーの本社事務所の住所も一般に公開されている。

・探索者達が実際に訪れると駅前の新しそうなビルのワンフロアが事務所になっている。事務所の入口は、訪れた時刻が夜でない限り受付までが開放されており、内線電話と待機用の椅子が置かれているのみだ。内線電話にて探索者達が「代々木」や「大塚」など、世間一般には知られていない関係者の名前を出すと応接室に通され、大塚が応対してくれる。

・大塚は応接室につくなり「代々木さんなら県立病院に入院中です。代々木さん御本人から友人だと聞いたのであなた達を邪険に扱うつもりもないんですが、立場もあるので私に話せることは限られてしまいますよ」と疲れた様子で語る。
探索者達の質問には、彼が知っていておかしくない範囲かつ代々木以外の個人情報に触れない範囲で答えてくれる。

・一通り探索者達が質問を終えるか、代々木のパソコンが砂嵐を起こし何かがこちらを見ていたことを伝えたならば、大塚は「バーチャルキラーなんて噂話も出てきていています。代々木さんのように全身から力が抜けて動けなくなる方、世間的にはそう多くないんてすけど、うちの業界の関係者に異常に多いみたいなんでそう呼ばれているんです。半信半疑ではありますが」と語る。

・すると応接室の戸がノックされ、一人の若い女性が入ってくる。「失礼します。大塚さん電話ですよ、なんか急ぎみたいです」と大塚を呼び出す。
大塚は探索者達に「すみません。私はそろそろ仕事に戻らないと」と伝え女性に探索者達を見送るよう指示したのち事務所の奥へと去っていく。
その女性(KP情報:11-B-1)に案内され事務所の入口まで戻ってくると別れ際に彼女は「バーチャルキラーの話をしてましたね。アレには本当に気をつけてください。噂なんかじゃないから」と忠告する。それ以上は探索者が何を問うても「失礼します」と一例して去っていく。

【4.県立病院】
・探索者達が様々なきっかけにより、県立病院に訪れた場合には探索状況によって以下の2人の入院患者と面会することができる。面会時間の関係で代々木が倒れたその日には面会できない。

4-A.代々木隆也の病室
・見舞いに行くと、点滴に繋がれベッドに横たわった姿の代々木と会うことになる。彼は意識ははっきりしており、単に手足がほとんど動かない状態だと言う。
また、「俺のスマホ、拾ってくれたか?」と尋ねてくる。探索者が所持していなければ「拾って、持っといてくれん?」と言うし、所持していて持ち主に返そうとすれば「持っといてくれ。どうせ俺は使われへん」と固辞する。何れにせよ彼は探索者達にこう頼む。「誰かから連絡あったら、俺の状況伝えてくれ。それと、バーチャルキラーはマジモンやとも」

・探索者達がバーチャルキラーという存在について聞けば、彼は知ってる限りを話す。
具体的には「この1ヶ月くらい話題になっている存在。自分のように突然身体が動かなくなる病気のようなものが、やたらとバーチャルミーチューバーにばかり発生していることから、業界人やコアなVtuberファンの間でそう呼ばれている。単なる都市伝説の類と思っていたが、あの日自分の配信画面の奥から誰かに見られているような感覚に陥り、その直後身体が硬直したことから信じるようになった」といった内容だ。

・目黒愛梨について探索者が尋ねた場合には「彼女とかちゃうよ。仕事の先輩や。あんま詳しく言われへんけど」とはぐらかす。
アイデアロールに成功すれば、バーチャルミーチューバーとして活動する誰かの本名なのだと分かるし、それ以前にPLがリアルアイデアで察したなら探索者も察したことにしてよい。

・探索者達が自分たちも砂嵐の中から見つめる視線を感じたことを明かすと代々木は心配して、「そらまずいな……。自分らも危ないかもしらん。……上の階に同僚もおんなじように入院してきとるらしいわ。上野さん言うんやけど、あの人なら俺の友達や言うたら話も聞いてくれるやろ。なんかわかるかもしらん」と情報をくれる。

4-B.上野明日香の病室
・探索者達が何らかのきっかけで彼女の存在を知り、病室を訪れれば基本的に彼女は面会を拒否しない。彼女の存在を知る方法については4-Aのイベントを基本線として想定するが、PLのリアルアイデアによる面白い提案や、他の探索中のクリティカル報酬にしてもよい。
・病室に行くと、代々木と同様に点滴に繋がれている。上野は「あら?見慣れないお客さんね。どちら様?」と動かない身体でもどこか余裕を見せる。
・探索者達が余程の無礼を働かない限りは、以下のようにバーチャルキラーの情報を教えてくれる。
「わたしはね、バーチャルキラーは画像だと思うの。わたし達が使う背景の画像。2週間前、わたしが倒れたときもシャルルくんの配信がああなった時も、使っているのは同じBARの背景だったわ。視聴者から貰ったものを、あまり疑いたくはないのだけれど」
視聴者の名前を尋ねるなら、「知らないわ。メールで貰ったものだし、自宅のパソコンを見ればアドレスはわかるでしょうけどこの身体じゃね」と答える。
なお、自身がなんという名前のVtuberであるかについては「それを訊くのはご法度よ」と教えてくれない。

【5.目黒愛梨の呼び出し】
・3か4(望ましいのは両方、PLが行き詰まった場合には片方でも良い)のイベントを経た後、PL達が探索の方針に困った際、探索者達が代々木のスマートフォンを所持しているなら、そのスマートフォン宛に通話アプリの着信音が鳴る。ただし明らかに18時を超えていないとおかしい描写をした後なら翌日にこのイベントを発生させること。電話の主は画面上にも表示されるが目黒愛梨(11-B-1)だ。

・探索者達が電話に出るといきなり「この電話の持ち主の……お知り合いですか?」と、本来の持ち主以外が電話に出たことを知っているような口振りで話す。
探索者達が代々木の友人であることを話すか、あるいは3.株式会社クローバーを経ているなら何を話しても、「あ、代々木くんのご友人の方ですね」と反応が返ってくる。
彼女の用件はこうだ。
「代々木くんを助けるために、協力してくれませんか?19時に○○駅前の、ベルメゾンというBARで待っています」
詳しく聞けば、彼女は株式会社クローバーの人間であり、バーチャルキラーによって多くの同僚が被害にあっているためこの事件の真相を知りたがっているということだ。なお、3.株式会社クローバーを経ているなら聞き耳ロール成功で、事務所で案内してくれた女性と同じ声であることがわかる。

【6.BARベルメゾン】
・目黒愛梨の呼び出しに応じて訪れるのが基本線となるが、このバー自体はHPも普通に存在しているためいつでも訪れることが可能だ。

・オシャレなバーであること以上に語ることはない普通のバーで、初老の男性マスターが一人で切り盛りしている。

6-A.マスターから聞けること
・以下は目黒愛梨の在否に関わらずマスターから聞ける話だ。基本的には探索者達から質問された部分にのみ答える。
〈この1ヶ月ほど来ていないが、高田和宏(11-F)という常連がいた。閉店の時間まで呑んで泥酔した時には近くの自宅まで送ったこともあるから家は知っている。高田は映像系の仕事をしており、二次元と三次元を繋げることが夢だと語っていた。最後に訪れた時、高田は一心不乱に何かの本を読んでおり、鬼気迫る様子であった。その割には、酒を1杯呑むとその本を忘れていき、次に来た時に返そうと店で預かっている〉

6-B.目黒愛梨から聞けること
・5.目黒愛梨の呼び出しを経て、このチャプターに行き着いた探索者達であれば彼女が先に来て待っている。彼女は積極的に以下のように語る。
「バーチャルキラーについて、正体がわかったかもしれません。バーチャルミーチューバーが使う背景画像です。その画像を使った配信者が次々と倒れてます。今日ここに皆さんを呼び出したのは、その画像がこのバーをモチーフにしたものだという情報を手に入れたからです。実際来てみてわかりましたが、かなり精密に再現されてます。代々木くんのために何ができるのかはまだ分からないけれど、まずは知っていることを共有しませんか?」
なお、ここで探索者達にはアイデアをロールしてもらう。成功すると「精密な再現であれば、この店でイラストを書いたり写真を撮ったりしている人物が作成した画像では?」と思い至る。マスターに尋ねれば1ヶ月前に高田という常連が来た際に一心不乱に店内の写真を撮っていたことが聞ける。

6-C.高田の忘れ物
・上記の会話の中で、高田の忘れ物についてバーのマスターから聞き出せた場合にはそれを見せてもらうことができる。それは確かに本の形を取っていて、表題には「イステの歌」と書かれているが、裏表紙を見てもバーコードはなく、市販されている本でないことがわかる。詳細は8.イステの歌を参照すること。

6-D.高田の家
・探索者達がマスターに「忘れ物を届けに行く」というか、信用・説得などの対人交渉技能ロールに成功するとマスターは高田の住所を教えてくれる。
なお、目黒に一緒に行こうと申し出ても「21時から仕事だからもう帰らないと。それに、わたしにも考えがありますから」と断られる。探索者が日を改めようとするなら7-A.探索者達のスマートフォンを参考にその時間的猶予は残されていない旨を匂わすこと。

【7.探索者達の電子端末】
7-A.探索者達のスマートフォン
・本シナリオ中に登場するバーチャルミーチューバーについての情報は全て調べることができる。
・(KP情報)探索が行き詰まったとき、的はずれな探索を始めたとき、緊張感が薄れた際に軌道修正を行う舞台装置として、スマートフォンの画面が宵闇シャルルの配信を通してアドゥムブラリの行き来できる平面となっている。これは探索者がシナリオ中にスマートフォンを買い換えようとも継続する。

7-A-1.影の匂い
・探索者達が何かしらを調べようとスマートフォンを触った際、突如として画面が砂嵐に変わる。またアレの視線だと感じ、咄嗟にスマートフォンを手放そうとするも手が離れない、目を離すことすらできない。地獄のにらめっこを画面の向こうの何かとしていると、探索者達に向かって画面から細長い影のようなものが伸びてくる。迫る細長い影に成すすべもなく、探索者達の頬に影が触れると画面が切り替わり「Bellemaison」と黒バックに白字で表示される。
恐ろしい何かが自分たちをも標的にしていることを思い知らされた探索者達はSANチェック〈1/1d3〉
なおSANチェックの成否に拘らず、このシナリオ中1d3のCONを失う。

7-A-2.すぐそこにある影
・7-A-1を経た後、探索者達が特にスマートフォンを触っていないタイミングであっても、探索に消極的な行動を取るならばこのイベントを発生させるとよい。
探索者達はポケットかバッグかスマホをしまっている場所からあの何者かの視線を感じる。もう画面を消していても逃げ場はない。スクリーンの向こうの怪物はすぐそこまで迫っており、いつでも自分達に遅い書かれるのだと本能で感じ取ってしまう。眼前に迫る命の危機を感じた探索者達はSANチェック〈1/1d4〉

7-B.代々木のスマートフォン
・中のデータを調べるならいつでも以下の情報を手に入れることができる。
 通話アプリの履歴はほとんどが男性の名前。探索者の中に女性がいる場合にはその人物の名前もある。探索者以外で唯一女性の名前なのが「黒中愛梨」という名前で頻繁に通話しているようだ。代々木に恋人がいるという話は探索者達は聞いたことがないが、いると不自然に感じるような人物かと言うと、代々木は割とモテるほうだろうなとも思う。

7-C.代々木のパソコン
・2.代々木の家のイベントを一通り消化したあたりからいつでも調査可能。チャットアプリを通して明らかに日本人でない名前(名字が漢字、名前がカタカナであることが多い)の人物達と何度もやり取りしている。代々木自身のアカウント名は宵闇シャルル。
どのやり取りも怪しいもの一見してないが、図書館技能に成功すると黒中ミゾレという人物から送られてきている「バーチャルキラーの噂、マジっぽい。気をつけて。何かわかったらまた連絡する」というメッセージを発見することができる。
・何らかのきっかけで、背景画像を疑った場合には、彼が最近使っているのは「BARベルメゾン」という名前の画像ファイルであることがわかる。なお、コンピューターまたは電子工学技能ロールに成功することで製作者の名前がkazuhiro takadaであることを発見できる。

【8.イステの歌】
・高田の忘れ物として入手できるこの本は歌と書かれているものの中身は全く歌でないばかりかアルファベットの羅列だ。ところどころ英単語として読める箇所もあるが、英語の文章かと言うとそうでもない。探索者達の中にコンピューターまたは電子工学の技能を持つ者がいればその技能で調べることができる。技能ロールに成功すれば、それはプログラムのコードと非常によく似た構成をしているが、非常に難解な箇所と、プログラミング初心者でもおかしいと分かるほどに破綻した箇所で構成されていることがわかる。怪物など関係なくとも、ある程度の知識がある人物がこれを読めば気が狂いそうだなと感じるだろう。
それと同時に、データの転送に失敗すると致命的なエラーを起こすことも見て取れる。

【9.異次元の影】
・探索者達が高田の住所を訪れると、何年も空き家として放置されているかと思うほどボロボロの木造1階建て一軒家がそこにある。なお、目黒とベルメゾンで落ち合い、情報を聞いてここに直行した場合には時刻は20時30分となるが、PLから訊かれなければ描写する必要はない。
《易》着いた段階で時刻を描写する。本シナリオで時刻の描写をするのは目黒愛梨との待ち合わせ以外で初となるはずなのでただでさえ意味深だが、輪をかけて意味深に伝えること。

・鍵は空いており、すんなりと中に入ることができる。薄暗い家だが電気は通っているようで完全な暗闇ではないし、探索者達が望むなら電灯をつけることも可能だ。奥の部屋では何かの機会が唸るような低温で鳴っていることがわかる。

・機械音のなる奥の部屋へと入るとそこには異様な光景が広がっていた。部屋を覆い尽くすように並べられたサーバーやモニターの数々、そして中でももっとも大きなモニターから人の腕と顔の左半分が生えている。そうとしか表現のしようがない異形がそこで蠢いている。ふと、人の左目と砂嵐の向こう側にいた者と同じ心のざわめきを感じる。
このようなおぞましい異形を目にした探索者達はSANチェック〈1/1d8〉
モニターの異形は左半分しかない口を開き探索者達にわめき散らす。
「壊して!壊すな!モニター!!モニターごと殺して!こっちに来るな!僕の夢だ!!」
モニターから生えた腕の指先から、不気味な細長い影が伸びる。異形との戦闘に突入する。

〈アドゥムブラリの仲介人・高田和宏〉
耐久力:30(装甲なし) 
技能:影の触手 40% 対象1体のCONを1D6姥浦

【10.エンディング】
10-A.ノーマルエンド
探索者達がアドゥムブラリの仲介人との戦闘に勝利するとモニターは粉々に砕け散る。モニターから生えていた人体も、探索者達を悩ませたあの視線はもうどこにもなかった。安堵半分、不安半分で高田の家を後にし普段の生活に戻っていくと、その日以来バーチャルキラーが出現した話はぱたりと消えたようだ。
そんなある日、探索者達は揃って代々木のもとを訪れる。そこはあのお笑いDVDにまみれた部屋ではない。県立病院だ。
バーチャルキラーが消滅しても、代々木の身体は元に戻らなかった。それでも代々木は探索者達に「お手柄やん。もう誰も、大事な先輩達・後輩達も視聴者さんも、俺みたいにならんで済む。ほんまおおきにな」と屈託のない笑顔を向けるのだった。
クリア報酬:1d6のSAN値回復

10-B.トゥルーエンド
・探索者達が、21時を意識して高田の家を訪れた場合(その指定が20時50分でも21時5分でも、とにかく21時を意識してその前後の時刻を指定した場合)、探索者達がアドゥムブラリの仲介人との戦闘に勝利するとモニターは粉々に砕け散る。モニターから生えていた人体も、探索者達を悩ませたあの視線はもうどこにもなかった。安堵半分、不安半分で高田の家を後にし普段の生活に戻っていくと、その日以来バーチャルキラーが出現した話はぱたりと消えたようだ。
そんなある日、探索者達は揃って探索者の誰かの家に集まる。みんなで観たい配信があるのだ。それは宵闇シャルルの復帰配信。あの日以来、代々木は徐々に身体を回復させていった。今ではすっかり元通りだ。
探索者達の期待の中、配信が始まる。
「まいどー。復活したで、みんな。そんでな、聞いてほしい話があんねんけど、バーチャルキラーって前おったやん?あれな、俺の友達が倒してん。自慢や自慢!なぜかミゾレ姉さんが「わたしのおかげだー感謝しろー」言うて海苔のおかわり要求しおんねんけど。誰か送ってくれん?一昨日、接着剤の方のノリ送ってきた人ならおったけど、アレどういう気持ちで送ったん?」
彼の軽快なトークは、どこまで本気でどこまで冗談なのか一般の視聴者は知る由もないだろう。それは探索者達だけが真実を知る、彼らしい漫談なのだ。
クリア報酬:2D6のSAN値回復

※21時にはBARベルメゾンの背景画像を使用した黒中ミゾレの配信がスタートしている。アドゥムブラリはそちらへ転移を行おうとする中、探索者との戦闘になり敗北して仲介人を破壊され、この世界から完全に撤退することになる。イステの歌に記された致命的なエラーが起こったためだ。これがトゥルーエンドに至る真実である。
なお、黒中ミゾレ(目黒愛梨)本人は、バーチャルキラーが現れた途端に回線を切断して閉じ込めるくらいの発想でBARベルメゾンの背景画像を使用しており、ここまでの意図はない。

【11.各種データ】
11-A-1.代々木隆也(人間)/よよぎたかや
・探索者達胸痛の友人。大阪出身の27歳男性。
・もっと若い頃は漫才師を目指していたが、今ではバーチャルミーチューバーとして活動し、人気を博している。
  HP15 SAN75 SIZ15  STR10 CON14 POW15
  DEX13 INT14 APP13 EDU16

11-A-2.宵闇シャルル(Vtuber)
・代々木隆也のVtuberとしての姿。
・酒場のマスターという設定のVtuber。Vtuber事務所セレスティアール所属。チャンネル登録者約20万人の人気配信者。(探索者達がこの名を知っているかどうかの判定として、ある程度Vtuberに興味がある設定の探索者であれば登録者数÷1万を、あまり詳しくない探索者であれば登録者数÷5万を1d100の成功値の目安とする)

11-B-1.目黒愛梨(人間)/めぐろえり
・クローバー所属の古参Vtuberとして活動する24歳女性。
  HP12 SAN80 SIZ11  STR10  CON13 POW16
  DEX14 INT16 APP14 EDU16

11-B-2.黒中ミゾレ(Vtuber)
・黒猫が魔法で人間の姿になったという設定のセレスティアーラ所属人気Vtuber。チャンネル登録者数は160万人。目黒愛梨のVtuberとしての姿。配信時間はほぼ毎日21時からである。

11-C.大塚正人(人間)/おおつかまさと
・Vtuber事務所セレスティアールおよびセレスティアーラを経営する株式会社クローバーの社員。シャルル、ミゾレを含む数人のマネージャーである。
 HP11 SAN60 SIZ12  STR10 CON11 POW12
 DEX16 INT17 APP11 EDU19

11-D.株式会社クローバー
・Vtuber事務所セレスティアールおよびセレスティアーラを経営する株式会社。探索者達の住む某県内に本社事務所が存在する。セレスティアールが男性配信者、セレスティアーラが女性配信者という区分。

11-E-1.上野明日香(人間)/うえのあすか
・セレスティアーラ所属のVtuber活動をしている25歳女性。かなり大人っぽい色気のある見た目をしているが、話し方がやや舌足らずで押さない印象も与える。記憶力に優れた人物でもある。
 HP11 SAN50 SIZ14  STR8 CON9 POW10
 DEX15 INT16 APP17 EDU20

11-E-2.星詠みんと(Vtuber)/ほしよみみんと
・セレスティアーラ所属、悪魔の看護師という不思議な設定のVtuber。上野明日香のVtuberとしての姿。
・チャンネル登録者数70万人の人気配信者。
・探索者がこの名前を知るのは、2週間前から急に活動が停止しているクローバー所属Vtuberという視点で調べたときくらいで、シナリオ中に活きるのは上野明日香と黒中ミゾレが同一人物か否かの判定くらいだろう。

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